■SEE SAW c/w 友 / 萩原健一 (Alfa Moon)
だいたい真夜中の電話ってのは不吉な知らせが多いんですが、案の定、本日未明にサイケおやじのスマホに入って来たのは旧友の訃報でした。
故人とは社会人になってからの親交ではありましたが、若い頃の仕事では一緒に辛酸をなめた仲でもあり、ある事情から別な業界へ移って以降も、それなり微妙ではありましたが、お互いの協力関係が続いていました。
しかし近年は年賀状での挨拶程度で、ほとんど疎遠になってはいたものの、あまりにも急な最期には愕然とさせられましたですねぇ……。
ご遺族からの話では、昨夜の入浴中の異変で救急搬送となったものの、既に心肺停止状態だったとかで、その呆気無さには茫然自失とするばかりだったとか、それは全くサイケおやじも同じ気持ちです。
なにしろ故人は気概に満ちた人柄で、内に秘めた芯の強さは誰にも負けず、それゆえに融通性を欠くという周囲からの評価は確かにそのとおりだったかもしれませんが、サイケおやじは、その何事も手抜きをしない姿勢は大いに尊敬しておりましたし、実際に助けられた事も度々でありました。
前述した「ある事情」というのも仕事上、理不尽で悪辣な関係先の執行役員と対立し、こちらが全て正しいはずと決まってはいても、サイケおやじは完全に腰が引けていましたから、故人の任侠と申しましょうか、極言すれば弱い者イジメで利益を貪らんと企んだ相手を潰し、その責任から自ら身を引いたという捨て身の行動は、それこそ周囲からは愚か者扱いだったんですから、サイケおやじは身も縮む思いをしたものです。
で、その後はあまり良い話も耳にすることなく、ほとんど別世界の業種に携わりながら、きっちり成功を収めたところでの急逝には、もはや言葉もありません。
そこで本日は昭和62(1987)年早春に発売された萩原健一のシングル盤「SEE SAW」のB面に収録されたアーバンソウルな名曲名唱「友」を捧げたいと思います。
このシングル盤に収録の両面2曲は、萩原健一が井上堯之(g) 以下、速水清司(g)、ミッキー吉野(key)、渡辺建(b)、樋口晶之(ds)、菅原裕紀(per)、鈴木明男(sax) 等々が顔を揃えたアンドレ・マルロー・バンドと共にスタジオレコーディングしたアルバム「Straight Light」からのカットで、ギターをぶら下げた萩原健一=ショーケンのジャケ写もキマッている人気作でしょう。
で、B面収録の「友」は作詞作曲:速水清司が提供の都会派ソウル歌謡で、自堕落ながら魂の入った泣き節で歌うショーケンのバックでは絶妙のオカズを入れるギター、胸に染み入るオルガン、もちろんリズム隊はタイトで粘っこく、それでいて全篇からはスマートなアーバンフィーリングが滲み出て来ますから、刹那の友情が綴られた歌詞がヒリヒリとして泣けてきますよ。
あぁ……、これも男の友情ってやつですよねぇ~~~。
一方、A面収録の「SEE SAW」はオシャレなシャンソン系歌謡ロックと申しましょうか、ありがちな男と女の下世話な愛の行動こそが、不滅の人間味じゃ~なかろうか……、なぁ~んていう哲学的な思考よりは、むしろショーケンのジタジタに緩んだ節回しこそが満点の説得力という感じです。
う~ん、言い切ってしまえば、この時期のショーケンは決して上手いボーカリストではありませんが、「味」とか「フィーリング」という点においては、間違いなく素晴らしいロッカーだと思うばかりです。
ということで、齢を重ね、一番悲しい事は自分の周囲から親しい人や好きな人が先に他界してしまう事かもしれません。
少なくとも、サイケおやじにとっては、そうです。
衷心より、合掌。