■明日の風 c/w Without You / Badfinger (Apple / 東芝)
名曲には様々なエピソードがあって、また、それがあってこその名曲というのも、あると思います。
例えば本日の主役はビートルズの弟バンドとして人気があったバッドフィンガーですが、あえて私がお目当てだったのは、B面に収録された「Without You」です。
ご存じのように、この曲は1972年、ニルソンのカバーバージョンが世界中で大ヒットした、せつなくもハートウォームな畢生のパラード♪♪~♪ そのオリジナルバージョンを演じていたがバッドフィンガーだったんですねぇ~♪
これは当時から有名過ぎる真実として、バッドフィンガーは1970年秋に発表したアルバム「ノー・ダイス」の中で演じていましたが、ここからは「嵐の恋 / No Matter What」がリアルタイムでシングルカットされ、バッドフィンガーを代表するスマッシュヒットになっていました。
ただしアルバムそのものが、どれだけ売れていたかは知る由もありません。当然ながら我国でも、それなりの売れ行きだったとは思いますが、サイケおやじは例によって経済的な理由から買うことは出来ませんでした。
それがニルソンによって、バッドフィンガーの潜在的な人気が再びクローズアップされたというか、熱心なファンは溜飲を下げたと思います。
しかし私のような者にとっては、楽曲の素晴らしさに夢中になってはいても、バッドフィンガーのバージョンがLPでしか聴けないとなれば、諦めるのも……。
ただし、それがシングル盤で入手可能とあらば、即ゲットは言わずもがなというわけです。
で、そのオリジナルバージョンなんですが、ニルソンの大ヒットバージョンに比べると、あくまでもバンドサウンドを大切にした演奏パート、そして自作自演の強みを活かした実直な歌いっぷりが感度良好♪♪~♪
まあ、正直に言えば、ニルソンが演じていたボーカルの力量に夢中になった身としては、物足りなくもあります。それでも間奏のシンプルな味わいから終盤への「泣き」のメロディ展開は不滅でしょうねぇ。
最後になりましたが、A面に収録された「明日の風 / Cally On Till Tomorrow」は、彼らがアイビーズからバッドフィンガーと改名して最初アルバム「マジック・クリスチャン・ミュージック」からのカット!? と言うことは、おそらくはこのシングル盤は我国独自の企画だったように思います。
しかし、それなら「Without You」をA面にした競作盤にすればよいものを……。なんか遠慮でもあったんでしょうか?
まあ、それはそれとして、実はA面の「明日の風 / Cally On Till Tomorrow」もアコースティックギターをメインに、なかなか日本人好みの湿っぽいメロディが素敵な隠れ名曲じゃないでしょうか。ちょいと地味なところが、これまた魅力というか♪♪~♪
ということで、当時のバッドフィンガーの人気を物語るようなシングル盤でもあり、しかし結局は大ブレイクとまでは届かなかった実態を象徴する1枚かもしれません。それはマニアックでもなく、あえて言えば忘れられないバンドのひとつとしての存在感でしょう。
ビートルズに認められていた羨ましくなる環境から、後の様々なトラブルや悲報があって、今では「悲劇のバンド」なんて一部では決めつけられているバッドフィンガーも、この頃は人気も絶頂だったのです。
今頃の季節になると、特にそんなことが思い出されるのでした。