■All Together Now / Argent (Epic)
先日は某所で開催されたB級グルメ大会でモツ焼き、ゴッタ煮、焼きそば等々を喰いまくってきましたが、やはり駄菓子屋育ちのサイケおやじには、星が付いたレストランよりも、こっちがジャストミートしていることを痛感でした♪♪~♪
で、そうした好ましいB級グルメっていうのは、何時しか各方面に適用され、例えば洋楽の世界ならばプレグレポップなアージェントが、まさにB級グルメの王様じゃないでしょうか。
特に本日ご紹介のLPは、ブレイクのきっかけとなったシングルヒット「Hold Your Head Up」を含む1972年の傑作盤となるはずが、実は結果的にアージェントはB級の烙印を押された1枚かもしれません。
A-1 Hold Your Head Up
A-2 Keep On Rollin'
A-3 Tragedy
A-4 I Am The Dance Of Age
B-1 Be My Lover, Be My Friend
B-2 He's A Dynamo
B-3 Pure Love
Fantasia
Prelude
Pure Love
Finale
ご存じのように、アージェントはゾンビーズの系譜を受け継ぐバンドとして、ロッド・アージェント(vo,key)、ラス・バラード(vo,g,key)、ジム・ロッドフォード(b,vo)、ロバート・ヘンリット(ds,per) の4人で活動していましたが、ここにもうひとり、ゾンビーズ時代にはベース奏者であり、ロッド・アージェントの盟友でもあるクリス・ホワイトが影のメンバーというか、ソングライター兼プロデューサーとして参画している事が、このバンド結成以来の基本姿勢でした。
そうした協調関係は、時には「船頭多くして、なんとやら……」に陥り易い事が、ある意味での常識かもしれません。
しかし当時のアージェントは、所謂トロイカ体制が極めて上手く成功した好例じゃないでしょうか。
それは大作主義のロッド・アージェントに対し、一般ウケを狙うラス・バラードの間にあって、そのバランスを上手く保つにはクリス・ホワイトの調整能力が不可欠だったと思われます。
そして実際、このサードアルバムでは、「アージェント」から「リング・オブ・ハンズ」と続いた前2作に比べ、グッと大衆寄りのアプローチとプログレ的な方向性が、非常に上手く融合しているのです。
例えば冒頭に収録のヒット曲「Hold Your Head Up」にしても、シングルバージョンでは編集カットされていた壮大なキーボードプレイがイヤミ無く提示されていますし、それはアルバムの大部分を占めるロッド・アージェントとクリス・ホワイトの共作曲が、総じて大袈裟になることをギリギリで踏みとどまる結果にも直結しています。
一方、ラス・バラードが単独で書いた「Tragedy」や「He's A Dynamo」は、ファンキーロックやパワーポップといった当時の流行を逸早く具象化したキャッチーさが魅力ながら、それだけではイマイチ弱いところをアルバム全体の流れの中で際立つものにしてしまうという、実に確信犯的なクリス・ホワイトのプロデュースが上手いと思いますねぇ~♪
ただし、それでもアージェントがB級という認識になったのは、やはりロッド・アージェントのキーボードプレイが、ど~しても同時代ではトップを走っていたキース・エマーソンの影響下にあると断罪されたことでしょう。
また、それゆえにアージェントがこのアルバムで作り上げた世界が、エマーソン・レイク&パーマー=ELPよりは格下と受け取られたのは、否定しようもありません。
確かにロッド・アージェントがキース・エマーソンを意識していなかったと言えば、ウソになるでしょう。もしかしたら結果的に良く似たアプローチに至ったのかもしれませんが、それは本人だけの知ることで、ファンやリスナーは虚心坦懐に提供された音楽を楽しめば、それで良いのでしょう。
しかし実際問題、キース・エマーソンと同じフレーズ展開や音作りを聞かされてしまうと、おっ!? ELP!? と思わざるをえないのも、また本音です。
例えばB面に収録された大作組曲「Pure Love」は、ロッド・アージェントが十八番の欧州系教会音楽やクラシックからの影響がダイレクトに感じられるものですから、演奏のほとんどがインストである事も含めて、やっぱりそれはELP!?
しかも、このアルバム以前にELPが出していた決定的な傑作盤「タルカス」や「展覧会の絵」に顕著だった強引なまでの緊張感や突撃モードが、ここでは些か温いとしか思えない感触です。
確かにB級の誹りは……。
ところがアージェントには、わかっていても、アージェントならではの魅力がちゃ~んとあるんですねぇ~♪
それは時代を見据えた折衷性というか、ラグタイムっぽいピアノとバタバタしたドラムスが意想外にスワンプロックな味わいを強める「Keep On Rollin'」、ファンキーロックとプログレが融合し、ついには新しいロックの誕生を告げるような「Tragedy」は、まさにアージェントの独壇場で、頑固一徹なELPには決して醸し出せない味わいでしょう。
また第一期ディープ・パープルみたいな「I Am The Dance Of Age」にしても、そこには脈々とゾンビーズの遺伝子が受け継がれていますから、例えピンク・フロイドみたいなSEやリズム処理があろうとも、これは立派にアージェントの世界になっていると思います。
さらに重なるディープ・パープル状況としては、なんと「Be My Lover, Be My Friend」が後の第三~四期を先取りしたかのようなハード&ファンキーな傑作トラックで、ジョン・ロードがこれを聴いていなかったという言い訳は通らないんじゃないでしょうか?
もう、個人的には、この曲が大好きっ!
ちょいとイナタイ雰囲気が、味わい深いんですねぇ~♪
おまけに続く「He's A Dynamo」が、どこかしらポール・マッカートニー&ウイングスしているとあっては、問答無用のお楽しみ♪♪~♪
既に皆様がご承知のとおり、こうしたところが「B級」にして「グルメ」なんです。
個人的推察としては、その味の秘伝が、どうやらバタバタしたドラムスやちょいと緩めなベースのグルーヴにあるような気がするんですが、そんな通常ならばマイナスであろうポイントが、何故かアージェントには必要不可欠です。
いや、それが無くてはアージェントにならないと思うんですよ。
実は後にバンドを脱退し、ソロ活動に入るラス・バラードにしても、またアージェント解散から幾年月を経て再結成されたゾンビーズにしても、そこでアージェント時代の曲をやったところで、同じ味わいは決して再現出来ていません。
結局それは、ジム・ロッドフォードとロバート・ヘンリットの存在という以上に、真にアージェントがオリジナルで作り上げたものなのでしょう。
ということで、見事なB級グルメとしてのアージェントが、このアルバムで誕生したのです。そして次なるアルバム「イン・ディープ」で、いよいよ頂点を極めるのですが、実は何であろうとも、そこへ至る過程の八合目あたりが一番感慨深いというのは常識ですから、このアルバムに対する愛着も尚更に大きくなります。
ちなみにジャケットにはメンバー以外にスタッフや友人&家族が写っていますが、これもまた1970年代前半のロック的流行として、アージェント以外にも数々のミュージシャンが実践したものです。
しかし今日ではプログレに分類される事も多いアージェントにすれば、その方面のジャケットデザインには幻想的なイラストや怖いイメージのものが多い中で、こういうハートウォームな拘りも、またアージェントの本質を表しているのかもしれませんねぇ。