OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

モードのカミューカ

2007-02-08 18:08:22 | Weblog

今日も完全に「春」でしたねぇ~♪ こんなんで良いんでしょうか……?

ところで、本年もバレンタインディなんていう愚行が近づきました。

あの「義理チョコ」っていうのが、イノセントな私は許せません!

本当に欲しかった若かりし頃には貰えず、今になったら、お返しがシンドイという……。

あぁ、職場だけでも禁止令、出したいほどです。

ということで、本日はこれを――

Richie Kamuca Quartet (Mode)

「モード」というレーベルはマイナーで、もちろん作られた作品数は少ないのですが、ジャズマニアから絶大な人気があるようですね。私はそんなでもないんですが、気持ちは分かります。

なにしろ肖像画とか味のあるイラストを使ったジャケットが、まず秀逸ですし、中身は柔らかくて芯のしっかりした音作り、さらに西海岸派を中心としたリアルなモダンジャズが、とても魅力的♪

ですからオリジナル盤は高値が付いていますし、当然、日本プレスの再発アナログ盤も出ていますが、失礼ながら、オリジナル盤の音は再現出来ていないというか、個人的には満足するものではありません。

で、本日の1枚は私が唯一所有している、このレーベルのオリジナル盤ですが、愕いた事に、このレーベルの諸作が現在、紙ジャケット仕様のリマスターCDで復刻されているんですねぇ~♪

ただし、例の「音」が再現されているか不安だったので、試しにこれと同じブツを買ってみました。まあ、同じアルバムを買うのも悔しいところではありますが、これで聴き比べて結果を出せれば、他のブツも安心して買えるわけですから……

ちなみにリーダーのリッチー・カミューカは白人テナーサックス奏者で、西海岸派の例にもれず、レスター・ヤング直系の流麗で柔らかな歌心を持ち味とする名手です。まあ、ズート・シムズとかアル・コーンに似ていると言えば、ミもフタもないんですが、私は好きですねぇ~♪

録音は1957年6月、メンバーはリッチー・カミューカ(ts)、カール・パーキンス(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、スタン・リービー(ds) という、強力リズム隊を従えたワンホーン物となっています――

A-1 Just Friends
 テナーサックス奏者には特に取上げられることが多いスタンダード曲ですので、ここでも、いきなりのお楽しみとなるはずだったのですが、結論から言うと、ややテンポ設定が早すぎて、消化不良の演奏になっています。
 イントロから強烈なリズム隊の煽りは素晴らしいんですが、リッチー・カミューカがハッスルしすぎたというか、何時もの流麗なノリとフレーズが、良いところでブツギリになったりして……。
 それはピアノのカール・パーキンスも同様で、調子が出ていませんので、やや残念な仕上がりです。

A-2 Rain Drain
 ところが、前曲の汚名挽回がこの演奏♪ ミディアムテンポながら、とにかくグルーヴィでスマートな快演です。なによりもノリが素晴らしいリズム隊と息もぴったりのリッチー・カミューカは、もう、最高! ブルースですから黒い感覚も交えつつ、ハードにドライブしていくのです。
 もちろんカール・パーキンスも良いですねぇ~♪ フェードアウトが勿体無いかぎりの出来栄えです。

A-3 What's New
 これまた人気スタンダード♪ お約束のスローテンポで演じられますが、素直な歌心と節回しに終始するリッチー・カミューカが余裕を聞かせてくれます。うむ、このテナーサックスの音色、サブトーンの響きが「モード」というレーベルの味ですねぇ~♪

A-4 Early Bird
 そして続くのが、快適なテンポで演じられるカール・パーキンスのオリジナル曲です。あぁ、少~し入る「泣き」が絶妙ですねぇ。リッチー・カミューカも気持ちよさげにアドリブしていますが、やっぱりカール・パーキンスが自作曲だけあって、出色の出来!
 力強いドラムスとベースの安定感に身を任せて弾きまくる美メロと抜群のノリは、本当にグルーヴィです。ちなみにこの人は、手に障害があるんですが、それを個性にした味の名手! 私は大好きですし、この演奏も代表作だと思います。

B-1 Nevertheless
 さてB面に入っては、いきなり和みの名演となります。
 曲は、あまり馴染みの無いスタンダードながら、リッチー・カミューカのテーマ吹奏が最高ですし、曲想を活かしきったアドリブの妙は、ズート・シムズも顔色無し! といっては失礼かもしれませんね。これこそ、リッチー・カミューカの本領発揮という演奏で、そのアドリブは美メロの洪水です。
 そしてカール・パーキンスもテキパキとしたノリで、楽しく聞かせてくれるのでした。

B-2 My One And Only Love
 出ましたっ! テナーサックスではジョン・コルトレーンの名演で、あまりにも有名なってしまった名曲ですから、ここでも大いに期待した演奏です。
 で、結果はスローな名演♪ と言うよりも、この曲のモダンジャズ・バージョンとしては、ベストテン級の快演だと思います。なによりも素直なテーマ吹奏とリズム隊のツボを押えた伴奏が、素晴らしいです。特にスタン・リービーのブラシは良いですねぇ~♪ 本当に何時までも浸っていたいモダンジャズムードが現出しています。

B-3 Fire One
 もしかしたら目隠しテストではズート・シムズ!
 と答えてしまいそうなほど、グルーヴィで熱い演奏です。
 カール・パーンスが、これまた良いんです♪ リッチー・カミューカのアドリブが終わるのを待ちきれずに始めてしまう、グイノリのソロが痛快!
 またリロイ・ヴィネガーのベースソロも、熱気が充満しています。

B-4 Cherokee
 オーラスはモダンジャズ創成のカギが秘められたスタンダード曲を、猛烈なテンポで演奏してくれます。
 まずリズム隊、特にスタン・リービーのハイハットとシンバルに凄みがありますし、それに乗っかるリッチー・カミューカも自己を見失わない熱演です。

ということで、決して名盤ガイド本には掲載されないアルバムでしょうが、虜になっているファンは多いと推察される、隠れ名盤ではないでしょうか?

