ジャーナリズム研究者・元東大教授、桂さんの最終回です。
3.NHKをめぐる当面の問題の望ましい解決めざす
NHKは、現に直面しつつあり、一両年のうちにはさらに困難の度合いを
増すこのような情勢のなか、政界・財界の関与に身を任せ、
漂流するばかりだと、結局、政治と産業の貪欲な野望に引き裂かれ、
営々として国民の受信料によって築かれてきた
公共的な言論報道機関、放送文化の砦は、権力と市場に奪い取られ、
雲散霧消の憂き目に遭うおそれがある。
なんとしても、そのような状況が出来するのを、防がなければならない。
そのためには、視聴者の立場に足を置き、その目となり耳となり、
さらには声ともなる経営委員がNHKの主体性を復権、
その独立を確かなものとする必要がある。
そのために「めざす会」は今回、私と湯山さん、
2人の候補を推薦する運動を始めたが、
同時に、NHKをめぐるいくつかの問題にも同時に取り組み、
適切な解決をNHK、ならびに関係機関に働きかける運動も推進している。
その一つを紹介すれば、NHK・ETVの従軍慰安婦番組改変問題は、
いろいろな意味で未解決というべき状態にあり、
そのマイナスの影響を考慮すると、
問題を放置しておくわけにはいかないというのが、
「めざす会」関係者の一致した見解だ。
そこで、この問題で裁判を提起した原告女性団体、
VAWW-NETジャパンとは関係なく、
独自に放送界の自主機関、BPO(放送倫理・番組向上機構。NHKも会員)に対し、
機構内の放送倫理検証委員会が番組改変の事実について検証を行い、
倫理的にどのような問題があったか、
その是正に関して判断を示してもらいたいと、9月に申し入れを行った。
VAWW-NETジャパンの提起した裁判において、
高裁は、NHKが政治家の意向を忖度し、
憲法が保障している編集の自由をみずから曲げ、逸脱し、番組を改変した、
とする判断を示した。
これは一審=地裁判決後に朝日の報道やNHKの当該番組制作従事者からの
告発があり、それを踏まえて出されたもので、
一定の事実認定をしたうえでの判断であるということができた。
ところが、今年の最高裁の判断は、
「編集権」とする言葉の語義解釈だけに終始し、
それは経営トップだけに帰属し、そのトップだけが裁量できるものであって、
現場の人間は自分のつくったものを改変されても、
異議を唱えることはできない―
まして外部の制作協力者が関与すべきものではない、とするものだった。
番組改変の事実に関する判断にはいっさい踏み込まない、
納得のいかない判決だった。
本来、NHKが報道機関として健全なら、みずから検証番組をつくり、
視聴者の前に事実の経過と問題点を明らかにし、
反省すべきところがあれば改善を約束するのが、適切な解決のやり方だ。
だが、NHKはそれをやろうとしない。
そこで私たちはBPOに問題を持ち込んだわけだ。
BPOの放送倫理検証委員会はその後、9・10・11月と
この問題の取り扱いについて検討、慎重な審議をつづけている。
私たちは、一議に及ばず差し戻す、とするような対応はせず、
このように粘り強く検討を繰り返している委員会に深い敬意を覚えるとともに、
私たちは、怯むことなく、臆すことなく、
大事なことを一つ一つ着実に解決していくこと、
その努力を倦まず重ねていくことの大切さも、学んでいる。
11月11日、国会・参院で、「我が国が侵略国家だというのは濡れ衣だ」と
する論文公表問題で参考人招致された田母神俊雄前空自幕僚長が、
各党議員の質問にさらされた。
だが、国民の関心も高く、問題の性格上、田母神参考人の言説の危うさは
広く知られるべきものであるのに、NHKはその生中継をしなかった。
そもそも申請さえ国会にしていなかったのだ。
その事実が判明すると、多くの視聴者から抗議の声が殺到したが、
NHKが、広報窓口に応対を任せっぱなしで、
しかも回答は「NHKに編集権があり、
NHKとして独自の編集判断によってしたことだ」とのみ、
何度でも繰り返させるだけのものだったのには驚いた。
ある電話の抗議者が、一問一答のありのままの録音を、
ユーチューブに投稿していたのを聞いたが、
番組改変問題・最高裁判決の「編集権」論が、
早速、悪く生かされていることを実感した。
NHKをそんな方向に追いやらないためにも、
この改変問題を正しく解決しておくことが必要だ、と思った。

以上で桂さんの NHK経営委員候補に推されて考えたこと
は終わりです。
署名運動を進めていらっしゃるということです。
