OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

元祖AORのジョニー・ブリストル

2009-11-25 12:03:18 | Soul

Bristol's Cream / Johnny Bristol (Atlantic)

不景気の真っ只中とはいえ、街にはクリスマスツリーやイルミネーションが輝くこの時期になると、日頃は無骨なサイケおやじも、ちょいとお洒落な音楽が聴きたくなります。

そこで本日は、元祖AORの1枚という名盤を取り出してみました。

主役のジョニー・ブリストルはデトロイト時代のモータウンでスタッフライター兼プロデューサーとして活躍した裏方のひとりですが、私がこの人を意識したのは、ボズ・スキャッグスが大ブレイクする直前の1974年に出していた隠れ名盤「スロウダンサー」を聴いてからです。

そのメロウで情熱的なサウンド作りの妙と楽曲構成の上手さは、もちろんボズ・スキャッグスの実力でもありますが、やはりそれ以前の幾分イモっぽかった部分を見事に男の哀愁とセクシーさに変換させてしまったプロデュースの巧みさは、ジョニー・ブリストルの神髄だと思います。

と言うよりも、それまでにジョニー・ブリストルが培ってきた感性が、黒人音楽に憧れたボズ・スキャッグスという白人の実力派を得て、見事に開花したのかもしれません。ご存じのようにモータウンサウンドは黒人R&Bでありながら、実は白人ポップスの味わいを強く取り入れていましたから、それが黒人だけのハートウォームでメロウなフィーリングと結びつけば、それは極上のAORの誕生でした。

そしてついに出たのが、1977年に発売されたジョニー・ブリストル自らのプロデュースによる傑作リーダーアルバム「Bristol's Cream」というわけです。

ちなみにジョニー・ブリストルは当然ながら、モータウンに入る前にも、また辞めた後にも自己名義のレコーディングやシングル&アルバムを幾つか残していたのですが、後追いで聴いたそこには、残念ながら、それほど満足出来るものがありません。

ところが前述の「スロウダンサー」を筆頭に、諸々の歌手をプロデュースした作品が、1974年頃から急激に完成度が高くなっているのです。例えば黒人コーラスグループのタヴァレスが渾身のデビューアルバム「チェック・イット・アウト(Capitol)」は、不滅の金字塔だと思います。

そして肝心のこのアルバムは、もう胸が熱くなって、涙が滲む名曲名唱ばっかりがテンコ盛り♪♪~♪

 A-1 Do It To My Mind
 A-2 I Love Talkin' 'Bout Baby
 A-3 I Sho Like Groovin' With Ya
 A-4 You Turned Me On To Love
 B-1 She Came Into My Life
 B-2 Love To Have A Chance To Taste The Wine
 B-3 Baby's So Much Fun To Dream About
 B-4 Have Yourself A Good Time Thinkin' 'Bout The Good Time

まずA面ド頭「Do It To My Mind」が所謂チャカポコリズムと胸キュンのストリングアレンジ、そしてグッと弾けるキメのフレーズが最高のアレンジで歌われる、まさにアーバンソウルの決定版! 持ち味のハートウォームな歌い回しが冴えるジョニー・ブリストルだけの「節」が、本当に気持良いです♪♪~♪

あぁ、この1曲だけから無数のパクリが生まれたのが、はっきりと納得されますよ。

そして続く「I Love Talkin' 'Bout Baby」は、ほとんどボズ・スキャッグス状態というか、甘い語り口が強いビートのメロウなサウンドで彩られているんですから、たまりません♪♪~♪ もちろん仄かに滲んでくる曲メロの良さも秀逸です。

同じ雰囲気の素晴らしさは、メロウパラードの「You Turned Me On To Love」や西海岸風AORの秘密を垣間見せる「She Came Into My Life」でも存分に楽しめますが、それは演奏パートを担当する凄腕ミュージシャン、例えばジェームス・ギャドソン(ds) やデイヴィッド・T・ウォーカー(g) 等々、聴けば一発のメンツが大集合!

ですから、強いビートの踊れる曲「I Sho Like Groovin' With Ya」にしても、お洒落なフィーリングは決して損なわれることなく、しかもポール・ライザーの流麗なストリングスアレンジも最高ですから、あぁ、いつまでも浸っていたい世界が展開されるのです。

とにかく全曲、アルバムの全てが素晴らしすぎる名盤といって過言ではありません。もちろんソウルフルな味わいは最高潮♪♪~♪

AORが好きな皆様には言うまでもありませんが、これを見事なお手本にした我国のニューミュージックや歌謡曲は数限りなく存在しています。山下達郎も、絶対に好きなはずですよ。

しかしジョニー・ブリストルは、リアルタイムでは決して真っ当な評価は得られなかったと感じています。このアルバムにしても、AORが上昇期に発売されながら、それほど注目のプロモーションがあったわけではなく、実際、売れていたという話も……。

また翌年にも同路線の、「ストレンジャーズ」という素晴らしいアルバムを出しながら、活動がフェードアウトしていったのは、何故でしょう……。

その意味で今日、局地的とはいえ、ジョニー・ブリストルが根強く聴かれている実態を、ぜひとも皆様に知っていただきたく思います。

今のこの時期、必需品ともいえるハートウォームなアーバンソウル、そしてAORの切り札的なアルバムとして、恋人と聴くのも良し、またひとり、男の哀愁をかみしめながら聴くのも素敵な名盤です。

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