気になるCDとの聴き比べでは、やっぱりオリジナルアナログ盤にある「芯があって、柔らかい音」が、イマイチ再現されていないと思います。シンバルやハイハットがシャープ過ぎて、半面、ベースの音像輪郭が物足りないという……。

しかしこれは、あくまでも私、個人の感想です。鳴らしているオーディオだって、とてもジャズ喫茶には及びませんし、本日の気分や体調もありますからねぇ。

と言い訳しつつも、やっぱり全体としては優良な復刻でしょう。調子に乗って、このシリーズのCDは全買いモードという、ややオヤジギャグに突入してしまいましたが♪

この機会に「モード」というレーベルを楽しむのも素敵な事だと思います。

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漲る力のゴスペルジャズ

2007-02-07 18:35:37 | Weblog

やっぱり、歳でしょうか……。

最近、疲れが抜けきらないというか、自分の中でカァ~ッと燃えるものが少なくなった気がしています。

これじゃ、イカンなぁ……。ということで、本日はこれを――

Blues & Roots / Charles Mingus (Atlantic)

コワモテが多いジャズ界において、その最右翼がチャールス・ミンガスだと、私は思います。

まず、やっている音楽が脂っこく、また濃密で油断なりません。ハードバップとかエリトン直系とか、いろいろと指摘されたって、残されている音源からはフリーもあればブルースロックも出てくるという、ゴッタ煮状態! しかし一発でミンガス・ミュージックと気がつく色合があるのです。

そして自己の担当楽器であるベースが、物凄い存在感を誇示する、その演奏姿勢! また同時に、演奏中の掛声とかハッパが強烈です!

おまけにバンドメンバーに演目の譜面を渡さず、耳でハーモニーとかメロディを覚えさせるリハーサルが常に行われ、追いてこれない奴は容赦なく殴るとか!

それと黒人意識と誇りや連帯を大切にした政治的姿勢も、演奏に付随するという姿勢まで、打ち出していたとか!?

つまり、どのアルバム、どの作品を聴いていも、和みよりは疲れが出てくる仕上がりだと、私は感じています。ですから体調が良くないと、聴いていられないのが本音です。

本日の1枚は、その中でも特に黒~い魂を表現しようと目論んだ演奏集で、タイトルどおりブルースやゴスペル、R&Bに根ざした強烈な仕上がり!

録音は1959年2月4日、メンバーはジミー・ネッパー(tb)、ウイリー・デニス(tb)、ジャッキー・マクリーン(as)、ジョン・ハンディ(as)、ブッカー・アーヴィン(ts)、ペッパー・アダムス(bs)、ホレス・パーラン(p)、マル・ウォルドロン(p)、チャールス・ミンガス(b)、ダニー・リッチモンド(ds) という、当時のミンガス一家が勢揃いしています――

A-1 Widnesday Night Prayer Meeting
 「水曜日の夜の祈りの集会」という、当にゴスペルなタイトルが付けられた、強烈なヘヴィハードバップです。
 まずチャールズ・ミンガスのベースが暗く蠢き、ピアノや管楽器、そしてドラムスが逐次、絡んでくるや、いきなりリーダーの激が飛んできますから、一斉にテーマを重苦しく演奏するという、怯えと激怒の雰囲気が強烈です。
 そして混濁の中、テンポがグッと上がり、ジョン・ハンディのアルトサックスが泣きを強要され、ウイリー・デニスのトロンボーンが爆裂! さらにホレス・パーランのピアノが執念深く、ブッカー・アーヴィンは激走していきます。
 もちろん背後では他のホーン奏者が叫び、手拍子足拍子、さらにミンガスおやじの唸り声と叱咤激励がドロドロした情念と激情の誘発を誘うのですから、たまりません。クライマックスでは全員入り乱れの大殺陣から、ダニー・リッチモンドのドラムスを頼りに、ラストテーマへと演奏が立ち直っていくあたりが、スリル満点なのでした♪

A-2 Cryin' Blues
 これも重苦しいブルースでありながら、チャールス・ミンガスのベースが先陣をきって蠢きますから、バンドメンバーも油断がなりません。
 ホレス・パーランは上手く乗り切っていきますが、ジャッキー・マクリーンは我侭な体質が押えきれず、思いっきり泣きじゃくってしまいます。しかし、それを見越したかのようなバックの面々が分厚いアンサンブルでフォローして、見事です。ペッパー・アダムスが縁の下の力持ち♪
 う~ん、それにしてもチャールス・ミンガスの呻き歌は、物凄いですねぇ……。

A-3 Moanin'
 ジャズメッセンジャーズのヒット曲とは同名異曲ですが、チャーリー・ミンガスは俺のオリジナルで云々と、理不尽なイチャモンを付けたという逸話が残されています。
 で、ここでの演奏は火傷しそうに熱くて、烈しい! 当にゴスペルジャズです。
 重低音から厚みのあるアンサンブル、弾みまくるビート、そしてその中からグリグリっと飛び出すジャッキー・マクリーンが痛快です!
 もちろんそこにはペッパー・アダムスやホレス・パーランの合の手、ダニー・リッチモンドの激煽りが加わって、演奏は怖ろしい様相を呈していくのです。あぁ、中でもストップタイムで自己主張を許されたブッカー・アーヴィンは、千変万化で独壇場です。ガンガン変化していく演奏スピードやアンサンブルのスリル&サスペンスも最高ですねぇ♪
 ミンガスおやじの怒りの叫びは、もう、どうでもいいほどに、メンバー全員が燃えています。

B-1 Tensions
 これもチャールス・ミンガスがベースソロで場の雰囲気を設定しますが、バンドメンバーが簡単なモチーフをキメ、自然発生的なアドリブが展開されていく不思議な演奏になっています。
 あぁ、それにしてもチャールス・ミンガスのベースソロは、烈しいですねぇ。こんな早いテンポで一瞬の隙も無い、欲求不満の解消を目論んだような感じです。
 しかしジャッキー・マクリーンやブッカー・アーヴィンはマイペースですし、ペッパー・アダムスやホレス・パーランは、それなりに気を使っているようですが……。まあ、一番、親分に忠誠を誓っているのは、ダニー・リッチモンドでしょうか。

B-2 My Jelly Roll Soul
 ジャズ創成期に活躍したジェリー・ロール・モートンをモチーフにした、ホノボノ系の楽しい演奏ですが、一筋縄でいかないのは、ご推察のとおりです。
 一応、和んでいるように見せかけながら、メンバーの心中は穏やかではないでしょう。なにせチャーリー・ミンガスのベースが、ブリブリと唸っていますから……。
 ジミー・ネッパーのトロンボーンはオトボケ気味ながら緊張感がありますし、ホレス・パーランのビアノは楽しさに怯え、ジャッキー・マクリーンは疑心暗鬼の激情節で迫っていますが、これが良いですねぇ~♪

