OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ゴルソンハーモニー対ジョンルイス

2008-03-20 16:18:53 | Weblog

映画「2001年宇宙の旅」の原作者として有名なSF作家のクラークが亡くなりました。合掌。

現在、2008年の世界では、宇宙ステーション建設の真っ最中ということで、やや現実は遅れていますが、映画の中のテレビ電話も実用化されましたし、ブーメランは無重力でも戻ってくるし♪

あとは美味しい宇宙食と謎の物体の出現を待つばかりでしょうか。

ということで、本日は――

The Jazztet And John Lewis (Argo)


アート・ファーマーとベニー・ゴルソンが組んでいたジャズテットといえば、ベニー・ゴルソンのアレンジによる所謂ゴルソンハーモニーがウリのソフトファンキーなバンドでしたが、このアルバムは全篇がMJQのジョン・ルイスが作編曲した異色作!

いったいどういう心境で製作されのかは知りませんが、結論から言うと、ジャズテットにしてはちょいと煮え切らないのが第一印象です。しかし聴くほどにジンワリとしたジャズフィーリングが染み込んでくるという隠れ名盤として、私は愛聴しています。

もちろん、特有のソフトファンキーは健在♪

録音は1960年12月21~22日と1961年1月9日で、メンバーはアート・ファーマー(tp)、ベニー・ゴルソン(ts)、トム・マッキントッシュ(tb)、シダー・ウォルトン(p)、トーマス・ウィリアムス(b)、アルバート・ヒース(ds)、そしてジョン・ルイスが作編曲を提供しています――

A-1 Bel
 いきなり不協和音が全面に出てきて不安感がいっぱいに広がるんですが、キメは見事なジャズテット節で、アドリブに入った瞬間、アート・ファーマーが奇跡の名フレーズを聞かせてくれます♪ もちろんそれからは独特のソフトファンキーな世界が展開され、ベニー・ゴルソンのモリモリ節やビシッと引き締まったリズム隊の好サポートも見事!
 このアルバムの中では一番ストレートな演奏で、トム・マッキントッシュのトロンボーンは楽しさの塊ですし、ミョウチキリンなアンサンブルを経て登場するシダー・ウォルトンがトミー・フラナガンっぽいのには、思わずニンマリですよ。

A-2 Milano
 MJQは名盤「ジャンゴ(Prestige)」で演じていた印象深い名曲が、ここではなかなか力強く解釈されています。
 まず最初はシダー・ウォルトンのピアノが当然ながらジョン・ルイスっぽく、バンドアンサンブルは些か硬いものの、アート・ファーマーとベニー・ゴルソンの吹奏からは哀愁のハードバップがモロ出し♪ トム・マッキントッシュのホンワカしたトロンボーンも実に良い味わいです。

A-3 Django
 ジョン・ルイスとMJQにとっては代表的な名曲ですから、このジャズテットのバージョンはアップテンポのツッコミ鋭いアレンジが、最初は馴染めない雰囲気です。
 しかしアドリブパートの強引さは圧巻で、ブリブリ突進するベニー・ゴルソン、そこに絡みながら自分を曲げないアート・ファーマー、大ハッスルのシダー・ウォルトン、爆裂のトム・マッキントッシュと好演が続出します。
 ただしこれなんか、別にジャズテットが演奏する意義をあまり感じないという弱点が……。

A-4 New Youk 19
 如何にもジョン・ルイスらしい、心に染入る名曲です。
 MJQの演奏は、このセッションの後に作られた名盤「ロンリーウーマン(Atlantic)」に入っていますので、聞き比べも楽しいところですが、こちらはベニー・ゴルソンが畢生の名演を聞かせてくれますよ。

B-1 2 Degrees East, 3 Degrees West
 ジョン・ルイスがジム・ホール(g) やビル・パーキンス(ts) という西海岸派の名手と吹き込んだウルトラ名盤「グランド・エンカウンター(Paciffic Jazz)」に収録されていた静謐なブルースが、ここでは似て非なる無機質なハードボイルド感覚で演奏されます。
 テーマメロディをリードするアート・ファーマー&ベニー・ゴルソンの2管の響きが良い感じ♪ 続くトーマス・ウィリアムスのベースソロも秀逸ですし、シダー・ウォルトンがジョン・ルイスを演じてしまうのはご愛嬌♪♪~♪ ただしバックのアンサンブルが些かミスマッチと感じます。
 それでもアート・ファーマーの抑制されたファンキーフィーリングは最高ですし、演奏が進むにつれて力強いグルーヴを打ち出していくリズム隊が、なかなかたまりません。
 一方、ベニー・ゴルソンはサブトーンというか、あのモゴモゴした音色でエキセントリックなフレーズも交えたブルースマーチ節で健闘しています。またトム・マッキントッシュなんか調子が出ないのを逆手にとったオトボケを通すのでした。

B-2 Odds Against Tomorrow
 これは映画「拳銃の報酬」のサントラとして有名で、MJQのバージョンも味わい深い名演でしたが、この演奏も暗い情念を哀愁で煮〆たような絶妙の展開になっています。特にテーマメロディのアンサンブルがシブイですねぇ~。
 しかしアドリブパートに入ると一転して普通のハードバップになってしまうんですよ……。もちろんアート・ファーマーは見事な歌心を披露し、ベニー・ゴルソンは熱血のグイノリ、トム・マッキントッシュはノーテンキ、ビシバシのリズム隊も気持ち良いのですが……。
 正直、これもジャズテットとしての意義が不足していると思うのでした。

ということで、明らかな異色作です。ジャズテットに期待するファンキーで暖かい演奏が、些か不足しているかもしれません。

しかし不思議な味わいが確かにあるんですよ。

例えばホヤ貝とか高野豆腐とか、クセがあるのに好きな人にはたまらないという感じでしょうか。ちなみに私はホヤ貝が大好き♪ だからこのアルパムも好きとは言いませんが……。

ある日、何かのきっかけで、突然に聞きたくなる1枚です。

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