OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

プリティズのポップサイケな裏名盤

2010-07-02 16:30:42 | Rock

Emotions / The Pretty Things (Fontana)

1960年代の英国ビートバンドの中では、ストーンズ以上の荒々しさをウリにしていたプリティ・シングスが1967年に出した3作目のアルバムで、もちろんサイケデリックが蔓延していた時代の要請に応えた素敵な仕上がりは、サイケおやじの大好きな1枚です。

ところがメンバーからは決定的に忌み嫌われ、無かったことにされている本音を知るの及んで、サイケおやじには完全に???

 A-1 Death Of A Socialite
 A-2 Children
 A-3 The Sun
 A-4 There Will Never Be Another Day
 A-5 House Of Ten
 A-6 Out In The Night
 B-1 One Long Glance
 B-2 Growing In My Mid
 B-3 Phothographer
 B-4 Bright Lights Of The City
 B-5 Tripping
 B-6 My Time

収められた全12曲は全てメンバーのオリジナルで、正統派のビートロックから英国流儀のフォークロック、あるいは刹那のパラードやポップス王道路線等々、とにかくそれまでの剛直でダーティなバンドイメージを大きく覆すサウンド作りの要は、随所に使われた効果音やオーケストラによって、さらに強い印象を残します。

しかしそうしたプロデュースはバンド側の意向ではなく、完全にレコード会社の主導によるものだったことが、後にバンドメンバーからの激白で明らかとなり、それゆえに本当のプリティシングスのファンは、これを好きと言ってはならないのだとか!?

う~ん、何をバカな!

もちろんサイケおやじは完全なる後追いで聴いたわけですから笑止千万な意見かもしれませんが、現実的にこのアルバムは如何にも1967年がど真ん中のサイケデリックロックであり、熱に浮かされたようなポップス天国の極北でもあり、好きな人には、これほどの天国盤はちょっと発見出来ないでしょう。

それは所謂キュッチュ寸前の快楽であり、ちょうど昭和40年代に売っていた人工着色&甘味料が過剰に使われた駄菓子のようでもあり、まさにこの時代でなければ作り出しえなかった「音」が、「世相の空気」ごとパッケージされたと思えるほどです。

特にバラエティに富んだ収録各曲の充実度は、本当に当時の流行を上手く意識しつつ、バンド側に言わせれば勝手にオーバーダビングされたというオーケストラや効果音の卓越したアレンジと見事に一体化しています。

また意図的に使われたと思しきアコースティックギターの存在感も良いですねぇ~♪

それはA面初っ端からアップテンポで繰り広げられるフォーキー&ビートロックな「Death Of A Socialite」、甘くて幻想的なストリングスも効果的なスローバラード「Growing In My Mid」、ちょいとボブ・ディラン系フォークロックな「Phothographer」、ポップサイケがど真ん中の「Bright Lights Of The City」、軋むスライドが最高にダーティな雰囲気を盛り上げる「Tripping」等々で、もうこれはエレキよりはアコースティックでなければギターの存在意義が無い! とまで思わせられますよ。

ちなみにレコーディングセッション当時のプリティシングスは、様々な軋轢やトラブルによってメンバーが流動的!? ですからデビュー当時からのフィル・メイ(vo) とディック・テイラー(g) を中心に、後は随時、様々な繋がりがあった他のバンドから助っ人を頼んでいたそうですが、それゆえにいろんなタイプの演奏が出来上がったのかもしれません。

特にビートに対する新しい感覚の導入は、当時の流行だったアメリカのモータウンサウンドに代表されるノーザンピートの積極的な活用に顕著で、中でも正統派ビートポップスの「Children」、あまりにもモロな「There Will Never Be Another Day」や「Out In The Night」には、思わず腰が浮くほど♪♪~♪

そしてサイケデリックロックの本質としては、計算されたチープな作りが愛おしい「Growing In My Mid」や逆もまた真なりの「My Time」は、決して埋もれさせてはならない名演じゃないでしょうか。

さらにサイケおやじを最もシビレさせるのが、これはもう歌謡GSといって過言ではない泣きのスローバラード「The Sun」です。せつせつと美しいメロディを歌いあげるフィル・メイのポカールには特有の翳りが滲み、淡々としたバンドのバッキングとは対照的に味付けの濃いストリングパートのアレンジも見事過ぎます♪♪~♪

いゃ~、何度聴いても、飽きませんねぇ~♪

当時、日本語の歌詞でやるGSがいたら、大ヒットだったと思わざるをえませんよ。

ということで、本当に良いアルバムだと思うんですが、現実的には名盤扱いにはなっていません。

というよりも、自分達の意思で作られたアルバムでは無い! というようなバンド発言を受けたコアなマニアや評論家の先生方から、些か否定的な扱いをされたのが真相じゃないでしょうか。

ですから、そんなことを知らない後追いのサイケおやじは、何も考えずに聴けたというラッキーな側面があるのです。

そして実は10年ほど前、このアルバムがCD復刻された時にボーナストラックとして、収録楽曲の幾つかが、オーケストラのオーバーダビングを外したバンド演奏だけという、ネイキッドな状態で聴けたのですが、なんだかなぁ……。

サイケおやじには、完全に物足りないんですよねぇ。

ちなみに掲載した私有盤はモノラルミックスなんですが、ステレオミックスにも捨て難い良さがあって、流石はサイケデリック期の名作と痛感されます。つまりこのアルバムの魅力はプリティシングスの歌と演奏と同じ位、あるいはそれ以上にブロデューサーとアレンジャーの存在が大きいと思わざるをえません。

そこで調べてみると、まずプロデューサーのスティーヴ・ローランドは同時期にデイヴ・ディー・グループザ・ハードをブレイクさせた実績があるという、なかなか売れセンを知り尽くしたプロフェッショナルでした。またオーケストラアレンジを担当したレグ・ティルズレイは本来、ムードミュージックの人らしいのですが、このアルバムの裏ジャケットに記載された本人直々のライナーを読んでみると、なかなかに用意周到です。

今となっては、このアルバムがフォンタナとの契約最後の作品ということから、プリティシングスがプロデュースの方針に納得せず、幾分やっつけ仕事だったかもしれないオリジナル演奏を、ここまで魅力的なものに仕立て上げたスティーヴ・ローランドとレグ・ティルズレイは凄い!

という気分に、失礼ながら、なってしまうんですねぇ。

時代はまさにミニスカやゴーゴー、セックス、ドラッグ、サイケデリック♪♪~♪

そんな雰囲気を粋に携えたアルバムとして、お楽しみくださいませ。

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2 コメント

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このアルバム、 (は(以下同))
2012-07-15 10:52:17
僕も大好きです。
渋谷系が流行った頃に注目されて知ったクチですが、この時期のプリティズは初期のハードR&Bとも『S.Fソロウ』の頃のヘヴィサイケとも違った微妙な味わいがあって好きです。
返信する
おぉ、同志! (サイケおやじ)
2012-07-15 16:15:31
☆は(以下同)様
ご賛同、ありがとうございます。

現実的に、このアルバムの人気の無さは何故?
そんな素朴な疑問を抱きつつ、既に長い年月が流れてしまったんですよ、個人的には(笑)。
そうですか、渋谷系からの再評価、ちょいと理解出来るような気がします。

そういえばストーンズのLP「ボタンの間に」も、実はそうらしいですからねぇ~。時代は変わるって事です。
返信する

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