B-3 E's Flat Ah's Flat Too
 これまたゴッタ煮風のテーマアンサンブルが恐い雰囲気のハードバップです。
 テーマからグリグリにブッ飛ばすペッパー・アダムスのバリトンサックスが、まず最高ですが、混濁の中でも我侭を押し通すジャッキー・マクリーンも強烈です。
 そして、ここでのビアノはマル・ウォルドロンに交代しており、中盤では十八番になっている情念のイタコ弾き! 負けじと痙攣気味に吹きまくりるジョン・ハンディも凄いですし、ダニー・リッチモンドの頑固なドラムスも熱いのでした。

ということで、全曲がチャールス・ミンガスのオリジナルであり、その体臭と情念が見事に黒く炸裂した演奏になっています。

ですから、今となっては、よほど体調が良くないと聴けないアルバムになってしまいましたが、若い頃は、これがジャズ喫茶で鳴り出すと、グゥ~ンと体に力が漲ってくるような感覚に襲われたものです。

で、本日、久々に昼メシ時に鳴らしてみたところ、おぉ、得体の知れないスタミナドリンクよりも、よっぽど効くぜっ! まだ私も枯れるわけにはいきませんからねぇ♪

ちなみに現在、最良のリマスターを施されたCDが紙ジャケット仕様で復刻中です。もちろん私も、今日はそれを聴いたというわけです。

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マイルス&トレーン最後の日々

2007-02-06 17:43:09 | Weblog

もう、完全に春! そういう雰囲気です。

上野公園じゃ、桜が開花したとか!?

なんかウキウキするのが早すぎるのも、考えものですが、まあ、いいか……。

ということで、本日は、これです――

Live In Zurich 1960 / Miles Davis (Jazz Unlimited)

なんだかんだ言ったって、4ビートをやっているマイルス・デイビスは、良い!

ジャズファンなら、これを否定する人はいないと思われますがっ?

ですから、海賊盤の類も沢山出ていますが、これはメンツからして最も嬉しい時期のブツでしょう。1993年に発売されたCDです。

録音は1960年4月8日、欧州巡業時のスイスにおけるライブで、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という、歴史的クインテットです――

01 If I Were A Bell
 ブレスティッジの通称マラソンセッションで残された名演ゆえに、ステージでも、これが出ないと納得出来ないのファン心理を鋭く突いた1曲目♪ こういうお客さんとの意志の疎通を大切にするあたりが、マイルス・デイビスの良いところだと思います。
 肝心の演奏は、もちろん例のイントロがピアノで奏でられ、ジミー・コブのシャープでドライなブラシ、ブンブンブリブリのポール・チェンバースのベースが土台を作りますから、マイルス・デイビスは通常よりも、やや早いテンポでミュートの歌心を存分に聞かせてくれます。
 気になる録音状態は、リズム隊が大きく録音されていて、特にジミー・コブのドラムスがド迫力! バスドラとスネア&タムでキメる、得意のビシッとしたアクセントがたまりません♪
 反面、ピアノの音量が不足気味ですが、まあ、良いでしょう。
 またジョン・コルトレーンは本来が音の大きな人みたいですから、ここでの無謀な大暴れが意地悪いほどに強く録音されています。しかし、これでも物足りない雰囲気になるのは、何故でしょう? ついグイグイとボリュームを上げてしまう演奏です。

02 Fran-Dance
 マイルス・デイビスの繊細な歌心が楽しめるオリジナル曲♪ のはずなんですが、実はリズム隊がハッスルしすぎた雰囲気が濃厚です。しかもジョン・コルトレーンが唯我独尊のシーツ・オブ・サウンド! 歌心もヘチマも無いという……。
 まあ人生の上昇期にありがちな若気の至りかもしれませんが、一説にはマイルス・デイビスのバンドを辞めたくて仕方なかった時期のジョン・コルトレーンですからねぇ……。リズム隊も同調してしまったのかもしれません。
 ただしウイントン・ケリーは大人の姿勢で、良いアドリブを演じています。

03 So What
 これが出なけりゃ収まらないという、この時期のマイルス・デイビスには欠かせない、説明不要の演目です。
 ここでは、まずテーマ部分の雰囲気と勢いが素晴らしく、ジミー・コブのタイトなドラムスとポール・チェンバースのリードベースが最高! マイルス・デイビスも初っ端から熱いノリで、しかもクールなアドリブメロディを吹きまくりです♪ カッコイイ! リズム隊とのコンビネーションも隙がありませんねぇ~♪ 本当にジミー・コブが、分かっているという感じです。
 そしてジョン・コルトレーン! もう完全にインプレッション状態ですよっ! ツッコミが烈しすぎて、リズム隊が置き去りというか、浮いています! これではリアルタイムのお客さんが、かわいそう……。というか、今から思えば、当然、コルトレーン宇宙に連れ去られた羨ましさがあるのですが、とにかく烈しすぎます!
 しかしリズム隊も、必死の追走ですねぇ~♪ 自分達だけのパートになっても、ウイントン・ケリーは自己のペースを失っているほどで、アドリブでは最初、十八番のフレーズが出なくなっています。
 ただしそこを煽るのが、ジミー・コブのリムショット! こういう美しき流れが黄金期の輝きだと思います。後半のお約束は、やっぱり楽しいです♪

04 All Blues - The Theme
 この時期のマイルス・デイビスならではの、深遠なブルースが楽しめる名演です。
 相変わらずジミー・コブのブラシ&スティックのバランスが素晴らしく、演奏全体の思わせぶりな雰囲気が和らいでいます。
 そしてマイルス・デイビスがジックリとアドリブを演じていくバックでは、ポール・チェンバースの定型フレーズが絶妙の味♪
 しかしジョン・コルトレーンは、ここでも逆ギレの暴走をやらかしてくれます。最初は神妙なんですけどねぇ……。だんだんに所謂スピリッチャルな雰囲気が強くなっていきますから、聴いている私は、またまたボリュームを上げてしまうのでした。
 ちなみに続くリズム隊のアドリブパートでは、ウイントン・ケリーがネバリのファンキームードを存分に聞かせてくれますよっ♪ けっこうビル・エバンス風になる瞬間もあるんですが、本音は俗世的快楽追求というか、やっぱりジャズはこれが王道かもしれません♪
 そして最後のテーマ曲は、何時もながら痛快! 私としては、このメンツで、こういうのを長く聴きたいんですがねぇ……。

ということで、だいたい1時間ほどのライブ音源になっています。つまり1曲毎の演奏時間が長いんですねぇ~。もちろんそれはジョン・コルトレーンの存在が全てです。一端吹き出すと、もう止まらないという恐ろしさ!