見かけたら、是非、ご協力をお願いします。
落石
3.NHKをめぐる当面の問題の望ましい解決めざす
NHKは、現に直面しつつあり、一両年のうちにはさらに困難の度合いを
増すこのような情勢のなか、政界・財界の関与に身を任せ、
漂流するばかりだと、結局、政治と産業の貪欲な野望に引き裂かれ、
営々として国民の受信料によって築かれてきた
公共的な言論報道機関、放送文化の砦は、権力と市場に奪い取られ、
雲散霧消の憂き目に遭うおそれがある。
なんとしても、そのような状況が出来するのを、防がなければならない。
そのためには、視聴者の立場に足を置き、その目となり耳となり、
さらには声ともなる経営委員がNHKの主体性を復権、
その独立を確かなものとする必要がある。
そのために「めざす会」は今回、私と湯山さん、
2人の候補を推薦する運動を始めたが、
同時に、NHKをめぐるいくつかの問題にも同時に取り組み、
適切な解決をNHK、ならびに関係機関に働きかける運動も推進している。
その一つを紹介すれば、NHK・ETVの従軍慰安婦番組改変問題は、
いろいろな意味で未解決というべき状態にあり、
そのマイナスの影響を考慮すると、
問題を放置しておくわけにはいかないというのが、
「めざす会」関係者の一致した見解だ。
そこで、この問題で裁判を提起した原告女性団体、
VAWW-NETジャパンとは関係なく、
独自に放送界の自主機関、BPO(放送倫理・番組向上機構。NHKも会員)に対し、
機構内の放送倫理検証委員会が番組改変の事実について検証を行い、
倫理的にどのような問題があったか、
その是正に関して判断を示してもらいたいと、9月に申し入れを行った。
VAWW-NETジャパンの提起した裁判において、
高裁は、NHKが政治家の意向を忖度し、
憲法が保障している編集の自由をみずから曲げ、逸脱し、番組を改変した、
とする判断を示した。
これは一審=地裁判決後に朝日の報道やNHKの当該番組制作従事者からの
告発があり、それを踏まえて出されたもので、
一定の事実認定をしたうえでの判断であるということができた。
ところが、今年の最高裁の判断は、
「編集権」とする言葉の語義解釈だけに終始し、
それは経営トップだけに帰属し、そのトップだけが裁量できるものであって、
現場の人間は自分のつくったものを改変されても、
異議を唱えることはできない―
まして外部の制作協力者が関与すべきものではない、とするものだった。
番組改変の事実に関する判断にはいっさい踏み込まない、
納得のいかない判決だった。
本来、NHKが報道機関として健全なら、みずから検証番組をつくり、
視聴者の前に事実の経過と問題点を明らかにし、
反省すべきところがあれば改善を約束するのが、適切な解決のやり方だ。
だが、NHKはそれをやろうとしない。
そこで私たちはBPOに問題を持ち込んだわけだ。
BPOの放送倫理検証委員会はその後、9・10・11月と
この問題の取り扱いについて検討、慎重な審議をつづけている。
私たちは、一議に及ばず差し戻す、とするような対応はせず、
このように粘り強く検討を繰り返している委員会に深い敬意を覚えるとともに、
私たちは、怯むことなく、臆すことなく、
大事なことを一つ一つ着実に解決していくこと、
その努力を倦まず重ねていくことの大切さも、学んでいる。
11月11日、国会・参院で、「我が国が侵略国家だというのは濡れ衣だ」と
する論文公表問題で参考人招致された田母神俊雄前空自幕僚長が、
各党議員の質問にさらされた。
だが、国民の関心も高く、問題の性格上、田母神参考人の言説の危うさは
広く知られるべきものであるのに、NHKはその生中継をしなかった。
そもそも申請さえ国会にしていなかったのだ。
その事実が判明すると、多くの視聴者から抗議の声が殺到したが、
NHKが、広報窓口に応対を任せっぱなしで、
しかも回答は「NHKに編集権があり、
NHKとして独自の編集判断によってしたことだ」とのみ、
何度でも繰り返させるだけのものだったのには驚いた。
ある電話の抗議者が、一問一答のありのままの録音を、
ユーチューブに投稿していたのを聞いたが、
番組改変問題・最高裁判決の「編集権」論が、
早速、悪く生かされていることを実感した。
NHKをそんな方向に追いやらないためにも、
この改変問題を正しく解決しておくことが必要だ、と思った。

以上で桂さんの NHK経営委員候補に推されて考えたこと
は終わりです。
署名運動を進めていらっしゃるということです。
見かけたら、是非、ご協力をお願いします。
落石