■あいつ c/w Wrist Job / Humble Pie (Immediate / 東芝)
1970年前後には所謂スーパーグループのブームがありました。
これはメンバー各々が、それぞれに実績のあるバンドに所属し、それなりのヒットを出していたキャリアの集合体で、一番有名で成功したのはクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング=CSN&Yでしょうが、本日の主役たるハンプル・パイも大いに期待されていたのです。
特にイギリスや欧州各国では凄かったらしく、我国でも音楽マスコミが率先して盛り上がっていた雰囲気がありました。
なにしろスモール・フェイシズのスティーヴ・マリオットとザ・ハードのピーター・フランプトンが結託して誕生したバンドでしたから、共にアイドル人気優先の部分は否めませんが、もちろん実力に裏打ちされたバンドという事実を忘れてはならないでしょう。
正式な結成は1968年末と言われていますが、メンバーはスティーヴ・マリオット(vo,g,key)、ピーター・フランプトン(vo,g,key)、グレッグ・リドレー(b,vo)、ジェリー・シャーリー(ds) というのが、デビュー時の顔ぶれでした。
そして充分なリハーサルとレコーディング期間を経て、翌年夏に発売したのが、本日掲載したシングル盤で、これは同じ頃に出た最初のアルバムには未収録!
まずA面の「あいつ / Narural Born Bugie」は、何故かミスマッチな邦題が気になるものの、歌と演奏はグッと重心の低いブルースロックのブギウギR&R♪♪~♪ ビートルズの「Get Back」とT.レックスの「Get It On」を足して2で割り、スワンプロックの味わいを強めたところは、当時最先端のロックでした。ヘヴィに蠢くベース、どっしり構えたドラムス、ロッキンソウルなエレピとブギーなリズムギターも良い感じ♪♪~♪
何よりも自然体で泥沼フィーリングを醸し出すボーカルが良いですよ。これはスティーヴ・マリオットが作者の強みを活かしたところでしょうねぇ~♪
またB面の「Wrist Job」が、これまた熱気充満のゴスペルロックの決定版! いきなり炸裂するオルガンのサイケデリックソウルな響きにグッとタメを効かせたボーカルの味わいが、もう最高ですし、ドラムスとベースのコンビネーションは手数が多く、テンションが上がりっぱなしという素晴らしさです。さらに泣きまくりのオルガンが実に良いですねぇ~~♪ 哀切のコーラスと熱血ボーカルのコントラストにも、胸が熱くなりますよ。
正直、個人的にはA面よりも好きなんです。
そして思惑通り、このシングルはヒットするのですが、好事魔多し!
なんと人気上昇中にピーター・フランプントが事故により手を負傷し、ライプ活動が休止に追い込まれ、さらに追い撃ちとして、所属レコード会社が倒産……。
こうしてその間、ハンプル・パイは曲作りやレコーディングだけの活動となり、どうにかA&Mレコードと新たな契約も成立するのですが、やはりプランク中にバンド内部でゴタゴタが頻発し、人気最高のピーター・フランプトンが脱退する火種に……。
当然ながら、このシングル盤で盛り上がった音楽性も軌道修正されていきます。それはA&M移籍後の1970年新作が、どこからし散漫というか、些かの迷いが???
ということで、このシングル盤はサイケおやじにとって、大切にしたい1枚です。特にB面が最高なんですよねぇ~♪
ちなみに、そうしたスタイルはピーター・フランプトンが正式脱退した後に再び盛り返していきましたから、なんとか溜飲は下がったのですが、ただそれすらも、このデビューシングルの新鮮な勢いには及ばないと感じています。もちろん私のお好みの世界ではありますが、なんというか、ちょいと意識過剰の遣り口が、ここでの自然体の雰囲気とは違うんですよ……。
う~ん、まさにタイトルどおり、これは「Narural Born」なのでした。