■春のおとずれ c/w 私の春一番 / 小柳ルミ子 (ワーナーパイオニア)
最近の日本の節分には「恵方巻」っていう太い巻き寿司を食するのが吉例という風習が全国展開になっちまいましたが、これって多分、コンビニ業界の策謀(?)が功を奏した結果だと思えば、ゴッサムシティにもそれが売られていたって、ちっとも不思議ではないんでしょうか……?
もちろん、そこには日本食の世界的なブームがあって、殊更寿司の人気は高く、また最近は「弁当」とか「おにぎり」なぁ~んていうものまで、それなりの文字表現を附して販売されているのですから、元々食べ物の流行に幾分の反発を感じるサイケおやじが、それを疎ましく思うのは、例によっての天邪鬼です。
しかし、音楽で季節を感じる事には吝かではありません。
そこで暦の上では立春の本日掲載したのは、小柳ルミ子が昭和48(1973)年早春に出したシングル盤で、なにしろその両面が春の歌♪♪~♪
しかも当然ながら、この時期の彼女が十八番にしていた和風歌謡ポップスのプログラムピクチャー的な展開とでも申しましょうかも、まずは作詞:山上路夫&作曲:森田公一、そして編曲:森岡賢一郎が提供のA面「春のおとずれ」からして、穏やかな恋人同士の休日に未来の夫を自分の父親に初めて紹介する娘心の歌ですから、ふたりで浜辺を歩く風情に附されたメロディが、なんとなく小柳ルミ子を代表するメガヒット「瀬戸の花嫁」を想起させてしまうのは嬉しくもあり、マンネリという感じも否めないところかと思います。
ただし、これはあくまでもサイケおやじの思い込みではありますが、もしもそのあたりが企画段階からの狙いだったとすれば、殊更作曲を担当したのが、デビュー以来の平尾昌晃ではなく、同時期にアイドルポップスを書かせては、そのキャッチーさがストレートに際立っていた森田公一なんですから、あながちマンネリと決めつける事は出来ないのかもしれませんが……。
その意味でB面収録の「私の春一番」は同傾向ながら、ビートも強く、メロディのフックも効いたなかなかの佳曲で、これが作詞:安井かずみ&作曲:平尾昌晃という、従来路線の作家コンビからの提供だというクレジットを確認すれば、森岡賢一郎のアレンジが無難な印象ではありますが、個人的にはこっちがA面扱いでも全然OKだったような気がするほどです。
ということで、世情諸々から、今年の春は厳しそうな予感もありますが、予感は予感であって、確信では決してありませんので、せめて今日は音楽での余寒見舞いというわけです。