■Close To The Edge / Yes (Atlantic)
一般的にイエスの最高傑作とされる名盤ではありますが、サイケおやじにとっては、発売された1972年当時から、全くついていけないアルバムでした。
何故ならば、完璧すぎて、スキが無いというか、聴いていて疲れるんですよねぇ……。
A-1 Close To The Edge / 危機
a) The Soled Time Of Change / 着実な変革
b) Total Mass Retain / 全体保持
c) I Get Up I Get Down / 盛衰
d) Seasons Of Man / 人の四季
B-1 And You And I / 同志
a) Cord Of Life / 人生の絆
b) Eclipse / 失墜
c) The Preacher The Teacher / 牧師と教師
d) Apocalypse / 黙示
B-2 Siberian Khatru
ご存じのとおり、イエスは所謂プログレ最高峰のバンドとして、前作「こわれもの」でその地位を完全に固めたわけですが、それはメンバー各々の超絶的なテクニックと幅広い音楽性に裏打ちされた中にも、ロックジャズ特有の躍動感があって、そこにサイケおやじはシビれていたわけです。
そして「危機」と邦題が付けられた次なる新作は、まさに偽り無しのアブナイ作品だと思います。
もちろん発売前から評判が高かったのは言うまでもなく、我国の洋楽マスコミも挙っての大絶賛でしたから、理解出来ない自分が情けないという落ち込みさえありましたですね……。
実は当然というか、その頃のサイケおやじは経済的な問題からLPは買えず、しかし国営FM放送で丸ごと流されたエアチェックのテープで聴いていたというハンデ(?)もありましたが、それは言い訳に出来ないでしょう。
つまりは自分の感性に合っていなかったんですよねぇ。
それは収録演目から一目瞭然、LP全体での収録曲が僅か3曲であり、しかも組曲形式による歌と演奏は、そのタイトルからして突き放された雰囲気ですし、これまでのイエスの音楽性からして、怖いものが先立つというのが悪い予感でした。
そして実際、LPのA面全てを使ったアルバムタイトル曲の「危機」からして、様々なメロディやリフが執拗に絡み合い、一応は4バートに分かれているとはいえ、それが自然に流れるというよりも、ある意味では順列組み合わせ!?
う~ん、確かにジョン・アンダーソン(vo,per)、スティーヴ・ハウ(g,vo)、クリス・スクワイア(b,vo)、ビル・ブラッフォード(ds,per,vib) という全盛期のメンバーは物凄いテクニックを駆使して、それこそ圧倒的な音楽を構築しています。
しかし、それゆえでしょうか、サイケおやじには極めて窮屈に聞こえてしまうんですよねぇ……。特にビル・ブラッフォードのドラミングからは自由度が著しく失われている感じがしますし、クリス・スクワイアのベースプレイも奔放が足りません。
なによりもアドリブの応酬という、サイケおやじが最も好むパートが皆無に近く、これは好きだったロックジャズになっていないっ!?
そうです、それで正解というか、当時はこういう演奏を称して、シンフォニックロックなぁ~んて呼んだんですよ……。
じょっ、冗談じゃねぇ~~~~!
それがB面に入っても継続されているのは言わずもがなでしょう。
まあ、それでもこっちは、多少なりともロック的なノリを感じたんですが、極言すれば、このアルバムの曲はライプじゃ出来ねぇだろうなぁ……。
と、リアルタイムでは不遜にも間違った事を思っていたんですよ。
しかし、ご存じのとおり、イエスはライプの現場でも、きっちりとこれを再現していた事実は、後に発表される3枚組大作LP「イエス・ソングス」に記録されています。
そしてサイケおやじが、やっぱりこの「危機」を乗り越えなければならない壁としてレコードを買い、真っ向から聴くという修行に入ったのは、その「イエス・ソングス」を体験して後からなのです。
その意味で「危機」の最初のパートや「Siberian Khatru」がメタリック期のキング・クリムゾン風だった事は、このアルバム制作直後にビル・ブラッフォードが脱退し、そこへ走った現実と妙に符合するあたりが意味深だと思います。
ということで、サイケおやじの本音では、今でも楽しくないアルバムとして、イエスの中では筆頭格の1枚なんですが、後に聴いたライプバージョンやブートにおけるリハーサル音源等々を楽しんでみれば、この作品の存在意義も侮れません。
これも、やっぱりロックジャズ!?!?
う~ん、ど~してもイエスから逃れられない運命を感じましたですねぇ……。