■The Unissued Japanese Concerts / Miles Davis Quintet (Domino = CD)
あまりにも惨い天災から、本日の1枚を更新する気力も失っていたんですが、このプログを通じて繋がっている皆様がいると信じての再開です。
とにかく今は前を向いていきましょう!
さて、そこで権利関係は、どうなっているのかっ!?
もはや分からなくなっている事が逆に大歓迎というマイルス・デイビス関連の発掘音源復刻の中でも、かなり嬉しいのが本日ご紹介の2枚組CDです。
なにしろ昭和39年というよりも、1964年に初来日した時のライプ音源ですからねぇ~♪ ご存じのとおり、この時の巡業ステージからは公式盤「マイルス・イン・トーキョー」が既に発表され、所謂フリーブローイング期の記録としても人気が高い1枚になっていました。
それはサム・リバースという、ちょいとフリー系のテナーサックス奏者が参加している事に加え、如何にも聴衆を前にしたサービス満点のプログラムとモダンジャズ最前線の意気込み、さらにマイルス・デイビスという大スタアの存在感が圧倒的に堪能出来るからでしょう。
つまりモダンジャズが、まだまだリアルタイムで最高にイカシた音楽だった証でもあり、見事な緊張と緩和が楽しめる至福の時間が提供されているのですから、ジャズ者ならば殊更、迷う必要もないと思います。
ちなみにメンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、サム・リバース(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という、今では夢のクインテットですから、生演奏に接したファンには嫉妬さえ覚えるのが正直な気持!
☆1964年7月12日、日比谷野外音楽堂で録音 / CD-1:約40分36秒
01 Autumn Leaves / 枯葉
02 So What
03 Stella By Starlight
04 Walkin' into The Theme
まず、気になる音質は良好です。
ただし、ちょいとベースが引っ込み気味ですし、ドラムスの存在感も薄めなのが残念ではありますが、そこは再生装置で低音を補強すればOKでしょう。
そして逆にその分だけ、トランペットとテナーサックの音の強弱がクッキリと際立ち、またピアノも音源の出所を考慮すれば、なかなか綺麗に録れていると思います。
ちなみに発売元は「Unissued」なんて商品タイトルを強調していますが、ご推察のとおり、これまで度々ブートで流通していたものが、今回はリマスターされてのハーフオフィシャル化というところでしょうか? それゆえに聴いていても、妙に安心感を覚えます。
で、肝心の演奏は、やはり凄いの一言!
もちろん初っ端の「枯葉」はマイルス・デイビスならではのミュートが、やっている事はハードバップでは無いにしろ、やはり嬉しい限りの思わせぶりを披露していますよ♪♪~♪ それに呼応するリズム隊も阿吽の呼吸ですが、続くサム・リバースの硬質のテナーサックスが、これまた強烈です。なによりも音色がダーク&ハードですし、ツッコミ鋭いフレーズで疑似フリーの領域に踏み込みながら、しかしアドリブ構成は新主流派という好ましさですからねぇ~~♪
あぁ、もう、この1曲だけでアンプのボリュームをグイグイと挙げてしまう事、必定です。
そして後は例によって激烈な「So What」から静謐で力強い「Stella By Starlight」、さらに追い撃ちとしての「Walkin'」が、まさにモダンジャズ黄金時代を今に蘇らせてくれますっ!