これには流石のマイルス・デイビスもサジを投げたんじゃないでしょうか? 帰米後、ついにジョン・コルトレーンは正式にバンドから独立していきますが、つい3年前には、悪いクスリの所為でマイルス・デイビスからクビを宣告され、途方に暮れていた姿とは逆に、堂々と親分に盃を返したあたりが、時代の流れだと思います。

無頼非情!

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あの頃のジャズ

2007-02-05 18:05:22 | Weblog

昨日、NHKで「おやじバンド」の特集があったとか!?

私は見ていませんが、それに刺激された同世代の人達から、一緒にバンド、やりませんか? なんていう嬉しいお誘いがありました♪

とは言え、練習する時間の確保が、皆の課題という結論に達しているのですが……。

それはそれとして、本日はそんな青春の滾りがある1枚を――

Breaking Point / Freddie Hubbard (Blue Note)

フレディ・ハバードは正式デビュー当時から、バリバリの実力者として認知された存在でした。当然、ニューヨークに出てきてからは、すぐに名門プルーノート・レーベルと契約し、さらにジャズ・メッセンジャーズのレギュラーになるなど、常に陽のあたる場所にいたわけですが、さて、代表作となると、これっ! というブツが即座に思い浮かびません。

なにしろハードバップ、モード、フリー、ジャズロックからフュージョンまで、何をやらせても平均点以上の素晴らしさですからねぇ~。しかも自分のスタイルを完全に確立していて、聴いた瞬間にフレディ! って分かる明快さが大きな魅力になっているのにです。

ジャズ入門用のアルバムを選んでも、フレディ・ハバードのリーダー盤は、まず100枚の中には入らないと思われます。

しかしジャズ喫茶で、この人の音が鳴り始めると、店内は完全にジャズになるんですねぇ~♪ それが例えフュージョンやジャズロックであろうともです!

そこがフレディ・ハバードの凄さなのかもしれません。

さて、このアルバムは、そんなフレディ・ハバードがジャズメッセンジャーズから独立し、自分のレギュラーバンドを結成した直後の演奏と言われる、力いっぱい張り切った時期に吹き込まれた傑作です。

録音は1964年5月7日、メンバーはフレディ・ハバード(tp) 以下、ジェームス・スポールディング(as,fl)、ロニー・マシューズ(p)、エディ・カーン(b)、ジョー・チェンバース(ds) という、いずれも一癖ある俊英揃いです――

A-1 Breaking Point
 フレディ・ハバードのオリジナルで、いきなりフリー系の混濁した音が流れてくるんですから、嫌な予感に満たされます。しかしバンドは少しずつ、独自の文法を確立させ、ハードバップ~カリプソ調のテーマに持っていくあたりが、まずスリル満点です。
 その傾向はアドリブパートでも継承され、まずは大ハッスルのフレディ・ハバードが訳分からずの吹きまくり! 背後ではロニー・マシューズがデタラメ寸前の伴奏ですし、ドラムスとベースも好き放題ですが、突如、飛び出す楽しいカリプソテーマが何とも言えず、それを合図に次はジェームス・スポールディングの熱に浮かされたアルトサックスがブリブリやってくれますからねぇ~♪
 しかも最後にはフレディ・ハバードとの過激な絡み、おまけにロニー・マシューズの擬似フリーなピアノソロが、完全にジャズを聴いている雰囲気にさせてくれます。
 そうです、これは雰囲気を演出する演奏じゃないでしょうか……?
 決して心から夢中になれるものではないと……。
 しかし熱いです! 終盤のエディ・カーンのベースソロなんて、この時代でなければ表現されない「何か」に満ちていると思います。ジョー・チェンバースのドラムスも流石の煽りになっているのでした。

A-2 Far Away
 モード全開のエキゾチック曲は、もちろんフレディ・ハバードが書いたものです。
 しかも全体の主導権を完全にリズム隊が握っている雰囲気というか、それゆえにジェームス・スポールディングもフレディ・ハバードも心置きなくアドリブに専念出来ているように思います。
 う~ん、ジェームス・スポールディングの神経質で過激なフルートが熱いですねぇ~♪ まさに1960年代の音がしています。またロニー・マシューズは饒舌で暗い情念を吐露! 明らかにマッコイ・タイナー系のスタイルなんですが、もう少しサラリとしたところが好みです。
 そしてフレディ・ハバードが爆裂トランペットの真髄を発揮して、何処までも突進していく姿は爽快です。おそらく音そのものも、大きいんじゃないでしょうか!?

B-1 Blue Frenzy
 尖がっていたA面とは一転して、B面はハードバップがたっぷりです♪
 これもフレディ・ハバードのオリジナルですが、まずは一緒に口ずさめるテーマが楽しく、アドリブパートでもブルースっぽいフレーズばかりで迫るあたりが、サービス満点です。
 ツボを押えた伴奏のロニー・マシューズ、刺激的なジョー・チェンバースも実に良いですねぇ♪
 そしてジェームス・スポールディングは、力みのアルトサックスで痺れる感覚に挑戦していますが、やや煮え切らないのが残念……。ただし続くロニー・マシューズが、お約束満載のソウルフルピアノですから、たまりません! 心から暖まっていく良さが全開です。

B-2 D Minor Mint
 またまた、如何にもフレディ・ハバードという張り切ったハードバップです。
 シャープで重量感のあるリズム隊に煽られて飛び出すフレディ・ハバードは、十八番のメタリック系フレーズに加え、味のあるキメを密かに用いています。スケールアウトしそうでギリギリ、止まるあたりの上手さは本当にニクイほどです。
 しかしジェームス・スポールディングは直情径行というか、ややセンが細いながらも大健闘の情熱節を全開させています。
 そしてロニー・マシューズ! こういう突進型の演奏が本当に楽しくて仕方がないという雰囲気です。おい、自分でそんなに楽しんで、どうするの!? いえいえ、聴いているアンタも楽しいはずだぜっ! そんな会話を楽しんでいたら、演奏は終わっていたというオチがついています♪

