■小さな恋のメロディ / ビージーズ (Polydor)
言わずと知れたビージーズの大ヒットで、今となっては例の「サタデー・ナイト・フィーヴァー」関連の楽曲と並び、我国では誰もが一度は耳にしたことがあるはずだと思います。
そのきっかけとなったのは、昭和46(1971)年に公開された映画「小さな恋のメロディ」のメインテーマ曲としての人気でしたが、既に原題は「Melody Fair」として、ビージーズが1969年発表のアルバム「オデッサ」に収録されていたものです。
ところが当時のビージーズはメンバーの脱退や兄弟の不仲……、等々から些か落ち目の時期でしたから、前述のアルバムは従来のソフトポップスからクラシックとロックの融合、さらにはプレグレ路線までも含んだ意欲的な2枚組で、なかなか秀逸な仕上がりながら、それほどパッとした名盤という評価では無かったと思います。
そして実は映画そのものも、日本では驚異的な人気で興業成績もダントツでしたが、欧米では全くの空振り状態……。
それゆえにビージーズも、我国では完全に息を吹き返した再ブレイク状態となり、来日公演も盛況だったようですし、確実に次なるアメリカでのステップに勢いがついたことは間違いありません。
ちなみにご存じのとおり、この映画「小さな恋のメロディ」には、CSN&Yの人気曲「Teach Your Children」も使われていて、実はそれさえも件の映画のヒットによって、CSN&Yが広く日本で認知されたのです。なにしろ以前出ていた同曲のシングル盤ジャケットを、わざわざ「小さな恋のメロディ」のスチールを大きく使ったデザインに変えてまで再発した騒動があったんですよっ!
肝心の映画の内容は説明不要かと思いますが、英国を舞台に同じ学校で学ぶ11歳の少年少女、劇中ではマーク・レスターとトレーシー・ハイドが演じる2人が相思相愛から、最後には結婚してしまうという物語でした。
もちろん、そこには生臭さなんか微塵も無い、実にプラトニックな恋愛で、如何にも子供から大人になる事を拒絶するような描写も含めて、なかなかメルヘンチックな青春が日本でウケたポイントかと思います。、
実際、リアルタイムで大ヒットしていた昭和46(1971)年の夏休み、全国の映画館では中高生のカップルがデートで鑑賞する映画のトップだったんじゃないでしょうか? 恥ずかしながらサイケおやじも、グループ交際の一環として、これを観ていますが、その時の野郎どもの言い訳が、前述したCSN&Yやビージーズの楽曲だったという側面も、ご理解願いたいところです。
しかし、そんな云々は別にしても、確かにこの「Melody Fair」は良く出来た優しいメロディが秀逸ですし、クラシック調の弦楽アレンジとビージーズの歌声が、なかなか胸キュンの極みつき♪♪~♪
思わずシングル盤をゲットさせられたほどですが、既に有名なエピソードとして、トレーシー・ハイドが演じるヒロインの役名がメロディというあたりの因果関係も、流石に絶妙だと思います。
そしてマーク・レスターとトレーシー・ハイドの人気も大爆発!
実はマーク・レスターは既に本国イギリスでは子役時代から人気があったと言われていますが、トレーシー・ハイドは、ほとんど「小さな恋のメロディ」が出世作であり、特に我国では老若男女を問わない人気がありましたですね。
それゆえにリバイバル上映も毎年のように行われ、また名画座の定番プログラムとしても切り札的な作品になりました。
ちなみにマーク・レスターは大人になると人気もガタ落ち……。またトレーシー・ハイドも学業優先のために早々と引退してしまいましたが、両者とも日本ではテレビ企画の「あの人は今……」的な番組には数回登場していた記憶があります。
さて、ここまで書いてきて告白するのも申し訳ない気持なんですが、サイケおやじは決してトレーシー・ハイドのファンではありません。
しかし、この映画と曲には、ちょいとした思い出があります。
それはサイケおやじか二十歳の時、後輩の妹、仮にUちゃんとしておきますが、その彼女に妙に懐かれ、それなりに嬉しかった時期がありました。
何故ならば、生来の変態性ゆえに、サイケおやじは女性にモテるということがありません。リアルタイムで一番欲しかった頃に、バレンタインのチョコレートを貰った事もありませんし……。
ただし、この時の彼女は中学1年生で、誓って言いますが、全くロリ趣味の無いサイケおやじは、懐かれたといっても、それ以上の云々はありませんから、面映ゆい気分だった事も確かです。
まあ、今となっては非常に勿体無い事をしたなぁ、と思うばかりなんですが、当時はバチアタリでした。
そんなある日、彼女が「小さな恋のメロディ」を観に連れて行って欲しいとサイケおやじに頼んできたのですが、その上映館が住んでいるところから相当に離れた場所ということで、何時もバイクを足に使っているサイケおやじなら、それが可能という目論見があったのです。
つまりサイケおやじは、アッシー君!
ふっふっふっ……。
結局はサイケおやじも女に利用ばかりされている実態が、既にその頃から表出していたというわけで、それでも彼女を乗せて某地方都市までバイクをブッ飛ばしたのですが、その帰り道、どしゃぶりの雨に遭遇し、ぐしょ濡れになったUちゃんを予定の時間より大幅に遅れて送り届けた時の後輩や彼女のご両親のキツイ目線が、今も忘れられません。
もちろん絶対に何もしていないという事実を主張する気力さえ、無くなったほどです。
そして以降、自然と後輩の家から足が遠のいた事は、言うまでも無いでしょう。
ということで、この「Melody Fair」を聴くと、今でも自嘲を抑えきれないのでした。