■うらみ花 / 加山麗子 (東芝)
完全に低迷していた昭和40年代後半からの日本映画界で最高の成果を上げたのは、様々な異論があるにせよ、日活ロマンポルノだったと思います。
特に今日でもテレビや一般映画で活躍を続けている有名女優が、ロマンポルノからデビューであったり、そこを舞台に飛躍していった例は夥しく、本日ご紹介の加山麗子もそのひとりとして忘れられません。
それは昭和52(1977)年、所謂「お正月大作」であった「肉体の門(西村昭五郎監督)」で主役のボルネオ・マヤに抜擢されての登場が実に鮮烈! 宮下順子、渡辺とく子、山口美也子、志麻いづみ……等々のスタアに囲まれながら、持ち前の清楚な面立ちと相反する大胆な演技は忽ち人気を集めたんですねぇ~♪
ちなみに件の「肉体の門」は昭和39(1964)年に鈴木清順監督が野川由美子を主役に撮った日活を代表する名作のリメイクですから、会社側の期待と現場のプレッシャーは相当なものだったと思いますし、実際の仕上がりは正直、比較しても結論云々は言うまでもないところです。
しかし、それでもロマンポルノ版は出演女優の個性が秀逸に発揮され、中でもほとんどキャリアの無い加山麗子が、それゆえに新鮮な魅力で輝いたのは天性の資質でしょう。
もちろん、こうした新人抜擢の企画と遣り口は、日活がロマンポルノで度々使っていた常套手段でありましたねぇ~♪
そして以降、加山麗子は「金曜日の寝室(昭和53年・小沼勝監督)」「エロチックな関係(同・長谷部安春監督)」「帰らざる日々(同・藤田敏八監督)」「危険なハネムーン(同・林功監督)」に出演し、何れも大ヒットに貢献しています。
さて、そこで本日のご紹介のシングル盤は彼女が昭和53(1978)年春に出した歌手としてのデビュー作で、特にA面収録の「うらみ花」は、梶芽衣子が主演代表作にしている「女囚さそり(東映)」からの大ヒット曲「怨み節」を痛切に意識した情念演歌!
ジャケ写の強い目線のポートレートからも、なかなか熱い心が伝わってきます。
う~ん、実はこのレコードが出た当時、サイケおやじの周囲では、日活ロマンポルノ版「さそり」が加山麗子の主演で作られているのでは!?
という期待と予想があったんですよっ!
なにしろ彼女の芸歴の中には「肉体の門」で主役を演じる前に、本家東映のさそりシリーズ「新女囚さそり・特殊房X(昭和52年・夏樹陽子主演)」のちょい役があるんですから!
結果的に、それは実現されることはありませんでしたし、彼女本人も翌年には一般映画やテレビの仕事に活動の軸足を移してしまったのですから、この「うらみ花」は、まさに妄想の産物というか、ファンには悲喜こもごもの思い出の名唱というわけです。
ということで、加山麗子のような本当に美しい女優さんが、現代のAVよりも遥かに背徳性の高かった成人映画に出ていたのですから、なにか隔世の感があります。
もちろん職業に貴賎はあろうはずも無く、それでも「恥じらいの文化」は確実に存在していた時代であればこそ、そこに登場するスタア女優の輝きは一段と強かった!?
それが、あの時代の真実のひとつではないでしょうか。