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随筆紹介  大きなカブ   文科系

2015年02月24日 22時20分18秒 | 文芸作品
   大きなカブ   K.Kさんの作品

 寒くても子どもは外が好き。四歳の孫娘と散歩に出かけた。午前中に保育園の生活発表会があり、午後は休園で預かったのである。

 家庭菜園で畑の手入れをしている白髪混じりの男性がいた。孫娘が立ち止まる。「何してるの?」、声をかける。恥ずかしがり屋なのに珍しいこと。私も足を止めた。彼は立ち上がって返事をするが、小さな声で聴きとりにくい。孫娘は「これは大根、ネギ」言いながら畑の中へ入って行く。私は少し離れた所で様子をみる。「冬の畑だよ」、教えている。そうか、これが冬の畑か。白菜、ブロッコリーなど色が少ない。夏の畑はトマト、スイカなど鮮やかである。畑にも季節があったのに気付く。

 孫娘は一番奥のカブに興味を示した。「これ、カブ?」指さして聞く。「抜いてみるかい?」、彼が彼女の顔をみる。「うん」大きく頷く。孫娘の頭くらいの大きなカブは、ビクともしない。彼が少し動かしてくれた。「よいしょっ」やっと抜けた。満足そうな顔。
 たぶん、カブに興味を持ったのは、午前中の劇で「大きなカブ」をやったばかりだからだろう。孫娘の役は犬だった。本物のカブで体験できるなんて、こんな偶然あるのだ。彼に感謝である。孫娘が袋に入れた大きなカブを引きずるようにして、かけ戻ってきた。まだ土の付いたカブははち切れそうだった。「シチューにしてね」。劇と同じになった。
 雪が舞ってきた。帰りを急ごう。
コメント (9)
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