■翔べないカラス / 浅川マキ (東芝)
仕事に責められ、昨夜は帰宅後も様々な書類をチェックさせられる始末だったんですが、その中にはほとんど同じ内容で、しかし微妙に違うニュアンスのプロジェクトファイルが出て来るのには閉口させられました。
なにしろ作っているのが同一人物なんですから、いやはやなんとも、無駄な事をやるもんだっ!
と、思わず激怒モードに入りそうになったんですが、しかし、落ち着いて中身を検討してみたら、道筋の多様性を考慮しての別バージョン、あるいは別テイクの可能性を示唆しているんじゃ~なかろうか?
なぁ~んて、妙に感心させられる気分になっちまったんですから、その真相は如何に?
例えそれが独り合点だとしても、ファイル名もちょっぴり変えてあった事からして、満更ハズレでもないとしたら、結果オーライなんでしょうかねぇ~~。
そして、そんな無責任な結論の中で思い出したのが、昭和48(1973)年初夏に発売された浅川マキの掲載シングル盤B面曲「翔べないカラス」でして、作詞:真崎守&作曲:浅川マキによる歌と演奏は、アップテンポのロックジャズ歌謡ですから、ほとんどリードを弾いているようなベースの強烈なカッコ良さにシビレが止まらず、盲目のカラスに自らの願いと希望を問いかけるが如き不条理な世界観(?)は、やるせない現世を歌いまくる浅川マキの真骨頂!?!
あぁ~~~、実に最高ですよっ!
ところが、同じ歌が同年秋に発売されたLP「裏窓」に収録されてみれば、曲タイトルが「翔ばないカラス」に変更され、しかもこっちはシングル盤とは異なるアルバムバージョンなんですから、歌と演奏の基本は一緒でも、微妙に曲タイトルを変えたのは、ひとつの「けじめ」なんでしょうかねぇ~~。
今となってはシングル盤を出した時のミスプリント説が有力らしく、つまりはアルバムバージョンの「翔ばないカラス」がこの楽曲の正式名称だとしても、やっぱりこれは意図的な仕業と思いたいですよ、サイケおやじは。
ということで、似て非なる事象の中にある真相真実に思い当たる時、微妙な感慨と快感が滲んで来る心の動揺こそは、まさに生きている証のひとつかもしれません。
それは「感動」とはちょいと違うと思うのが、例によって何時ものサイケおやじの天邪鬼ではありますが、それを常日頃から自然と求めているのも偽りの無い気持ちなのでした。