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「民主化革命」という侵略③ アルゼンチン、米世界帝国から離脱   文科系

2015年10月19日 10時34分54秒 | Weblog
 ここまで読んできて、こういうことがご理解いただけたろう。堤未果がこの本で警告しているのは、「ローマの平和」ならぬ「アメリカの平和」の実現。イラク、イラン問題もアラブの春も、日本などへのTPP押し付けも、全てその一環。実体経済で傾きかけた帝国が、その金融覇権(そして、食料・医療・エネルギー覇権も)で世界を統一しようとする野望の道なのだと。その終局の姿は、世界独占企業をアメリカ金融が買い占めることなのだろう。

 それでは、ここから抜け出す道、それを選択した国はないのだろうか。堤は、その道はあるとして、アルゼンチンがとった方向を解説する。2度の国家デフォルトにもかかわらず、21世紀になっていったん減った中産階級を急激に増やした国なのである。
 日本で言えば、小沢一郎、鳩山由紀夫、孫崎享らが目指そうとした道は間違いなくこれだと僕は観ている。なんとなれば、チョムスキーも述べているように今の世界には「覇権か生存か」という二つの道しかないのだから。

 では、その解説を。堤のこの本の中でこの解説をしているのは、ローラ・ガルシアという人物である。彼女は、国連婦人開発基金で堤未果が働いていたころの同僚で、アルゼンチン人。

『(2003年5月)ネストル・キルチネルが大統領に選出され、〈IMFがもたらした新自由主義の呪縛〉から抜け出ることを最優先事項とした。彼は対外債務をデフォルトし、IMFの下で民営化された企業と年金基金を再国有化し、銀行に介入した。貧困撲滅のために予算を投じ、経済再生に向けて社会的支出を倍増し、製造向けの投資を拡大することで一般の消費拡大を狙ったのだ。
 また、ネストル大統領は一連の緊急公的就職プログラムを開始し、労働人口の約半数を占める失業者への支払いを確約したのだ。さらに、軍の権限を弱め、軍事予算を削減し、基礎年金を倍増させ、税収を雇用増大プログラムや教育、社会福祉、生産的投資を通した経済成長プログラムにあてた。
 その結果、2003年末までにマイナスからプラス8%に成長したアルゼンチン経済は、2011年までに90%の成長を遂げた。貧困撲滅プログラムへの大規模な支出によって、2001年に50%だった貧困率は、2011年の時点で15%以下へと減少した』

『2007年、クリスティナ・フェルナンデス大統領(前記ネストルの妻です)は一般教書演説でこう述べている。
「海外の債権者たちは、しきりに『負債を返済するためには、IMFと協定を結ばなければだめだ』と言ってくるが、アルゼンチンはこう答える。『我が国は主権国家だ。負債はお返ししたいが、金輪際、IMFと協定を結ぶつもりはない』と」』

『同時期、南米ではアルゼンチンの後に続く国が続出した。ブラジルはIMFとの融資協定更新を拒否し、ベネズエラはIMFと世界銀行の両方からの脱退を宣言し、ニカラグアはIMFからの脱退交渉を開始した。
 ボリビアのモラレス大統領は、多国籍企業が自らの利益を守るために各国政府を提訴することの出来る世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターからの脱退を、こんな風に発表している。「ラテンアメリカ諸国、そして私の見るところ世界中のどの国の政府も、ISFD条項における裁判に勝ったためしはない。勝のはいつも多国籍企業の方だ」』

 以上は、180~183ページからの抜粋であるが、別の所にはこんな記述もあった。
『1990年代のアジア危機で、IMF介入を受け入れた韓国、インドネシア、タイといった国々は、金融機関をはじめ国内の主要セクターが民営化され、総数2400万人の失業者とともに2000万人が貧困層に転落したからだ。同地域から中産階級を消滅させたのは、危機そのものではなく、IMFによる介入だった。
 韓国では企業による大量解雇を禁じる「労働者保護法」がIMFに撤廃させられ、国民の6割以上いた中産階級がわずか3年で4割以下に激減した』(171ページ)

 アジア通貨危機は、空売りによって累積貿易黒字などを日米が強引に収奪した事件として知られているが、それに加えてさらにIMFによる「緊縮財政プログラム」で借金返済を巻き上げやすくして結果的にもっと疲弊させると、そんな仕組が見えてくるのである。今では、同じ事が話題になったギリシャによって、既に世界お馴染みになっているやり方である。金融競争で敗者を作って借金漬けにした上に国家の社会資本まで奪うと、こんな事を世界あちこちで繰り返せば結局世界の購買力は落ちていく一方であろう。今の世界主流戦略の一体どこに、人類の未来があるかと思う。

 さてそれにしても、ここで僕としては、アルゼンチンなどの上記巻き返し経過とその現在とを詳しく調べてみようという宿題が新たに生まれたわけだ。
 

(続く)
コメント (4)
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