■Argent (CBS / Epic)
1960年代末から1970年代前半にかけて、数多くのヒットを放ったグループにスリー・ドッグ・ナイト=3DNがありますが、その得意技はオリジナルよりも所謂カパーヒットを狙う選曲センスの良さでした。
そして必然的に、そのオリジナルバージョンを聴いてみたいというのが、洋楽ファンの密かな楽しみに繋がっていた思います。
例えば昭和46(1971)年秋から冬にかけて我国でも大いに流行った「Liar」は、そのクールで熱いメロディと曲構成が、3DNならではの豪快にして粘っこい持ち味で表現されていた、実に私好みの素敵なヒット曲♪♪~♪ 結論から言えば、イギリスの4人組グループとして知る人ぞ知る存在だったアージェントが、1969年末に出したデビューシングル曲が初出のオリジナルバージョンで、もちろんそれはヒットしていません。
しかし私が最も驚かされたのは、このアージェントの正体で、それはなんと個人的にも大好きだったゾンビーズ直系のグループだったのです。
実はご存じのとおり、ゾンビーズは1960年代ブリティッシュビートのブームの最中にデビューし、「She's Not There」や「好きさ好きさ好きさ / I Love You」等々、リアルタイムでのヒットを飛ばしながら、それとは逆に経済的な問題やバンド側と制作&マネージメントサイドの思惑にズレがあったらしく、ついに1968年には活動停止状態……。ところがその間に出していた云わば旧譜の「ふたりのシーズン」がアメリカ国内で注目され、それが世界中に波及する大ヒットになったことから、オリジナルではない巡業専門のゾンビーズが幾つも現れたと言われています。
そしてその頃、本家ゾンビーズの残党だったロッド・アージェントとクリス・ホワイトは既に新しいバンドを計画中で、その紆余曲折の中では旧ソンビーズの面々とのセッションや新しいメンバーを物色中の音源も残されているものの、前述「ふたりのシーズン」の大ヒットに心中は如何ばかりだったでしょう……。
まあ、それはそれとして、とにかくロッド・アージェント(vo,key)、ラス・バラード(vo,g,key)、ジム・ロッドフォード(b,vo)、ロバート・ヘンリット(ds,per) で編成された本家ニューゾンビーズは、前述した事情からの「ゾンビーズ」という名前を封印、アージェントとして1969年末に発表したのが、本日ご紹介のアルバムです。
A-1 Like Honey
A-2 Liar
A-3 Be Free
A-4 Schoolgirl
A-5 Dance In The Smoke
B-1 Lonly Hard Road
B-2 The Feeling Is Inside
B-3 Freefall
B-4 Stepping Stone
B-5 Bring You Joy
結論から言えば、中身はゾンビーズから受け継いだお洒落なメロディ感覚とジャズっぽさ、そして当時流行になりつつあった所謂プログレを包括する英国流ロックジャズという、サイケおやじが大好きな歌と演奏ばかりです。
まずはゾンビーズ直系スタイルとして「Schoolgirl」が、実にたまりません。浮遊感満点の曲メロ、クールで熱いボーカル、そして間奏ではジャズっぽいピアノのアドリブ♪♪~♪
また同様に熱くさせられるのが力強い「Lonly Hard Road」で、もうゾンビーズのプログレ的展開としては絶句させられるほどですよ。キーボードのジャズフィーリングは言わずもがな、ギターとピアノと変幻自在のボーカルを披露するラス・バラードのソングライターとしての才能も強烈に楽しめる名演だと思います。
そして新しい試みしては、アメリカ南部風味というか、意外にもゴスペルロックの先駆けっぽい楽曲を披露していることで、例えばオーラスの「Bring You Joy」は実に情熱のスロービートで、ゴスペルを強く意識したピアノやコーラスが絶妙の彩りを添えたラス・バラードの絶唱が聞かれますし、ジョン・レノンがプログレしたような「Like Honey」も同じ味わいが良い感じ♪♪~♪
肝心の気になる「Liar」は、既に3DNのバージョンを知っていれば、明らかに物足りないでしょう。実際、私にとっても肩すかしでした……。しかし如何にも1970年代型のヒットパターンを確立していたアージェントの先進性は確かに感じられます。ただ、リアルタイムでは進み過ぎていたということでしょうね。
そのあたりのキャッチーな曲作りは、精密にしてラフな演奏が心地良い「Be Free」や欧州教会音楽の影響が色濃い「The Feeling Is Inside」、そして迷いをあえて露わにしている「Stepping Stone」が、決してイヤミになっていないことでも明らかだと思います。特に「Stepping Stone」はキメのリフレインが中毒症状さえ呼び起こすという、アブナサがヤミツキ♪♪~♪
ということで、虜になったら放せない隠れ名盤! というよりも、好きな人には好きとしか言えないアルバムだと思います。
告白すると、サイケおやじは当然ながら、リアルタイムで聴いたわけではありません。実はアージェントが本格的にブレイクしたのは、少なくとも我国では、昭和47(1972)年になって「Hold Your Head Up」が小ヒットしてから以降でしょう。また、さらに後になって、あの化粧バンドの最高峰だったキッスが、アージェントの「God Gave Rock And Roll To You」をカパーヒットさせてからじゃないでしょうか。
ですから私が、このアルバムを入手して、さらにゾンビーズからアージェントへと至る路程を知ったのは、昭和48(1973)年になっていましたし、その肝心のアナログLPも中古でガタガタのイギリス盤でした。
しかし、それでもサイケおやじの嗜好にジャストミートの内容は、絶対に手放せないアイテムの必要十分条件だったのです。
そして以降、後追いも含めて聴き進めたアージェントの素晴らしさは、筆舌に尽くし難ものがあります。
さらに現在、なんとそうした諸作品が紙ジャケ仕様のCDとして復刻で発売中! もちろん全買いモードのサイケおやじは、そのリマスターの素晴らしさにも感銘を受けましたので、皆様にも、この機会にお楽しみいただきたいと、願っています。
自分の好きなものには、必ずや共通点と流れがあるというのが、本日の結論なのでした。
コメント、感謝です。
ラス・バラード……、だいぶ、やられていますよねぇ。なんか本人はブレイク出来ないのが、かわいそうになるほどです。
ロマンポルノに使われた歌謡曲や日本のロックの名曲については、かなりの整理追及をしていますが、未だ完全ではありません。
いずれ纏まったら、拙サイトで特集する予定ではありますが、本当に奥の細道ですよ(苦笑)。
拘りがあれば、必ず共通点ありにシンパシーです。
ちなみに日活ロマンポルノ「東京エマニエル夫人」では、冒頭にジュリーの「ジュリアン」が艶かしく流れます、てへ♪(余談)