■Manny Albam And The Jazz Greats Of Our Time Vol.2 (Coral)
所謂ウエストコートジャズに夢中になっていた時期に愛聴していたLPです。
リーダーのマニー・アルバムについては良く知らないのですが、ハリウッド産のプログラムピクチャーでは劇伴担当でクレジットされる事も多い名前ですし、実際、1960年代からはテレビや映画演劇関係の仕事をやっていた作編曲家でした。
しかしそれ以前、1950年代までは大衆音楽の中心だったジャズで活躍していたそうで、本来はサックス奏者でした。そして多くの有名バンドに参加しながら、業界では高い評価のアレンジャーとなったらしいのです。
でも、我が国じゃ、「知る人ぞ、知る」かもしれませんね。
それでも明快なスイング感を基本にした作編曲は、ジャズの魅力の本質というアドリブのスリルと楽しさを存分に活かしたものですから、一度聞いたら気にならずにはいられません。また些か確信犯的ではありますが、そのリーダー盤に参加している著名なジャズメンの名前にも惹かれてしまいます。
さて、この作品は西海岸派の名手を集め、スマートなアレンジと一糸乱れれぬバンドアンサンブル、そして颯爽としたアドリブを堪能させてくれる痛快盤で、実は「Vol.2」とあるように、似たようなジャケットデザインでニューヨーク派のメンツを集めて作った兄弟盤「Vol.1」も存在する人気シリーズの1枚です。
録音は1957年8月14~16日、メンバーはコンテ・カンドリ(tp)、ジャック・シェルドン(tp)、スチュ・ウィリアムソン(tp,v-tb)、ハーブ・ゲラー(as)、チャーリー・マリアーノ(as,ts,bs)、ビル・ホールマン(ts,bs)、リッチー・カミューカ(ts)、メド・フローリー(ts)、ルー・レヴィ(p)、レッド・ミッチェル(b)、シェリー・マン(ds) という超一流の凄腕達をメインに、あえて「トランペットX」とクレジットされたハリー・エディソンが特別参加していますが、もちろんマニー・アルバムのアレンジとリーダーシップが見事ですし、アドリブのソロオーダーは原盤裏ジャケットにきちんと解説してあります。
A-1 Interwoven
アップテンポで輪唱形式のようなテーマアンサンブルの見事な演奏から、爽快にして流麗なアドリブの饗宴が楽しめます。
明快に飛び跳ねるルー・レヴィのピアノ、ハーブ・ゲラーとチャーリー・マリアーノのアルトサックスが熱いバトルを繰り広げれば、同じ趣向でコンテ・カンドリとハリー・エディソンがトランペッとのガチンコ対決! そこへスチュ・ウィリアムソンのトロンボーンが仲裁に入りますが、今度はビル・ホールマンとリッチー・カミューカが再びのテナーサックス全面戦争ですから、これぞジャズの醍醐味がたまりません。
もちろん要所にはカッコ良いアンサンブルのリフとハーモニーの魔法が現れて、7分半ほどの演奏時間がアッという間の桃源郷です。
A-2 Afterthoughts
一転して陰鬱なムードが支配的なスロー曲ですが、コンテ・カンドリのミュートトランペットが良い感じ♪♪~♪
しかし西海岸派のメンツにとっては、些か違和感の強い演目だったかもしれません。アドリブよりはバンドアンサンブルを聞かせる目論見かもしれませんが……。
A-3 Sweet's-Bread
タイトルどおり、ハリー・スウィーツ・エディソンが大活躍するグルーヴィな演奏ですが、ビル・ホールマンのバリトンサックスやリッチー・カミューカのテナーサックス、さらにハーブ・ゲラーのアルトサックスも健闘しています。
全体にはカンサスシティ風味の西海岸的な解釈というか、ハリー・エディソンがあまりにもジャストミートしすぎて、予定調和のつまらなさがあるのは否めません。しかしこういう味わいこそが、ジャズファンには宝物だと思います。
B-1 Jive At Five
ハリー・エディソンのオリジナルで、カウント・ベイシー楽団の十八番でもありますから、このメンツならばスマートな色合いの快演は決定的ですが、たっぷりとしたスイング感と明快なリズムの楽しさは、マニー・アルバムが企図して成し遂げたものでしょう。