B-3 Mirrors
 これだけがジョー・チェンバースのオリジナルですが、なかなか素敵なムードのスロー曲です。優しさとか思いやりがある雰囲気で……♪
 テーマ吹奏ではフレディ・ハバードのハスキーなトランペットとジェームス・スポールディングのミステリアスなフルートがベストマッチですし、続くアドリブパートでも、フレディ・ハバードが最高の歌心を聞かせてくれます。本当に即興でしょうか? という疑惑さえ浮かんでくるほどの完成度だと思います。
 またジェームス・スポールディングのフルートは、大野雄二の映画音楽世界♪ と、こう書いてもご理解願えないでしょうが、ハードボイルドな良さがあるんです♪
 そうです、これをちょっと直したら、松田優作主演の「最も危険な遊戯」のサントラになりそうな……♪ とにかく私は大好きです。

ということで、ツッパリのA面に、和みのB面と、気配りも万全のプロデュースが光るアルバムです。ちなみに現行CDでは「B-1」と「B-2」のシングルバージョンがボーナス収録されていますが、全く、さもありなんですねっ♪

おそらくジャズ喫茶ではA面を鳴らすのが主流でしょうが、自宅ではB面ばかり聴いている私でした。で、本日、久々にA面から聴いてみたら、良いんですねぇ~♪ 過ぎ去った青春の思い出というか、あの頃の、あてどない情熱がシミジミと思い出されるのでした。

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小鍋立てにジャズ

2007-02-04 18:40:11 | Weblog

おぉ、赴任地に戻ってみれば雪景色!やっぱり、冬ですねぇ~。

こういう日には鍋物を1人でつつき、こんなアルバムを聴いてみました――

Midnight Sugar / 山本剛 (three blind mice)

ジャズは本来、大衆音楽なので、楽しいのが基本なんでしょうが、1960年代頃からはフリーとかモードなんかが主流となって、しかも本質はエキセントリックなビバップにありとするもんですから、難しいもの、極端に言えばデタラメやっている音楽とされる事まであります。

さらに我国では、ジャズ喫茶でジッと腕組みして聴く雰囲気が定着している所為か、なおさら悩んで聴くものという風潮まで蔓延していたのが、1970年代前半までの状況でした。

そして、ジャズが好きだ→ジャズを理解しているということで、ある種の優越感みたいなものから、聴く姿勢までもツッパリになってしまう恐れがあります。

そういう私も、1970年代の若かりし頃は、自分の好きなアルバムに出会っても、素直に好きだっ! と言えない時期がありました。

本日の1枚は、当にそうしたアルバムです。

というのも、演奏のキモがあまりにも日本人らしいというか、コブシとか納豆臭さが全開の歌心なんですねぇ~♪ まあ、異論があることは承知していますし、お叱りも覚悟しておりますが!

とにかく聴いていて、日本人で良かったぁ~♪ とシミジミ感じ入るのです。

録音は昭和49(1974)年3月1日、メンバーは山本剛(p)、福井五十雄(b)、小原哲次郎(ds) というピアノトリオです――

A-1 Midnight Sugar
 山本剛のオリジナルというスロ~ブル~スですが、元ネタは「Afterhours」でしょう。でも、そんな事はどーでも良いんです。
 初っ端から福井五十雄の重心の低いベースが唸り、山本剛のピアノが、これまた重低音域を使いながら入ってくれば、辺りは忽ち真っ黒になっていきます。
 ちなみにこのアルバムは録音が秀逸で、実は「three blind mice」というレーベルは音質・録音の素晴らしさもウリになっていましたですね。
 肝心の演奏は、ネバリとかモタレに絶妙のコブシがあって、それが日本人にしか出来ないワザだと思うのです。黒人のやる同種の演奏よりも、よっぽっどイイ!
 と私は思っていたのですが、当時は、こういう琴線直撃スタイルをダサいとか、日本人丸出しの納豆臭さとして、聴くのが恥ずかしいという雰囲気が大勢でしたので、私も「これがイイ♪」なんて、とても言い出せませんでしたねぇ……。
 ですから、自宅で密かに聴いていたのですが、あぁ、今日聴いてみると、やっぱり良さがあります。山本剛の素直なメロディ感覚は、実に素晴らしいと思います。

A-2 I'm A Fool To Want You
 ジャズでは定番の有名曲で、「泣き」のあるメロディが人気の秘密になっていますが、山本剛は、そのあたりの掴みが抜群に上手く、テーマでの「間」の取り方から最高の思わせぶりを演じてくれます。
 もちろんメロディ感覚が秀でていますから、決してダレません。スローな展開の中では、むしろ次の1音が待ち遠しい感じです。そして裏切るような音やフレーズは出してこないのです。
 演奏は中盤からテンポを上げて、楽しい雰囲気になりますが、このあたりはエロル・ガーナーとか菅野邦彦に近いノリになって、ますますゴキゲンです♪ 歌心のあるアドリブが良いですねぇ~♪ 5分を過ぎたあたりからのフレーズとノリは、特に好きです。転がるようなアクセントと納豆のようなネバリのウマさは、この人だけの持ち味でしょうねぇ。
 控えめながら、小原哲次郎のブラシも上手いと思います。

B-1 The Nearness Of You
 これも人気スタンダードですが、通常よりも早いテンポで演奏し、山本剛だけのネバリのフィーリングを存分に聞かせてくれます。この独自の「間」の取り方が、あまりにも日本的なんで、当時はダサいとされたんですが、私は大好きですし、大方のファンも、そこが好きだと思います。
 しかもそこを埋めていくベースとドラムスが、また上手いです!
 それとアドリブの歌心は、これも日本人が大好きなメロディの作り方というか、ジャズピアノの良いとこ取りという雰囲気で、絶妙です♪ 楽しければ、いいじゃないですかぁ~、と当時、素直に言えなかった自分に自己嫌悪する瞬間まであるほどです。

B-2 It Could Happen To You
 これまたピアノトリオでは必須のスタンダード曲♪
 このアルバムと同時期に流行っていたケニー・ドリューの「ダーク・ビューティ(Steepl Chase)」ではウリになっていた曲でもありましたから、ここでのバージョンも大いに気になった記憶があります。
 で、結論はスローな展開でジンワリと迫ってくる演奏が、個人的に、やや退屈でもあります。しかし、その歌心と盛り上げ方は、クサミが強いほどの琴線直撃型です。つまりアクが強くて、好き嫌いがあるかもしれません。

