■想い出のサマー・ブリーズ / Seals & Crofts (Warner Bros. / ワーナーパイオニア)
1970年代に活躍した男性デュオの中でも、そのルックスと放ったヒット曲のギャップの大きさを鑑みれば、本日の主役たるシールズ&クロフツは最右翼かもしれません。
例えば彼等が1972年に出したメガヒットにして出世作の「想い出のサマー・ブリーズ / Summer Breeze」は印象的な演奏パートのキメのフレーズとジェントルなメロディゆえに、基本的に英語の歌詞が通用しない我が国でも晩秋から翌年始めにかけて、主にラジオを中心に流行りまくった洋楽のひとつなんですが、この「ラジオを中心に」というところが、大きなミソでしよう。
それは掲載した日本盤シングルのピクチャースリーヴからも明らかなように、失礼ながらシールズ&クロフツのルックスには当該ヒット曲を印象づけたセンチメンタルな爽やかなとは裏腹の胡散臭さが強く滲んでいますからねぇ……。
実際、サイケおやじは「想い出のサマー・ブリーズ / Summer Breeze」を聴いて、一発で気に入っていただけに、初めて洋楽雑誌でシールズ&クロフツのグラビアカットを見た時には、なんじゃ~、こりゃ~、という松田優作状態でしたよ。
まあ、尤もジーパン役の松田優作が「太陽にほえろ」の劇中で殉職するのは、さらに後年だったんですが、それはそれとしてシールズ&クロフツのようなヒッピー系のミュージシャンが、「想い出のサマー・ブリーズ / Summer Breeze」のようなソフト&メロウなポップスを歌っていたというインパクトは絶大でありました。
そこでサイケおやじは例によって件の洋楽雑誌に載っていた彼等のプロフィールから、ジム・シールズとダッシュ・クロフツはセッションミュージシャンとして活動しながら、様々なバンドや自分達の名義でレコードを何枚も出していた事を知り、中でも1958年に「Tequila」の特大ヒットを放ったチャンプスのメンバーだったキャリアは有名なんですが、これは推察するに、本来はスタジオで作られた実体の無いグループであったチャンプスの巡業用バンドにジム・シールズはテナー&アルトサックス、ダッシュ・クロフツはドラムスで参加していたという定説に賛成です。
ちなみにチャンプスには似た様な立場のパートタイマー(?)的なミュージャンが大勢去来していたそうで、中にはグレン・キャンベル(g) やルイ・シェルトン(g) 等々の達人も!?
そう思えば、この「想い出のサマー・ブリーズ / Summer Breeze」を含む当時の諸作がルイ・シェルトンのプロデュースである事にも納得出来るわけでして、しかも曲そのものがシールズ&クロフツの自作自演とあっては、そういう下積みもあながち無駄ではなかったのでしょう。
もちろん彼等は所謂マルチプレイヤーとしてレコーディングでもライブの現場でも、各々がギターやキーボードの他にマンドリンやバイオリン、ベースや打楽器を操り、しかも上手いんですよねぇ~~♪
それは残されたライブ音源や映像でも確認出きるんですが、何故か他にもヒットシングル&アルバムを相当に残したシールズ&クロフツの歌や演奏は現在、復刻状況がイマイチ芳しく無いわけで……。
実は本日掲載した昭和49(1974)年発売の私有シングル盤には、中川五郎の訳詩による「想い出のサマー・ブリーズ / Summer Breeze」の日本語バージョンが入っているのに、今では「無かった事」にされているのが、悲しいですよ。
また、そうなっているのはシールズ&クロフツが1980年代に入って、ほとんど表立った芸能活動をやっていない所為もあるんじゃ~ないでしょうか。
どうやらその時代以降は若い頃から信仰している「バハーイー教」に深く帰依し、聖なる生活をしていると言われる彼等にすれば、過去は過去しておきたいのかもしれませんが、広くポップスファンを惹きつけていたシールズ&クロフツは、そっとしておくには勿体ない存在と思うばかりです。
ということで、これからの季節にはジャストミートする「想い出のサマー・ブリーズ / Summer Breeze」には、かなりのカバーバージョンがあるようで、例えばサイケおやじはメロウソウル仕様のアイズリーズ版が大好き♪♪~♪
また、同時期に我が国だけの大ヒットになっていた、同趣向の名曲「シーモンの涙 / Simone」を演じたイングランド・ダンとジョン・フォード・コリーのイングラド・ダンの兄がジム・シールズという逸話も有名というか、やっぱり兄弟なればこその感性は認めざるをえません。
この「想い出のサマー・ブリーズ / Summer Breeze」と「シーモンの涙 / Simone」、そして出来ればヴィグラスとオズボーンの「秋はひとりぼっち / Forever Autumn」を続けて聴くという必殺の自己満足も、秋には大いにオススメしたいところです。
コメント、ありがとうございます。
レス、遅れて申し訳ございません。
仰るとおり、当時のラジオは素敵な洋楽ヒットの宝箱で、そのメロディや演奏や歌のあれやこれが、今もしっかり身体に染み着いています。
シールズ&クロフツは絶対に復刻されるべきでしょうねっ!
「秋はひとりぼっち」は当時本当によくラヂオから
流れてきたのを耳にしては
鼻歌まじりに口ずさんでいました。
しかしイングランド・ダンとジム・シールズが
兄弟だったなんて今の今まで知りませんでしたよ。
今思いますと1972年ってシングルヒットの
宝庫だったような気がしますが
ブレッドの「ギターマン」や
アメリカの「ヴェンチュラ・ハイウェイ」なんかも
同じぐらい聴いていましたでしょうか。
「想い出のサマーブリーズ」また聴きたいんですが
国内盤に固守するあまりに中々良い出モノに
未だ巡り遭わないのがツライところです。