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随筆  このギター曲、無駄な努力?   文科系

2015年10月27日 13時02分20秒 | 文芸作品
 随筆  無駄な努力?

〈ここは、1と2の指で入って、次が2と4指。それを次には1と3で、また2と4指、と……。何度やっても速くならんなー 〉
 ギター楽譜では左手人差し指を1と、以下2、3と来て小指を4と書くことになっている。こんなふうに左手指全部で同時にいろんな弦を抑えるやり方がどんどん続く高スピードの和音連続曲を今やっている。これが年寄りには一番骨なのだ。ソルというギター作曲家の「エチュード作品六の六」、楽譜たった二ページの曲に過ぎないが、何よりもスピード指定が「アレグロ」。ギターという音も良くって表現領域も広い楽器で、唯一最大の弱点がこのアレグロ。スピードが出しにくいのである。楽譜がギターと一番似ているピアノとの、最も大きな性能差と言える。

 無駄な努力かなと、ほとんど分かっている。退職後に先生についたクラシック・ギターで、丸十二年経った今、こんなに分不相応な曲にまた挑んでいることを。ただ、ここまで同じ事を繰り返してきたけれど、今回は以前とはちょっと違う。〈こんな難曲はどうせ中途半端にしかでき上がらないが、将来の挑戦目指して覚えておこう〉。それが今回の曲は、ちょっとした決意を持って着手した。〈今回だけで仕上げてみよう〉。おそらく、〈もう「将来の挑戦」と言ってもなぁ〉という年齢、心境になったということだろう。
 二週間で暗譜し、八分音符連続を速い小走りリズムほどのスピードなら、通常の箇所は弾けるようになった。これでもまだまだ遅いのに、難所になるとそれから二週間弾き込んでもこのスピードにさえ達しない。和音楽器練習というものをご存知ない方は驚かれるかも知れないが、ある難所二小節を一日五〇回弾き込んで二週間なんてことまでやっても、全く速くならない。これをすらすら弾く人もいるのだから、この曲向けには指をめぐる神経などが固くなり過ぎているとしか思えない。成人前から習っていないと甚だしい苦労が要るということだろう。そんな日々が過ぎていく。

さて、それでも諦めないのが僕のギター。この十二年間に身につけた態度だ。別に苦労とも思わないで、何十回、何百回とただ繰り返していく。いつもこんなことを期しながら。〈ここの和音連続、すらすら行ったら気持ちいいだろうな〉、〈ここの旋律は、伴奏和音をもうちょっと速くできたらその繋がりをもっと響き合うように鳴らせられて、この感じがもっと出せるのに〉などなどと。こんなことを十二年間繰り返し、自分なりの満足を重ねてきたからこうなっているのだろうが、この根気良さを時に不思議に思ってきた。が、最近、その正体がやっと分かった。惰性なのである。練習慣れというか、能率を気にする必要がない私事。〈完成できれば越したことはないが、出来なくとも良いと思っている余裕。繰り返す中での微かな前進を、あー気持ちいいなーと十二分に楽しめているし……〉。

さて、こんなレッスンでは全く困ったことというか、大変な失意も生じる。人前でちょっと弾けなくなる。ミスが減らない。雑音も混じる。ちょっと気を抜いて準備するとそもそも、演奏中に記憶脱けの中断さえ起こる。一端これが始まると、その演奏の間はもう納まらない。年々対策を密にしていて、そうなって行くのだ。その後の失意は持ち前のプライドの高さゆえ、大変なもの。が、それでもまた出てやろうと思うのは、このプライド高さが嫌いだからでもある。変なプライドをへっこますべく戦うのもまた「発表会」。聴衆には、大変、ご免なさい。
コメント (2)
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