昨日、今日と防災訓練に駆り出されました。中国でも先月末に再度の地震がありましたし、我が国は局地的に集中豪雨で被害が続出! これまでは「訓練」と割り切って、笑いながらやっていた時もありましたが、今回ばかりは神妙な参加となりました。
被災された皆様には、心からお見舞い申し上げます。
ということで、本日も新ネタから――
■Miles Davis Quintet Live in Copenhagen & Rome 1969 (Jazz Shots)
何時の時代も前向きなマイルス・デイビスが一番揺れていたというか、モダンジャズとロックとソウルの狭間でスリリングに自己のサウンドを模索していたのが1969年頃じゃなかったでしょうか?
歴史的には名盤「In A Silent Away」と不人気な大ヒット盤「Bitces Brew」を出してロックファンにもアピールしていた時期ですが、イノセントなジャズ者から疎んじられはじめたのも、この頃だったと思います。
しかし前述のスタジオ録音盤はともかくとして、ライブの現場で残されたブート音源あたりを聴くと、これはジャズでしかありえない熱気が充満していますねっ♪
で、本日ご紹介のDVDは、そんな時期の欧州巡業から2ヶ所で撮影収録された映像が楽しめる強烈なプレゼントです。もちろんこれまで一部はブートで出回っていましたが、一応は正規商品ということで、リマスターも極力徹底しています♪
メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ウェイン・ショーター(ss,ts)、チック・コリア(p,key)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds) という、これも「黄金のクインテット」と呼んで差支えない5人組です――
★Live in Copenhagen (1969年11月4日)
01 Bitces Brew
02 Agitation
03 I Fall In Love Too Easily
04 Sanctuary
05 It's About That Time into The Theme
一応チャプターが打たれて上記の曲が演奏されています。しかし当時のマイルス・デイビスのバンドでは、これがメドレー形式というか、ラストテーマを端折って次のテーマを提示しつつ、演奏が進行していく流れがスリル満点に楽しめます。
ちなみにこの映像はカラーですから、マイルス・デイビスのサイケな衣装も鮮やか♪ 気になる画質は「B+」程度ですが、それほど酷いとは感じないと思います。しかもカメラワークや構図ギメが相当に良いんですねぇ~♪ 普通、ジャズの映像作品は、どうしても演奏の「音」が中心になってしまうので、画面を観てると飽きたりしますが、これはそんな事の無い優れものだと思います。
そして音質もバランスの良い好録音ですから、おそらくテレビ用のソースかもしれません。
さて気になる演奏は厳かにスタートして激烈なフリーに突入する「Bitces Brew」、それが一転して痛快な4ビートでスイングしまくる「Agitation」の連続技で完全KOされます。
マイルス・デイビスも新しい感じのフレーズを吹いていますし、ウェイン・ショーターは誰も立ち入れない独自の境地を披露! ロックビートも交えて激烈に敲きまくるジャック・ディジョネットは、動く映像で見るとさらにカッコイイです。
またチック・コリアはエレピ中心に演奏していますが、これが唯我独尊というか、嬉々として自分の好き放題な展開ですから、個人的には良い意味で笑ってしまう瞬間もあります。一切の妥協をしないデイヴ・ホランドの頑固さも見事ですね♪
そして後半はマイルス・デイビスがリードしてフリーを現実回帰させる「I Fall In Love Too Easily」、ちょっと神妙な「Sanctuary」が続いた後、「It's About That Time into The Theme」で再び地獄のグルーヴが炸裂します。
あぁ、それにしてもこの緊張感と弾けっぷりは流石、当時の最先端バンドだけあります。ここまで約53分近く、全くダレることのない展開は、これもひとつのジャズ黄金期でしょうね♪
★Live in Rome (1969年10月27日)
06 Bitces Brew
07 Miles Runs The Voodoo Down
08 I Fall In Love Too Easily
09 Sanctuary into The Theme
10 Directions
11 Masqualero
こちらはローマでの映像で、これまでにもブートで出回っていたソースをリマスターしたものです。しかし残念ながらモノクロですし、演奏そのものに編集が施されているので、やや煮え切りません。カメラワークは秀逸なのに、けっこう良いところで切って、次に繋げる編集が強引というか……。ちなみに画質は「A-」でしょう。
それでも音的にはバランスの良い録音ですし、演奏は一級品! 豪快にして緊張感満点というバンドの勢いが凄いです。特にリズム隊は怖いですねぇ~。ロック&ソウルのノリが見事な「Miles Runs The Voodoo Down」とか、ジャズの保守本流を感じせてくれる「Directions」あたりでは、マイルス・デイビスも煽られ気味で大熱演!
もちろんウェイン・ショーターもマジギレの奮闘なんですが、なぜかこっちのパートでは冷遇されているというか、アドリブの途中なのに無残にも編集のハサミが……。あぁ、勿体ない! ジャズは一期一会なんですぜっ!
それでも「Directions」のテーマの入り方なんて、もう絶句してしまう最高のカッコ良さ♪ もちろんマイルス・デイビスも強烈な存在感ならば、ジャック・ディジョネットは親分の顔色なんか気にしていないブッ敲きですよっ♪ 思わず叫びたくなるほどテンションが高いです。
そしてチック・コリアは十八番のラテン系フレーズまで出してくれますし、オーラスの「Masqualero」が瞬間的に終ってしまうのは、本当に悔しい限りという熱い、本当に熱い演奏なのでした。
ということで、これも「お宝」です。電化マイスルというにはちょいと早く、しかし従来のモダンジャズからは一歩抜きんでた過渡期の演奏とはいえ、実はマイルス・デイビスが一番ヤル気のあった時代かもしれません。