■スキヤキ '81 / A Taste Of Honey (Capitol / 東芝)
最近は日本食の流行もあり、世界各国で我が国への認知度も正常値に近くはなっておりますが、それでも1980年代には、まだまだ噴飯物というか、とにかく「和風」の解釈はゴッタ煮状態であり、それが現在でも罷り通っているのも、ひとつの現実かと思います。
中でも諸外国の日本に対するイメージを具象化する手段のひとつが和服&キモノ、つまりは和装のファッションであり、それを着用することが「日本」を表現する一番分かり易い手段という方法論は、あながち否定出来るものではありません。
それは例えば我々日本人が金髪のカツラを被るのと同じ行動なんですよねぇ……。
さて、そこで本日掲載したのはテイスト・オブ・ハニーが1981年、そんなこんなを見事に結実させて全米大ヒットに仕立て上げた「スキヤキ '81 / Sukiyaki」をA面に入れた日本盤シングルなんですが、ど~です、黒人ネーチャンの二人組が日本庭園でにこやかにキメたジャケ写の印象は、とにかく「和風」を直截的にブチ込んだストレートなキワモノ!?
全く我々日本人の感覚からすれば、そのズレは面白くもあり、面映ゆいところもあるんじゃ~ないですかねぇ~~~。
もちろん、こ~なったのも、歌っているのが坂本九が1963年に放った全米トップヒット「上を向いて歩こう / Sukiyaki」のカバーであれば当然も必然なんでしょうが、テイスト・オブ・ハニーはそれを新たに附した英語の歌詞で演じてるのがミソとはいえ、サウンド構成が琴とか、おそらくはキーボード類で作り出したのかもしれないミョウチキリンな和楽器系の響きもたっぷりと塗したメロウソウル仕立てなんですから、いやはやなんとも、これがウケなきゃ~~日本趣味もなにもあったもんじゃ~ない???
しかも、掲載したジャケ写と同じデザインのピクチャースリーブによるシングル盤が当時は欧米でも売られていたんですから、これは完全なる確信犯の勝利と言わざるをえませんねぇ……。
でも、なんとなく微笑ましい印象も確かにありまして、実は現在滞在中のゴッサムシティで昨夜訪れた店のショウタイムには、きっちりキモノを着こなした黒人女性歌手が、このバージョンに沿った英語歌詞による「上を向いて歩こう / Sukiyaki」をやってましたですよ♪♪~♪
ということで、異郷の地におけるホームシックなんてものにはすっかり無縁になっているサイケおやじではありますが、何故か今度ばかりは妙に望郷の気分……。
それが所謂ムシの知らせってやつなら怖いんですが、そんな状況も考えられず、つまりはお気楽にやれっていうことと、自分に言い聞かせているのでした。