毎度お馴染みのマンネリフレーズで押しまくるマイルス・デイビスは言わずもがな、アグレッシヴで深淵な企みも秘めた陰湿さが魅力のサム・リバースとリズム隊の奇妙(?)なコンビネーションも、実にジャズそのもののスリルに満ちていて、中でもこの日のハービー・ハンコックは特に冴えている感じがします。
また現状突破を狙うが如きトニー・ウィリアムスの爆裂ドラミングには、思わず血が騒ぎますし、ルートの音に忠実でありながら、けっこうヤバイ事をやらかしているロン・カーターも流石でしょうねぇ~♪
こういう子分達を持ったマイルス・デイビスは、幸せな親分だと羨ましくなります。
☆1964年7月15日、京都丸山音楽堂で録音 / CD-2:約45分32秒
01 If I Were A Bell
02 Oleo
03 Stella By Starlight
04 Walkin'
05 All Of You
06 Seven Steps To Heaven / 天国へ七つの階段
こちらもブートとしては以前から有名音源のひとつでしたが、とにかく良好な録音状態の中にギュ~~っと凝縮されたパワフルなジャズ魂が凄まじいかぎり! それはベースの存在感が強く、また我儘な自己主張を徹底的に演じているドラムスも、相当にしっかり録音されている事にポイントがあります。
ただし、それゆえにトランペットなテナーサックスが時折に音割する瞬間もあるんですが、それを言うのはバチアタリだと思いますし、個人的には、これほど迫力のある音で4ビート期のマイルス・デイビス・クインテットを楽しめるのは、幸せに他なりません♪♪~♪
もちろん演奏も充実と熱血や静と動の対比が鮮やかすぎるほどの出来栄えで、「If I Were A Bell」では新感覚とはいえ、積極的な歌心を披露するマイスル・デイビスに対し、あくまでもアグレッシヴな姿勢を崩さないサム・リバースが激ヤバですよ。
ちなみにこの音源の欠陥として、前半でピアノがオフ気味という現実があり、ここでもかなり良いアドリブを演じているハービー・ハンコックが……。
ただし演奏が進むにつれ、それは改善していきますし、逆にベースとドラムスが何を目論んでいるかが明確になっていますよ。そして、そういうラフな質感が強い録音故に、客席の拍手歓声等々も生々しく、また演奏そのものの躍動感やエグ味がリアルに迫ってくる事実も結果オーライ!
それはビバップからストレートに受け継いだ過激性が全開の「Oleo」、そしてトニー・ウィリアムスが大爆発する「Walkin」あたりのアップテンポ演奏に特に顕著で、中でもほとんどヤケッパチなマイルス・デイビスが凄すぎる後者のアドリブには熱くさせられますねぇ~~♪
もちろんリズム隊の容赦無い活躍とサム・リバースの突撃精神もテンションが高いわけですが、一転してじっくり構えた「Stella By Starlight」の充実性、あるいはマイルス親分が十八番の思わせぶりが全開する「All Of You」の深い味わいと醸し出されるジャズ的な熱気は唯一無二といって過言ではありません。
あぁ、こういう演奏に素直に夢中になれる自分に幸せを感じます。
本当に生きている事に感謝するばかりですよっ!
そしてオーラスには、なんと気になる「天国へ七つの階段」が配置されているんですが、ネタばれ覚悟で結論を述べれば、最高にカッコ良いテーマアンサンブルからマイルス・デイビスのアドリブとトニー・ウィリアムスのドカドカ煩いドラムソロを経た、実に短いテーマ的な演奏なのが勿体無いです。
ただし編集疑惑も濃厚なので、このあたりの真相は次回のお楽しみでしょうか。
ということで、これは即ゲットするしかない素晴らしい音源集と断言させていただきます。
もちろん全ての面で最高の音質とは申しませんが、ジャズ者ならば充分すぎるほどに許容出来るはずですし、何よりもこれほどの演奏に接することが出来る幸せを逃すことはありません。
迫力と密度の高い演奏、沸き上がる拍手歓声、そしてマイルス・デイビスのひとつの存在証明とも言える例の指パッチン♪♪~♪
注目されるサム・リバースの参加は、この巡業前後だけのようで、ご存じのとおり9月からはウェイン・ショーターが正式加入した事により、所謂黄金のクインテットが現出するわけですが、サム・リバースの存在価値は決して穴埋め的なものに終っていません。
それはウェイン・ショーター在籍時のライプ音源と比較しても、その時は些か翻弄される瞬間も否定出来ないリズム隊が、サム・リバースとは対等の関係というか、まさに丁々発止! 時にはフリーの領域にまで発展する演奏は、そのギリギリのところで踏み留まるスリルも絶大で、まさに感度良好ですよ。
おそらくは将来、新裏名盤となることは必至だと確信しています。
こんなのが出ると気になります。
妻から『もうこれ以上買うな』と言われてますが内緒で買いたいですがVISA使うとバレルし・・・・
コメント感謝です。
う~ん、家族からの重圧……。
これは自分も身につまされますねぇ(苦笑)。
まあ、本音は居直っていますが、このマイルスの音源は、そうするだけの価値があるかと思います。
なんか無責任ですみません。
震災前からの読者ですが、
こんなときだからこそ、前を向いて読ませてもらってます。
これからも、よろしくです。
大変な状況の中、コメントありがとうございます。
本当にこちらが勇気づけられる感じです。
仙台駅は1980年代から駅弁が充実していて、好きなところでした。それが廃墟となって、衝撃でしたねぇ……。
拙プログが巡り巡って、少しでも復興のお役にたてれば幸いと思います。
お互いに頑張っていきましょう。