B-3 Sweet Georgia Blues
 スタンダード曲の「Sweet Georgia Brown」から曲想をいただいた、山本剛のオリジナル・ブルースで、ズバリ、ゴキゲンです♪
 快適なテンポで、ひたすらにスイングする山本剛は、あまりにも素直で、聴いていてちょっと恥ずかしくなるほどですが、いやいや、これがジャズの楽しさ、魅力でしょう♪ まあ、こういう演奏をやってしまうところが、リアルタイムのジャズ喫茶で軽く扱われた証かもしれませんが……。

ということで、演奏しているメンバーは、ことさら日本人を意識しているはずは無いと思いますが、出てくるノリは明らかに本場物とは違っています。特に「間」の取り方とかコブシ、ですねっ♪

それを本物じゃ無いとか、言われたもんですから、聴かず嫌いをしているファンも多いと思われます。私の場合も、今、こうやって「愛の告白」めいた文章を書いていますが、確かに聴いていて、ちょっと恥ずかしくなるような部分は、確かにありますねぇ。でも、そこがイイ! と素直に言えるのは、私のツラの皮が厚くなった所為でしょうか……。

どうか、虚心坦懐に、お願い致します。

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モブレー&ジョーダン

2007-02-03 19:29:04 | Jazz

邦画が好調らしくて、嬉しいです。

今日は映画館へ行きましたが、確かにお客さんが増えているような気がしましたですね♪ 問題は上映作品に、この勢いが反映されるか否かなんですが……。

ということで、本日はこれです――

Julius Watkins Sextet Volume Two (Blue Note)

ジュリアス・ワトキンスはフレンチホーンでモダンジャズを演奏する黒人プレイヤーです。

フレンチホーンという楽器そのものがジャズでは馴染みがありませんから、はて、どんなんかなぁ~、と思いつつも、きっとソフトな音色が出てきそうな予感がしていました。

それはギル・エバンスあたりの幻想的なアレンジでは、よく使用される楽器でしたし、「フレンチ」っていうのが、お洒落なフィーリング♪ しかし楽器そのものは、グロテスクなほどにグニャグニャとカタツムリの内臓を連想させますからねぇ……。

で、このアルバムは10吋盤ですが、特に私が気にしていたのは、もちろんハンク・モブレーが参加しているからです。なにせジャケットにもサブリーダーのように、しっかりと写っていますからねぇ~♪

録音は1955年3月20日、メンバーはジュリアス・ワトキンス(frh)、ハンク・モブレー(ts)、デューク・ジョーダン(p)、ペリー・ロペス(g)、オスカー・ペティフォード(b)、アート・ブレイキー(ds) という凄い面々です――

A-1 Garden Delights
 いきなり長閑な牧場の夜明けみたいな雰囲気です。
 もちろんそこはフレンチホーンで奏でられますが、続くパートではオスカー・ペティフォードの力強いベースがリードして、快適なテンポで魅惑のテーマが演奏されていきます。アート・ブレイキーのブラシも良い感じですねぇ♪
 アドリブパート先発はペリー・ロペスのギターで、私はこの人を良く知らないのですが、なかなかの正当派です。そしてハンク・モブレーは十八番のタメとモタレで実力発揮! いよいよ登場するジュリアス・ワトキンスは、なんかトロンボーンのような音色とアドリブフレーズで勝負しています。
 演奏全体としては、けっこう緻密なアレンジとキメが用意されていて、西海岸派のようなスマートさがあります。

A-2 Julie Ann
 3分に満たない短い演奏ですが、ペリー・ロペスのギターが抜群のスパイスになった緩やかな曲です。フレンチホーン特有の柔らかな音色が活かされた曲調が素晴らしく和みますねぇ♪ 唯一アドリブをとるハンク・モブレーも、そのあたりは百も承知というか、自分の特質にあったようで、サブトーンを駆使しての快演を聞かせてくれるのでした。

A-3 Sparkling Burgundy
 アップテンポのソフトバップです♪ あぁ、曲が良いんだなぁ~♪
 アドリブ先発のジュリアス・ワトキンスは言わずもがな、ペリー・ロペスもデューク・ジョーダンも、テーマメロディに仕込まれた一抹の「泣き」を大切にした美メロの展開には、グッときます。
 しかし一座の花形というハンク・モブレーはハードバップ魂優先のようですねぇ。短いながらも本領発揮の黒さがあります。もちろんアート・ブレイキー&オスカー・ペティフォードのリズムコンピの存在も光っています。

B-1 B And B
 昔、同じ名前の漫才コンビがいましたが、これは快適なソフトバップです♪
 アドリブ先発のハンク・モブレーが淀みなく十八番のフレーズを連発すれば、デューク・ジョーダンは哀切の美メロを含ませた名演を聞かせてくれます。しかも直後からはハンク・モブレーとアート・ブレイキーの対決があって、オスカー・ペティフォードのブリブリいうベースソロに繋がるんですからっ!
 あれっ、ジュリアス・ワトキンスは? と思った次の瞬間、素晴らしいアドリブを聞かせてくれるあたりがニクイです。ただしラストテーマ前にテープ編集疑惑があるのは、如何にも残念……!

B-2 Jor-Du
 おぉ~! デューク・ジョーダン畢生の名曲が大団円ですよっ!
 これしかないのイントロは、もちろん作者が担当し、そのままお馴染みのテーマが鳴り出せば、あたりはすっかり哀愁のハードバップモードです♪ あぁ、ジャズを聴いていて良かったと、シミジミ思いますねぇ~♪
 快適なビートを送り出すドラムスとベースが最高ですから、アドリブも自然と白熱するというか、柔らかな日差しのようなジュリアス・ワトキンス、ビンビンブリブリのオスカー・ペティフォード、薬籠中の名演に終始するデューク・ジョーダン、自分の節に拘りまくるハンク・モブレーと絶対的な快演が続くのでした。
 なによりもテーマ合奏時のバンド全体の響きが素晴らしいですねぇ~♪

ということで、短めの演奏ばかりなのが勿体無いという名演集です。

時代的にはハードバッブとかファンキー色の強いものが求められていたのかもしれませんから、こういうソフト感覚がある演奏はイマイチ、ウケなかったのでしょうか。ジュリアス・ワトキンスその人は、ジャズ喫茶でも無視されがちで、一部のマニアに愛好される存在になっていますが、それでもこのアルバムは参加メンバーに魅力がありますから、要注意だと思います。

