改めて、ユネスコ登録をめぐる南京大虐殺の日中当事者論争に関わって、まとめを書いておく。
①死者は日本4~20万、中国30万で、すっと論争が続いてきた。
②人数が確定できない多くの理由があった。
・当時中国の戸籍法が不備だった。
・日本側が、初めから、そしてその後8年の占領下において、資料をすべて隠蔽、もみ消した。
・以下②③が関わって来るので、資料隠蔽には極めて敏感になっていた。国内的戦意高揚のためにも、悪事を隠蔽するだけではなく、「美化する」のが、戦争の常道である。「大本営発表」とは、そういうものであった。これは、1940年代生まれまでの日本人なら、皆よーく知っていることである。
・中国の戸籍法不備を軍部は初めから良く認識していて「それゆえ、捕虜を殺しても問題にならない」と、兵士に事前教育まで行っていた。この事前教育資料を暴き出した歴史学者は、陸士第55期、中国大陸歴戦の中隊長・藤原彰元陸軍大尉である。(僕が「アジア・太平洋戦争」に関わってたびたび引用してきた吉田裕は、この藤原彰の弟子であると、最近知った。詳しくは、岩波新書「シリーズ日本近現代史」第10巻152~153頁参照)
③なお、南京大虐殺が起こった状況は以下の通りである。
・満州事変以降、これに引き続く上海事変も太平洋戦争も、いずれも違法戦争で、帝国政権はその確信犯であった。
・上海事変は3か月続いた「第一次世界大戦ベルダン要塞攻防戦以来の大激戦」(中国軍事顧問だったドイツ軍人の発言)で、中国側は19万人が死んだと言われている。この敗残兵が上海の揚子江上流・首都南京に潰走したのを日本兵が追撃して起こったのが、南京包囲戦、大虐殺である。
・南京は10数メートルの分厚い城壁都市。背後は揚子江。これを囲んだ日本軍。1937年12月12~13日にかけて城外への逃走を命令し、遂行しようとした「国民党城兵15万+上海からの敗走兵」を殺すのは容易なことであった。大量死者の写真も色々なところに、多く残っている。そもそも、中国を征服しようと決意して始めたこの戦争である。今後の大陸南下戦争のためにも南京城壁包囲の時点で城兵全滅を期していたのは間違いないところだ。可能な限り秘密裏に殺したのだろうが、以降7年間日本占領下が続いたならば、資料を消すことは容易だったろう。
④そもそも、満州事変・上海事変は完全な違法戦争。満州事変は、国際連盟が違法との決議(リットン調査団の資料による)を反対1で決定し、日本が国連を脱退した事件である。以降がすべて、違法の確信犯ということだ。こういう中でその後起こったことについて、南京の死者の数だけをあれこれと論い、今も行動している日本政府の気が知れない。常識的外交センスさえ世界から疑われかねない。
①死者は日本4~20万、中国30万で、すっと論争が続いてきた。
②人数が確定できない多くの理由があった。
・当時中国の戸籍法が不備だった。
・日本側が、初めから、そしてその後8年の占領下において、資料をすべて隠蔽、もみ消した。
・以下②③が関わって来るので、資料隠蔽には極めて敏感になっていた。国内的戦意高揚のためにも、悪事を隠蔽するだけではなく、「美化する」のが、戦争の常道である。「大本営発表」とは、そういうものであった。これは、1940年代生まれまでの日本人なら、皆よーく知っていることである。
・中国の戸籍法不備を軍部は初めから良く認識していて「それゆえ、捕虜を殺しても問題にならない」と、兵士に事前教育まで行っていた。この事前教育資料を暴き出した歴史学者は、陸士第55期、中国大陸歴戦の中隊長・藤原彰元陸軍大尉である。(僕が「アジア・太平洋戦争」に関わってたびたび引用してきた吉田裕は、この藤原彰の弟子であると、最近知った。詳しくは、岩波新書「シリーズ日本近現代史」第10巻152~153頁参照)
③なお、南京大虐殺が起こった状況は以下の通りである。
・満州事変以降、これに引き続く上海事変も太平洋戦争も、いずれも違法戦争で、帝国政権はその確信犯であった。
・上海事変は3か月続いた「第一次世界大戦ベルダン要塞攻防戦以来の大激戦」(中国軍事顧問だったドイツ軍人の発言)で、中国側は19万人が死んだと言われている。この敗残兵が上海の揚子江上流・首都南京に潰走したのを日本兵が追撃して起こったのが、南京包囲戦、大虐殺である。
・南京は10数メートルの分厚い城壁都市。背後は揚子江。これを囲んだ日本軍。1937年12月12~13日にかけて城外への逃走を命令し、遂行しようとした「国民党城兵15万+上海からの敗走兵」を殺すのは容易なことであった。大量死者の写真も色々なところに、多く残っている。そもそも、中国を征服しようと決意して始めたこの戦争である。今後の大陸南下戦争のためにも南京城壁包囲の時点で城兵全滅を期していたのは間違いないところだ。可能な限り秘密裏に殺したのだろうが、以降7年間日本占領下が続いたならば、資料を消すことは容易だったろう。
④そもそも、満州事変・上海事変は完全な違法戦争。満州事変は、国際連盟が違法との決議(リットン調査団の資料による)を反対1で決定し、日本が国連を脱退した事件である。以降がすべて、違法の確信犯ということだ。こういう中でその後起こったことについて、南京の死者の数だけをあれこれと論い、今も行動している日本政府の気が知れない。常識的外交センスさえ世界から疑われかねない。