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米金融独占は世界の食肉、医療、穀物にも及ぶということ(6)  文科系

2015年01月02日 11時44分14秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 こんな話ばかりを書いていると自分ながら嫌になってくる。しかしながら、それが世界の現実ならばそこをよく見つめることから出発するしかない。食肉1回、医療4回の次は農業独占なのだがその典型的やり口を戦後のイラクに見ることが出来る。同じやり口がアメリカ国内を統一してから世界中に広がったそのやり方である。

【 アメリカがイラク農業を支配した手口  

 これは、岩波新書、堤未果著「(株)貧困大国アメリカ」の部分的要約である。標題の手口と、イラクが多国籍アグリビジネス大独占企業の食料輸出基地に統合されていった経過を描いている。もちろん、TPPなどで問題になっている知的財産権の法律(というよりも、国内法に優先する連合国暫定当局命令。04年4月に100のそれが発布された)が強力な武器として活用されてきたという経過も存在する。

 事態はこんな情勢から始まった。戦争がやっと落ち着きかけた頃、連合国暫定当局が「さー農業を始めよう」、「イラクに強い農業を」と大いに呼びかけ始める。そして、これに呼応してきたイラク農家に、アメリカ国際開発庁から送られてきた種子と農薬を、補助金つきで無料提供し始めたのである。最大主力農産品である小麦、大麦、豆類などの穀物に遺伝子組み換え種子が当てられているところが味噌なのだ。それには例えば、こういうライセンス契約が付いているのである。

『・自分の農家で採れた種子を翌年使用することは禁止
 ・毎年種子はモンサント社から購入
 ・農薬は必ずモンサント社から買う
 ・毎年ライセンス料をモンサント社に払う
 ・何かトラブルが起きた際はその内容を他者に漏洩しない
 ・契約後三年は、モンサント社の私設警察による農場立ち入りを許可する』

 なお、このライセンス契約は、連合国暫定当局命令81号という「法律」によってバックアップされた保証付きという代物である。この81号の呼び名はこういうものだ。「特許・工業デザイン・未公開情報・集積回路・植物品種法」。これまでのイラクには植物、生命体に特許をつける発想などどこにもなかったのであって、遺伝子組み換え種子が国中を席巻していったのは言うまでもない。なお、イラクそれぞれの土地にあった伝来の多様な伝統的穀物種子バンクはほとんど破壊されてしまったとも書いてあった。唯一の例外を除いて。
『フセインの時代の農務大臣が、緊急用にシリアの都市アレッポ国際乾燥地農業研究センターに預けていた一部の種子以外、種子バンクに保存されていたイラクの貴重な種子は全て破壊されたのです』


 同所156頁の文章をまとめに変える。

『1970年代の終わりから多くの政府高官や企業群が掲げた「食糧は武器だ」というアメリカ政府の主張は、この間ずっとぶれることがなかった。食糧供給の企業所有を国内で完成させた後は、諸外国に「民主主義」「強い農業」「財政再建」「人道支援」などを理由に介入、集約させた広い農地で輸出用GM(遺伝子組込)作物の大規模単一栽培を導入させ、現地の小規模農民を追い出した後は、株式会社アメリカが動かしていく。インドやイラク、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリアなど、その勢いはとどまるところを知らなかった』

 お隣の韓国の場合も見ておこう。同じく、同159頁である。
『2012年3月に施行された米韓FTA(二国間自由貿易協定)は、施行後の手間を省くために、米国政府が交渉開始の前段階で、「食」「GM作物」「製薬」というNAFTA(北米自由貿易協定ー文科系)で最重要視された三項目に関する事前条件を、韓国側にのませておいた。
(1)アメリカで科学的安全性が認められたGM食品は無条件で受け入れる。
(2)韓国の国民皆保険が適用されない株式会社経営の病院の参入を認める。
(3)米国産牛肉の輸入条件を緩和する』

 このシリーズはこれで終わりとします。 
コメント (12)
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