特にハンク・モブレーとデューク・ジョーダンの組み合せは、ファンならば絶対気になるはずですし、もちろん相性も素晴らしいかぎりです! こちらが求めるウェットな感覚は言わずもがな、それがベタベタになっていなのは、アート・ブレイキーの力強い煽りの所為かと思います。

ちなみにブルーノートに残された、これ以前の「Volume One」ではフランク・フォスター(ts) が参加しており、当然、捨てがたい魅力の演奏になっていますので、機会があれば、両盤ともに鑑賞をオススメ致します。

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デビュー盤の楽しみ

2007-02-02 17:11:54 | Weblog

何時も使っているネコ耳秘書が、優雅にも3週間の休みをとって、ニュージーランド方面へ遊びに行ってしまったので、今日からは派遣の秘書がやって来ましたが、この人が仕事の呑み込みは早いし、接客の応対も素晴らしく、加えて凛とした姿勢と面立ち、さらに巨乳という、ほとんど小池栄子みたいな♪

ちょっと吃驚でした。

ということで、本日の1枚は――

Kenny Drew Trio (Blue Note)

1980年代から日本のレコード会社によって製作された一連の作品によって、すっかり人気者になったケニー・ドリューですから、好きなピアニストなんていうと、ちょっと恥ずかしくなるのが、ジャズ者の哀しいサガです。理由は、あえて述べませんが……。

しかし作家がデビュー作に収斂していくのと同様に、ジャズ演奏家も初期の録音に、その全てが出ている人が少なくないと感じます。

ケニー・ドリューも、そのひとりでしょう。ですから、後年のアルバムにしても基礎はデビュー当時となんら変わらないはずなんですが、どうせ聴くなら初リーダー盤を堂々と楽しんだほうが、精神衛生上、よろしいかと思います。これも理由は、あえて述べません。

で、このアルバムは10吋盤で、録音は1953年4月16日、メンバーはケニー・ドリュー(p)、カーリー・ラッセル(b)、アート・ブレイキー(ds) となっていますが、選曲も私好みというか、抜群なんですねぇ♪

A-1 Yesterdays
 暗い雰囲気に満ちたオリジナル曲の味を忠実に再現したのでしょう、最初は無伴奏でゴージャスにテーマを弾いてくれるケニー・ドリューの真摯な姿勢が、潔いと感じます。
 しかしインテンポしてからは、アート・ブレイキーに烈しく煽られて、アップテンポでガンガン、ブッ飛ばします。リズムへのアプローチやアドリブフレーズの要は、後年と何ら変わらないものがありますが、非常に鮮烈なムードに満ちているのは、時代のマジックでしょうか? とにかく快演です。

A-2 Stella By Starlight
 リラックスムードが横溢した解釈になっているあたりが、素直で良いと感じます。 まあ、この曲に関しては有名スタンダードなんで、星の数ほどのジャズバージョンが残されていますから、これが決定版とは言いませんが……。

A-3 Gioria
 ケニー・ドリューのオリジナル曲で、ズバリ、和みます。
 緩やかなテンポの演奏なんで、ちょっとラウンジ系という雰囲気ですが、テーマ~アドリブにかけて全体の完成度が高く、多分、何度演奏しても、これと同じパターンになってしまうかもしれません。その意味では純粋ジャズでは無い?
 否、これは立派なジャズだと思います。

A-4 Be My Love
 一抹の泣きが入ったメロディ展開が、個人的には大好きなスタンダード曲ですから、ここで最初っからガンガン行ってしまうケニー・ドリューの演奏には???の部分もあります。しかし、ここまで熱く演じてくれれば、文句を言うことも出来ません。
 ビンビン弾むカーリー・ラッセルのベースも怖ろしく、ビシビシ煽るアート・ブレイキーは鬼神の如くです。もちろんケニー・ドリューは開放的に弾きまくり♪ ちゃ~んと自分だけの「節」があるアドリブを聞かせてくれるのでした。

B-1 Lover Come Back To Me
 グルーヴィな雰囲気のイントロが、まず素晴らしく、続けてグイグイと弾いていくテーマの解釈、さらにツッコミ気味のアドリブという、本当に勢いのある演奏です。
 しかし、それゆえに落ち着きが無いというか、聴いていて疲れます。まあ、それがジャズの醍醐味なんでしょう。そして後年には、なかなか聴くことが出来なくなったフィーリングだと思いますので、結果オーライです。

B-2 Everything Happens To Me
 あぁ、これは良いですねぇ~♪ 元々、私が好きな曲だとはいえ、力強い解釈が裏目に出ておらず、仕込まれたキメも嫌味になっていないと思います。甘さに流れていないあたりが、賛否両論でしょうか……。
 ケニー・ドリューの非凡なところが聴ける演奏だと思うのですが……。

B-3 It Might As Will Be Spring
 これも曲そのものが好きでたまりませんから、超アップテンポで演奏されたこのバージョンには意表を突かれ、茫然自失したのが第一印象でした。後年のケニー・ドリューならば、ボサノバ調か大甘の世界をやってくれるんでしょうが、う~ん……。
 とすれば、後年の姿勢を一概に貶すのは大間違いという結論になりますねぇ。
 まぁ、ハードバップ勃興期には、こういう解釈あったという証左になりましょうか、なかなか興味が尽きないところでもあります。実際、カッコイイ演奏なんですよっ!

B-4 Drew's Blues
 オーラスはタイトルどおり、ケニー・ドリューのオリジナルブルースで、グルーヴィな快演になっています。
 なにしろイントロからしてファンキーそのものですし、カーリー・ラッセルのベースの入り方とか、続くテーマ解釈あたりは、もう完全にハードバップになっています。もちろんアドリブは粘っこく、また弾みまくっています。
 アート・ブレイキーとのコンビネーションも最高で、なんとラストテーマでは感極まった誰かの叫び声(?)まで録音されています。あぁ、短いながらも、本当に強烈な出来栄えです♪

ということで、1曲あたりの演奏時間は短いんですが、非常に完成度の高い作品になっています。

録音データ的には、ちょうどバディ・デフランコ(cl) の有名セッション盤「Mr.Clarinet (Verve)」の翌日に行われた事になっていますから、気合も充実していたのでしょう。またハードバップ前夜というか、当時、ほとんど閉塞状態と言われていた黒人ジャズの滾る情熱みたいなものが、残されているのかもしれません。もっとも演奏者側からすれば、そんな事はどーでもいいのが、真実?

