■In The Land Of Grey And Pink / Caravan (Deram)
ロックと言えばエレキギターが、そのジャンルの成立過程に大きな役割を果たし、さらにはギタリストがスタアになるほどの重要性が認められますが、それが1970年代ともなれば、今度はキーボードが同等か、もしかしたら、それに代わるほどの地位を得るようになりました。
例えばEL&Pのキース・エマーソン、イエスのりック・ウェイクマン、ディープ・パープルのジョン・ロード、ブライアン・オーガーあたりは説明不要だと思いますし、他にも大勢の個性的なプレイヤーが登場したことで、ますますロックは多様化の道を歩んだと思います。
さて、そこで本日ご紹介の1枚は所謂「カンタベリー」なぁ~んていうジャンルに分類されるキャラバンというイギリスのグループが1971年に発表した、同バンドにとっては通算3作目のアルバムなんですが、結論としては我国も含め、決してリアルタイムでヒットした作品ではありませんでした。
それをサイケおやじが何故に気にしたかと言えば、初期キャラバンの中核メンバーだったデヴィッド・シンクレアというキーボード奏者が聴きたかった事で、実はマッチング・モウルというロックジャズバンドが出したアルバム「そっくりもぐら」での活躍に感銘を受けていたからに他なりません。
そこで各方面に探りを入れ、辿りついたのがキャラバンであり、このアルバムでした。
演奏参加メンバーはパイ・ヘイスティングス(vo,g)、デヴィッド・シンクレア(key)、リャード・シンクレア(vo,b,g)、リチャード・コフラン(ds) という4人が、一応はキャラバンというグループを名乗っていたようですが、他に重要な働きを示すジミー・ヘイスティングス(fl,sax)、デヴィッド・グリンステッド(per,etc) 等々の助っ人がジャケットに記載されていますので、おそらくは流動的な編成のバンドだったんじゃないでしょうか。
A-1 Golf Girl
A-2 Winter Wine
A-3 Love To Love You
A-4 In The Land Of Grey And Pink
B-1 Nine Feet Underground
やはり、なんといってもアナログ盤B面を全部使った組曲形式の長尺トラック「Nine Feet Underground」があることで、これは如何にも当時が隆盛期だったプログレを先入観念させられてしまう印象です。しかし、まずはA面に針を落とせば、そこから流れてくるのは英国田園地帯の長閑なムードが横溢したホノボノロックとでも申しましょうか、これが実に快適なんですねぇ~♪
個人的にはリンゴ・スターのボーカル物を連想さられてしまうんですが、同時にインストパートのジャズっぽい充実度も素晴らしく、「Golf Girl」ではノンクレジットのトロンボーン奏者がサウンドのキメを演じていたり、淡々としたリズム隊が実は力強いグルーヴを醸し出していたり、さらにはキーボードの味わい深い音の組み立てやフルートの微熱なアドリブとか、全く一筋縄ではいきません。
そして続く「Winter Wine」は、このアルバムを代表する名曲にして大名演!
アコースティックギターによる導入部から前半の曲メロの爽やかさは、コーラスパートも含めて実に気分は最高なんですが、いよいよ本篇に入ってからのパワフルなリズム隊の動きとキーボードの多彩なオカズとアドリブの連なりは、まさにロックジャズの天国でしょう。実際、ここで聴かれるリングモジュレーターやファズオルガンとしか表現しようのない独得の鍵盤使いは、デヴィッド・シンクレアの真骨頂だと思います。もろちん歌心優先主義の中に過激なフレーズや熱いビートを潜ませる手法が、たまりませんよ♪♪~♪
ですからクールなメロディとリズム処理が、まさにキャラバン風ポップソングとなった「Love To Love You」やアルバムタイトル曲「In The Land Of Grey And Pink」の疑似ウエストコーストサウンドが英国トラッドやモダンジャズ、そしてサイケデリックロックを調味料として煮詰められていく過程は、所謂プログレの概念と微妙にズレているというか、全体の構成の緩さがアドリブの入る余地を広げている感じに、キャラバンの魅力があるんじゃないでしょうか。
まあ、それはあくまでもサイケおやじだけの感性ではありますが、B面をぶっ通して展開される「Nine Feet Underground」が、一応は幾つかのパートに分かれていながら、その場面展開が何処かしら場当たり的!?
う~ん、ファジーと言うかなぁ~。
しかしデヴィッド・シンクレアのキーボードが大部分で主役を演じるアドリブパートは、しっかりとバンド全体をリードして、約23分弱を全く飽きさせません。もちろん全体を俯瞰した仕掛けの妙も楽しめるんですよねぇ~♪
ということで、このあたりのレコードはリアルタイムの我国でも発売されていたようですが、売れていなかったので中古も出ないという悪循環でした。
そこでサイケおやじは必然的に海外盤の中古を漁るわけですが、それが突如として静かなブームになったのは、1980年代からでしょう。
それについては個人的な当て推量にすぎませんが、まずプログレファンの執拗な要望があった事はまちがいなく、既に欧米では死滅寸前だったジャンルに拘泥する執念がキャラバンやソフトマシーンといった英国系ロックジャズバンドをマニアの世界でブレイクさせたように思います。
また同時にフュージョンから入り込んできた新しいファン、そしてパンクやニューウェイヴの台頭によって鑑賞する対象を失った古くからの音楽好きが、所謂「カンタベリー」に桃源郷を求めた現実もあったでしょう。
当然、サイケおやじにしても、フュージョンよりは正統派ロックジャズやソウルジャズが好きですから、キャラバンに夢中となるのには、それほど時間は必要ありませんでした。関連人脈を辿りつつ、忽ちに増えいてくレコードの数々は、明らかに周囲からの冷たい視線と重なっていたわけですが、そんなの関係ねぇ~~!
好きなものを素直に聴けることこそ、幸せであり喜びだと思います。
最も好きなアルバムなんです。
元々はリチャード・シンクレアのファンで
キャラバンは彼が在籍していた頃のものしか
聴かないといった堅物野郎(笑)ということもあり
ジャケットのアートワークの魅力も相まって
彼らの最高のアルバムと思っております。
コメント感謝です。
特にキャラバンへの賛同には嬉しさも倍増♪
このアルバム、近々「40周年記念盤」というデラックスエディションが出るんですよね。
凄く、楽しみです。