同傾向の演奏としては、同じく西海岸派のショーティ・ロジャーズも似たような雰囲気のセッションを残していますが、その溌剌としたところよりは、マニー・アルバムの方がもっとジンワリとグルーヴィな味わいが深いところだと思います。
B-2 Thunder Burt
これもグルーヴィな味わいのブルースですが、同時に軽快なスイング感とウエストコーストならではのスマートなカッコ良さが素敵です。まずはリズム隊の屈託の無さが抜群でしょう♪♪~♪
アドリブパートではちょいと翳りのハーブ・ゲラー、ハートウォームなジャック・シェルドンにホンワカムードのスチュ・ウィリアムソンが良い感じ♪♪~♪ ビシッとキマッたホーンアンサンブルを挟んで登場するバリトンサックスは、なんとチャーリー・マリアーノという珍しさです。
続くメド・フローリーとリッチー・カミューカのレスター派テナーサックスの腕比べも楽しく、最後にはコンテ・カンドリが大ハッスルして見事な大団円となっています。
各アドリブ奏者の背後を彩るアンサンブルとリズムのコンビネーションも、実に楽しいですよ。
B-3 How Long Has This Been Going On
柔らかなメロディの哀愁系スタンダードを、この腕利きのメンツならではの凝ったアレンジで聞かせてくれますが、それにしてもアンサンブルの見事さ、そしてアドリブと編曲された部分の秀逸なバランスが素晴らしいですねぇ~♪
個人的にはハーブ・ゲラーのツッコミとリッチー・カミューカのクールな味わいが、特に心に残ります。
B-4 It's De-Lovely
オーラスはコール・ポーターの楽しいスタンダード曲ということで、爽やかにして力強いビートに支えられた鉄壁のバンドアンサンブルと和みのアドリブが堪能出来る名演になっています。
相当に細切れとなって登場するアドリブ奏者については原盤裏ジャケット解説に詳しいのですが、しかしそれでもリスナーは混乱してしまうほどの緻密な計算が……!
このあたりの緊張感は十人十色の好みでしょうねぇ……。しかしそれもウエストコーストジャズの魅力のひとつかもしれませんし、マニー・アルバムがあえてそれに臨んだ目論見だとしたら、流石の名声の証になるのでしょうか。
ということで、参加メンバーの豪華さを目当てに聴いても完全に満足の仕上がりだと思います。特にA面ド頭の「Interwoven」はモダンジャズだけの躍動感とスマートなアレンジ、ハーモニーの魔法が渾然一体となった決定的な名演じゃないでしょうか。もちろん聴き易さということでも満点だと思いますし、なによりも登場するアドリブ奏者の腕の競い合いという個人芸の冴えが良いです。
肝心のマニー・アルバムについては特に凝ったアレンジよりも、分かり易さと楽しさ優先ですから、何れの演奏もスイング感が絶品♪♪~♪
これを最初に聴いたサイケおやじが、マニー・アルバムのリーダー作、そして関わった演奏を探し始めたのは当然が必然の前科となりましたので、近いうちにまたご紹介したいと思います。
このアルバムは知りませんでしたが、私も一枚インパルス盤を所有しています。
今日改めて内ジャケットを見てそのメンバーに驚きです。オリバー・ネルソン、ジム・ホール、エディ・コスタ、フィル・ウッズ等かなり豪華です。正直にいうと買ってかなりたちますが一度も聴いたことがありません、玉石混合何でも在りのインパルスですから聞いたこともないマニー・アルバム=石盤と勝手に決め付けていました。曲目は映画のテーマ曲を集めた内容です。
毎度のコメント、ありがとうございます。
マニー・アルバムのインパルス盤は、確か1961年頃の録音でしょうか、カタログ番号からして、同レーベルでも初期の作品だと思います。
これは私も狙っていますが、なかなか良い出会いがなくて……。
ちなみにマニー・アルバムのセッションには、常に超一流のメンバーが参集しますね。これは実力と人徳があればこそなんでしょう。