■都会 / ザ・タイガース (ポリドール)
掲載したのは、昭和45(1970)年春に発売された、ほとんどタイガースが末期のシングル盤なんですが、これがなかなか時代の空気感を閉じ込めた1枚で、殊更A面収録の「都会」は当時の勢いがあった社会全体の中で、疎外感とか喪失感とか、所謂「シラけた」感情に傾いていた若者の気分に訴えかける共感(?)が歌われていた様に思いましたですよ、当時は青少年だったサイケおやじは。
実際、作詞:山上路夫&作編曲:クニ河内が作り上げたのは、虚無的な歌詞の世界にバロック調を入れたフォークロック的なメロディを附した、まあ、確かにこれまでのタイガーズの個性のひとつでもあったセミクラシック系の歌謡ロックと言えない事もありませんが、リードを歌う沢田研二のクールな倦怠感を滲ませた歌唱表現やバックコーラスの退廃的なムード、さらにはクニ河内のグループであったハプニングス・フォーと同系のサウンド作り、つまりはオルガンやストリングスの使い方等々、ある意味ではプログレとまでは断言出来ずとも、当時としては相当に洋楽最先端の分意識が横溢しています。
そしてギターの単純なアクセントや要所でドライヴするフレーズを出してくるベースは、きっちりライブギグでも演じられる事を前提にしていたに違いありません。
確か、リアルタイムでは万博関連のタイアップ曲みたいな扱いもあったと記憶していますので、ヒットしたのも当然なんでしょうが、一応は王道の歌謡フォークとは一線を画する仕上がりは、ロックバンドとしてのタイガースが存在証明に拘ったところでしょうか。
ということで、皆様ご存知のとおり、タイガースは結局、解散への道へ突き進み……。
ですから、サイケおやじは、なんとなく……、この「都会」を聴くと、妙にタイガースの鎮魂歌に思えてしまうという不遜は、ど~かご容赦お願い致したく……。
そして「シラけ」とか「三無主義」とか、当時流行の若者思考はサイケおやじも確かに影響を受けましたが、個人的には楽観していたのも本音であり、今に続く、お気楽な生来の本性を自覚するのでした。