昨夜は旧友に誘われて、久々に夜の街で遊びまくってしまったです(自嘲)。オマケにいろんなブツにも手を出してしまったしなぁ……。完全に散財モードです。
さて、そんなわけで最近、盟友ブログサイトの管理人諸氏から語られることも多い、ジャズ鑑賞と体調の問題について、自分も痛感する事が多くなりました。心身の疲労というかストレス溜まっていると、レコード棚から取り出すアルバムは、どうしても癒し系が多くなってしまいます。
これでも若い頃は朝の景気づけにド派手な一発を聴いていたもんですが……。あるいは夜だって、やる事をやる前には勢いがつくものを♪
ということで、本日はこれで体調チェックです――
■Talkin' About! / Grant Green (Blue Note)
グラント・グリーンはブルーノートの看板スタアという黒人ギタリストですから、リーダー盤も大量に作られていますが、その大部分はソウル&ファンキー、コテコテに近い楽しさ優先主義の人気盤がどっさり♪ もちろん正統派ジャズミュージシャンとしての実力は超一流です。
それはサイドメンとして参加したセッションの多様性でも明らかなんですが、モードやフリーに近い演奏でも、全く自分色にその場を染上げてしまうアクの強さは圧巻の存在だったと思います。
とは言え、それゆえに疲れが増幅させられる演奏もあったりして、本日の1枚は、その代表かもしれません。
録音は1964年9月11日、メンバーはグラント・グリーン(g)、ラリー・ヤング(org)、エルビン・ジョーンズ(ds) という恐すぎる面々! 一応、正統派オルガントリオの体裁とはいえ、このメンツで平穏無事な演奏になるなんて、誰も思わないでしょう。しかしそれにしても――
A-1 Talkin' About J. C.
タイトルと演奏からして、ジョン・コルトレーンに捧げたモードの嵐はお約束! いきなりアップテンポで熱い語り口のラリー・ヤングがテーマ提示、続いてグラント・グリーンが十八番のアドリブフレーズを叩きつけます。もちろんエルビン・ジョーンズは暴虐のポリリズムで烈しい煽りなんですねぇ~♪ ラリー・ヤングのオルガン伴奏が控えめに聞こえるほどです。
あぁ、グラント・グリーンが執拗に同じフレーズ繰り返す、所謂針飛びフレーズが冴えわたりです! そしてラリー・ヤングがモリモリとアドリブソロに入れば、背後からエグイばかりのコード弾きとカウンターのリフをぶっつけてくるんですから、これにはエルビン・ジョーンズも怒りのドラミングで強烈な対抗意識を露わにするという、本当に地獄の展開!
これが12分近く続くんですから、体調が悪かったら聴いていられませんね、今の私には。う~ん、幸いにも、なんとか今日はイケてます♪
A-2 People
一転してゆるやかで優しいメロディが流れてくるという、至福の一瞬がヤミツキになります。ラリー・ヤングの伴奏オルガンが最高に良い感じ♪
テーマメロディを全く自分流に味付けしながら、じっくりと弾いていくグラント・グリーンは、アドリブパートではシカゴソウルぽいアドリブフレーズも交えて、素敵な歌心を披露してくれます。
エルビン・ジョーンズのサポートもブラシに撤していますが、力強さと軽快な雰囲気が両立されていますから、これもたまらんですね♪
全体にフュージョンに近い、ソフト&メロウのフィーリングが感じられるのでした。私は好きです、これが♪
B-1 Luny Tune
ラリー・ヤングが書いた幾何学的なビバップのような、楽しくない曲なんですが、アドリブパートに入るやいなや、グラント・グリーンが十八番の世界でグルーヴィな演奏になるあたりが、ハイライトでしょうか。
エルビン・ジョーンズのドラミングも控えめながら白熱したステック捌きは何時もどおりですし、ラリー・ヤングのオルガンベースの4ビートも侮れません。
ただしA面のテンションが高すぎた所為か、イマイチ……。
B-2 You Don't Know What Love Is
お馴染みの有名スタンダード曲が、極めて真っ当に演奏されますから、これも物足りないというのが正直な気持ちです。超スローテンポのテーマ部分なんか、聴いているこっちが焦れてくるほどです。
それでも途中から入ってくるエルビン・ジョーンズのブラシが、それなりに強いビートを出してくれますから、テンポが上がったアドリブパートでホッとするのですが……。
ただしグラント・グリーンが本来の持ち味である夜の雰囲気は如何ともし難く、それゆえに疲れて帰宅した時なんかには絶対的なものになるでしょうね。意外にラウンジ系というラリー・ヤングも憎めません♪
B-3 I'm An Old Cowhand
ソニー・ロリンズの名演が残されている楽しい曲ですから、ここは百も承知の快適グルーヴ♪ ラテンビートを交えたエルビン・ジョーンズが、まずゴキゲンですねぇ~~。ラリー・ヤングの伴奏も大衆的というか、刺激に満ちていながら、イヤミではありません。
肝心のグラント・グリーンは好調をキープしながら、新しめのフレーズも弾いていて、好感が持てます。盛り上げ方が新主流っぽいのにも、ニヤリとさせられます。ギターが新鮮に歪んでいるのです♪
またラリー・ヤングが過激というかジコチュウ! 好き放題にアドリブしますから、エルビン・ジョーンズが焦っている場面さえ、私には感じられます。グラント・グリーンはここで、もちろん伴奏をやっていませんねっ! ドラムス対オルガンの一騎打ちが、さもありなんです。
ということで、濃密なA面に対して些か気抜けのビールっぽいB面かもしれません。しかし、それにしても、こんなアブナイ演奏をよくもまあ、アルフレッド・ライオンが発売許可したもんだと思います。A面なんて明らかに時代の最先端でしょう。
後年、トニー・ウィリアムスがやってしまう「ライフタイム」の元ネタ!?
「Talkin' About J. C.」でグッタリ疲れ、「People」でメロウに癒されるという、まさにゴールデンアワーという感じです。しかもメンバーが、それを嬉々としてやっている雰囲気が伝わってくるんですねぇ~♪
しかし体調が悪いと、これが逆転し、何が哀しくてこんな演奏を聴かなきゃならないの……? なんて思うのですから、私の我侭は、こんなところにも表れているいうわけです。
ちなみにステレオバージョンは左にギター、真ん中にオルガン、右にドラムスというミックスで、これがなかなか立体的に楽しめますし、モノラルバージョンは団子状の音圧が物凄いですよ。これは十人十色に好き嫌いが分かれるでしょうが、私は両方好きです。つまり、これも気分次第という我侭なのでした♪