OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ビートルズの残影・チューリップ篇

2009-05-06 10:43:07 | 日本のロック

田舎へ引越そう / チューリップ (Express / 東芝)

1970年、つまり昭和45年の重大事件といえば、なんといってもビートルズの実質的な活動停止! もちろん正式な解散声明は今に至るも出されていませんが、もうビートルズは無くなってしまった……。

そういう事実は厳然としていました。

当時、私は既にストーンズ命の世界に入っていましたし、そういう立場を貫いていた姿勢から、口ではなんでも無いような事を言っていたのですが、内心はポッカリと空洞が……。なんともせつない喪失感がありました。

で、それじゃ、どうするか?

答えは簡単、ビートルズと同じ味わいを求めていくのです。

ビートルズが出現して以降の大衆音楽は、あらゆるジャンルでその影響力は絶大で、明らかに後追いや真似っこ、モロパクリが横行していましたが、それがいずれもビートルズのレベルにはもちろん達せず、そこで如何にセンスの良さを出すかが勝負の分かれ道でした。

当然ながらファンも、そのあたりに共感を覚えたり、失笑したりの繰り返しでしたが、それを真剣に楽しまなければならない時が、とうとう来たというわけです。

そしてサイケおやじは、それに憑かれ、未だに解脱出来ません。

本日のご紹介も、全くそのひとつで、主役のチューリップは我が国の歌謡フォークやニューミュージックでは言わずもがなの人気バンドですが、これは「心の旅」で大ブレイクする以前に発売された2枚目のシングル盤B面曲です。

実は皆様ご存じのように、チューリップは昭和47(1972)年の初夏に正式デビュー、そのシングル曲「魔法の黄色い靴」は永遠のビートルズ風味も素敵でした。当時、盛んに議論されていた「日本語のロック」を、はっぴいえんど等々とは似て非なる個性で、とても上手く演じていたと思います。

で、チューリップは深夜放送では人気も出ていたと思うのですが、もちろんテレビに登場するほどではなく、基本は歌謡フォークの軟弱路線として、ロック派のファンからは軽視される中途半端な存在だったかもしれません。なにしろ当時は「ニューミュージック」なんていう、都合の良い言葉はありませんでしたからねぇ……。

そんな状況の中で秋頃に発売されたのが、このシングル盤で、もちろんリアルタイムではヒットしていません。サイケおやじにしても、「魔法の黄色い靴」には微妙にシビレていたこともあって、ちょっとは期待していたのですが、正直、A面の「一人の部屋」にはガックリ……。

ところがレコード屋の店頭で偶然に流れていたB面の「田舎へ引越そう」を聞いて歓喜の仰天! それは全く、ポール・マッカトニーが時折に聴かせてくれていた、あのホンワカムードのウキウキメロディ、そのまんまでした♪♪~♪

イントロのギターフレーズ、弾むようなピアノのブンチャカしたリズム、せつなくも楽天的なメロディ、コーラスアレンジのビートルズっぽさ、そして全体に漂うハートウォームな雰囲気の良さ♪♪~♪

このあたりは同時期にデビューしていたイギリスのビートルズ系バンドである、パイロットと共通する魅力ですが、世間に出たのは明らかにチューリップが先なんですねぇ。例えば同系のパッドフィンガーが小型ビートルズならば、パイロットはチューリップの英国的後追いバンドだと、私は思います。う~ん、実際に聴いていたんでしょうかねぇ……?

まあ、歌詞の内容は仲間と田舎で気楽に暮らしたいという、他愛のないものですが、これは当時の若者が抱いていた共同体願望のひとつとして、今でも微笑ましいと思います。映画で言えば、藤田敏八の世界に近いのでしょうか。

そしてサイケおやじは密かに、このシングル盤を入手し、聴いていました。誰にも、これは言えない……。バレたら、日頃の言動からして、恐らくはきっと笑い者になるだろうことは想像に難くなく、そんなクダライナイ虚栄に支配されていたというわけです。

ということで、そうして集めた「ビートルズ風味」の楽曲群は、今も私の楽しみとなっています。これは同じく山のように存在している「ストーンズ風味」には、それほど関心が無いことを思えば、失ってしまったものの大きさというか、去っていった女にいつまでも未練を残しているのと変わらないというか……。

そういうことで、本日はご笑覧下さいませ。

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2 コメント

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チューリップの巧みな隠し味 (サイケおやじ)
2012-07-17 19:48:28
☆セブン様
コメントありがとうございます。

「夢中さ君に」は後々までチューリップのライブでは後半クライマックスでやっていた、バンド「お約束」の1曲なんでしょうねぇ~♪

まっぁかなくるまでぇ~~♪

と歌い出すパートの歌謡ロック的なグルーヴが素敵だと思います。
日本語のロックだって、充分にブルースフィーリングは出せるわけですね(微笑)。
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ふたりで山へ行こう♪ (セブン)
2012-07-17 14:54:24
あの遠くの山へ~♪
踏み切りや丸木橋パイロットも超えてきました~。

私はこの歌とかお嫁さんが入ってるライブ盤をよく聴きました。
下宿の風呂のタイルがヌルッとかいうトークのヤツです。

黄色い靴はアコギ時代、女のコに「何か弾いて~♪」とか言われたときにビートルズのブラックバードとかと共に愛用させてもらってました。(S&Gのキャシーの歌に苦戦した思い出あり)

この曲「逃げて走っても~♪」の「も~♪」とトコが普通キーがDだったらGの音かと思いきや、F#だったりするのが、なんかブルージーでカッコイイとか思ってました。

他にチューリップでよく演奏したのは「夢中さ君に」というのがありましたが、当時の中学生にとっては「君の素敵な胸のふくらみ…」というのが、なかなか歌うのにハズかしかった思い出がありますね。
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