OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ストーリーズのB級的創意工夫

2012-01-09 15:35:31 | Rock

Brother Louie c/w Changes Have Begun / Stories (Kama Sutra / 日本コロムビア)

食い物でも映画でもアイドルでも、とにかく今は「B級」が堂々と罷り通っていますが、すると「B級」ってものが何時、何処で誰が定義分類したのか?

そんな事に妙に拘ってしまうのがサイケおやじの嫌なところです。

もちろん、「B級」という感触はしっかり理解しているつもりなんですよ、自分なりは。

例えば本日ご紹介のシングル曲「Brother Louie」は1973年に世界中で驚異の大ヒットになった正統派ロックの典型なんですが、演じているストーリーズという、スティーヴ・ラブ(g,vo)、マイケル・ブラウン(key,vo)、イアン・ロイド(v,b)、ブライアン・マーディ(ds,vo) の4人組共々、これは決定的な「B級」味じゃないでしょうか?

 夜のように彼女は黒いけど
 ルイは真っ白な白
 ブラウン・シュガーを味わったようなアブナイ気分
 ルイは忽ち恋に落ちた
 まちがいじゃなく それは自然の成り行き
 ルイは最高の女を手に入れた

 彼女はルイを家に連れて行く
 ママとパパに紹介するために
 ルイは自分の場所を知っていたよ

 ルイ ルイ ルイ ルイ ルイ ルイ
 ルイ ルイ ルイ ルイ ルイ
 泣きたくなるだろさ

 黒と白の間には どんな違いがあるのだろう
 僕の気持ちがわかるかい

というような歌詞の中身ですから、これは所謂「招かれざる客」という、人種差別の不条理を歌ったものでしょう。

こういう問題はアメリカでは古くから扱われてきたと思われますが、しかしこの「Brother Louie」は本来、イギリスでファンキーロックをやっていたホットチョコレートという白黒人種混成バンドが最初にヒットさせたもので、ストーリーズのバージョンはカパーだったんですが、なんとっ!

アメリカではチャートトップの偉業を成し遂げたところに、1973年の世相があったような気もしています。

そして「B級」と言っても、それは漫然と演じるだけでは到底売れるわけも無く、例えば「B級グルメ」がそっち方面の大会で上位に入るものについては、それなりにきっちりと研鑽されているのと同じく、音楽の世界だって創造的狙いの的確さが求められ、ストーリーズは見事にそれをやってのけたと思います。

中でも一番印象的なのが、中盤から大きく使われるストリングスの響きも交えたキーボードアレンジで、そのフレーズの抽象的でジャズっぽい味わいは今でも古びていないでしょう。

そして、これと同質の感触が、例えばクインシー・ジョーンズが1978年に発表した傑作人気アルバム「スタッフ・ライク・ザット」に収録されている名演「Tell Me a Bedtime Story 」のストリングスアレンジに出てくる事に気がつかれている皆様もいらっしゃるはずです。

実はそれを演じていたのはハリー・ルコフスキーというクラシックもジャズも万能選手のバイオリン奏者で、当然ながらスタジオワークでもトップクラスの名人なんですが、ストーリーズのリーダーだったマイケル・ブラウンはこの人の息子か甥じゃないか? という説があり、またマイケル・ブラウンの履歴にはクラシックの味わいも導入していたソフトロック系のレフト・バンクというグループの中心人物でもあった事等々、なかなか興味を惹かれますねぇ~♪

しかもストーリーズは決して頭でっかちのバンドではなく、全体のグルーヴにはロッド・スチュアート&フェィセズや所謂スワンプロック系の粘っこいハードさがあって、おまけにイアン・ロイドのボーカルが良い意味でのダサいフィーリングですから、そんなところにも「B級」の真髄が隠しようもありません。

その意味でB面に収録の「Changes Have Begun」の、ちょいとビートルズっぽい味わいの滲みも、サイケおやじには愛おしくてたまりませんよ。

そういう部分を本家たるホットチョコレートのバージョンと比較すると、これがなかなか初期スティーリン・ダンというクールなラテンロックが、ストーリーズではイナタい雰囲気に変換される秘密の手口の動機解明???

つまりリーダーだったマイケル・ブラウンは、所謂お洒落路線を狙いながら、他のメンバーのハードロック節に負けたというか、結論から言うと、この大ヒットを飛ばしながらも、マイケル・ブラウンは潔く(?)バンドを脱退し、以降は新ベーシストを入れることでイアン・ロイドがグループを掌握しつつ、塩味追求型のB級ロックを提供していくのです。

ということで、言うまでもなく「B級」という形容は褒め言葉と同義でありますが、やはりそこには創意工夫とか努力というものが足りないと結果は惨めじゃないでしょうか。

ストーリーズは「Brother Louie」の他にも小ヒットを出しているものの、一般的なイメージでは「一発屋」であり、当時のアマチュアバンドのコピーの対象にされていたほどの親しみ易さが裏目に出ている存在かもしれません。

しかしストーリーズほど、ある世代の洋楽ファンには忘れられていないバンドも少ないはずで、「B級」と言われるほどの価値感は不滅だろうと思います。

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