とにかく、何時聴いても味わい深く、新鮮なアルバムだと思います。

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地味じゃないフォレスト

2007-02-01 17:17:00 | Weblog

この冬、一番冬らしくなって、あたりは雪景色です。

交通事故も多いらしく、朝の通勤時間帯には2件ほど事故車を見て、安全運転に心がけましたが、こういう寒い日には暖かい音が聴きたくなります。

そこで――

Out Of The Forrest / Jimmy Forrest (Perstige)

ジミー・フォレストはタフ・テナーとかテキサス・テナーとか称される、所謂コテコテ系の人なんですが、生まれは南部ではなく、セントルイスの出身です。

これはソウルミュージックの世界でもそうなんですが、コテコテ系といえども、北部や都市出身者の演奏には、ある種の洗練された雰囲気があって、ジミー・フォレストも例外ではありません。

けっこう派手にブローしていても、イナタイ雰囲気よりは洒落た感覚が滲み出ているように感じます。

もちろん黒っぽくR&B色の強い演奏は得意中の得意であり、1951年には「ナイトトレイン」なんていう琴線直撃のヒットも放っているほどですから、そのスピリットは本物です。

当然、モダンジャズ本流の作品も多く、後年はカウント・ベイシー楽団の看板スタアにもなっていますが、このアルバムは最もハードバップ色の濃い演奏をしていた時期の作品です。

録音は1961年4月18日、メンバーはジミー・フォレスト(ts)、ジョー・ザビヌル(p)、トミー・ポッター(b)、クラレンス・ジョンストン(ds) という、興味津々な顔ぶれです――

A-1 Bolo Blues
 ジミー・フォレストのオリジナルというスロ~ブル~スです。
 初っ端にこんな曲を据えてしまうアルバム作りが全てを物語っている、深い味わいがたまりません。
 ジミー・フォレストは決して一本調子で無く、深い溜息のような咽び泣きから熱い魂の迸りまで、当にソウルテナーの真髄に迫っていますし、気になるジョー・ザビヌルは、もちろん後年、ウェザーリポートで大活躍するあの人と同一人物ですが、ほとんどジュニア・マンス(p) の如き粘っこいタッチの好演です。

A-2 I Cried For You
 ヘレン・フォレスト(vo) のヒット曲として有名なだけに、どんな解釈になっているか、大いに楽しみでしたが、ジミー・フォレストはサブトーンを駆使した正統派のテーマ吹奏から、幾分、中間派っぽい楽しいノリを全面に出して、軽やかにスイングしています。
 とはいえ、その黒い「泣き節」は充分に魅力的で、出し惜しみしない美味しいフレーズとキメは流石だと思います。
 またジョー・ザビヌルは神妙にハードバッブをやってくれます。

A-3 I've Got A Right To Cry
 これがまた、黒~い演奏です。スローテンポなんですが、原曲の持つジェントルな雰囲気を大切にして、尚且つ、黒人ジャズの熱いフィーリングが全開という名演だと思います。あぁ、このサブトーン&力みの音色!
 言ってみれば、キャバレーモードかもしれませんが、このソフトな情感は一級品♪ この余裕と貫禄はバンド全体をグイグイとスイングさせて、リスナーを桃源郷に誘いこむ、間然することの無い境地だと思います。

A-4 This Can't Be Love
 いきなり軽いジョー・ザビヌルのイントロから、黒っぽいスマートさを存分に発揮したジミー・フォレストのテーマ吹奏が楽しい限りです。
 もちろんアドリブパート突入の際には力みのフレーズで、後はもう、グイノリの展開♪ これでもかとブリブリの音ばっかり出してくれます。
 またジョー・ザビヌルは、ちょっと迷い道ながら、本場アメリカへの憧れを滲ませて、自己満足的幸せに満ちたピアノを披露しています。 
 う~ん、ラストテーマのジミー・フォレストが、これまた良いですねぇ。

B-1 By The River Saint Marie / セント・マリー鐘
 おぉ、これはビング・クロスビーのヒット曲じゃないかっ!
 ここではホンワカと黒っぽく、余裕に満ち溢れたバージョンとして仕上げていますが、ジミー・フォレストはソフトなジャズセンスで迫ります。歌心が素敵ですねぇ~♪
 またリズム隊もメリハリのある好演で、トミー・ポッターのベースソロも全てが「歌」という素晴らしさです。

B-2 Yesterdays
 出たっ! ジミー・フォレストが十八番の泣きが心に染み入る名演です。
 まずテーマ吹奏が思わせぶりながら、グサリと核心を突くソウル魂があって、最高です。もちろんサブトーンの魅力、力み節のエグミのバランスは最高ですし、ゆったりとグルーヴィに盛り上げてくワザは、もうトリハダです♪
 リズム隊とのコンビネーションもバッチリですねぇ、3分52秒目以降の展開には眩暈がしてきますよ。

B-3 Crash Program
 これもジミー・フォレストのオリジナルで、バリバリ飛ばす痛快な演奏です。そしてこういう雰囲気ならば、俺に任せろのクラレンス・ジョンストンが大ハッスル! ジョー・ザビヌルは完全にジュニア・マンスのフレーズを盗み弾きです♪ もちろん親分のジミー・フォレストは笑って許すような、爆裂ブローの連発です。 

B-4 That's All
 オーラスは私の大好きなスタンダード曲ということで、素直に和みます。
 一転してビル・エバンス調というジョー・ザビヌルのイントロ&伴奏も微笑ましいところですが、ジミー・フォレストのサブトーンが優しくテーマメロディを奏でてくれれば、もう夢見心地の安らぎに満たされるのでした。
 そしてジョー・ザビヌルが繊細な新感覚で勝負に出ているあたりは、やはり只者じゃあないと思います。

ということで、正直言うと、ジミー・フォレストには、これ以上の出来栄えの作品もありますから、決して名盤では無いのですが、時偶、取り出して聴きたくなるという、魅惑の1枚です。

マニア的にはジョー・ザビヌルの参加が全てという視点もありますが、これも正直に告白すれば、ジャズ喫茶で最初に聴いた時にはそんな事には気づかず、入手する段になって初めて仰天した記憶が鮮明です。

まあ、こういう楽しみがあるから、ジャズを聴くのは止められないんですが♪

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