ここまで、米国の物作りの衰退と国家累積赤字の酷さを描いてきた。今回は、標記の自治体と家計の窮状を紹介する。
まず自治体については、進藤榮一著「アメリカ帝国の終焉 勃興するアジアと多極化世界」(講談社現代新書 2017年2月29日、第一刷発行)から、僕なりの要約を。
15年晩秋、久しぶりの訪米で衝撃を受けたことの一つが、全米随一の自動車都市デトロイトの光景だった。
『ミシガン中央駅は、かつて世界一の高さと威容を誇り、米国の物流と人口移動の中心を彩り、「工業超大国」アメリカの偉大さを象徴していた。しかしその駅舎は廃虚と化し、周辺は立ち入り禁止の柵で囲まれている』
荒廃した旧市街地へ入りかけると、道路脇にこんな看板が立っていたという。「これから先、安全について市は責任を負いません」。警察が安全責任を持てないから、自分は自分で守れと警告しているのである。ちなみに、市域の3分の1が空き地か荒れ地で、街灯の30%が故障中、警官を呼んで来る時間が平均27分というのだから、無理もない。全米都市中2位の殺人発生率を誇るデトロイトのすぐお隣には、殺人発生率1位都市もあるのだ。GM発祥の地フリント市である。
デトロイトの人口も最盛時185万から70万に落ちて、9割は黒人。普通の会社の従業員などは郊外の「警護付き街区(ゲイテッド・シティー」から通勤してくると続いていく。
次いで、アメリカの家計の窮状。以下の文章は「マスコミに載らない海外記事」のサイトからの抜粋である。これの出典はオンライン誌「ニュー・イースタン・アウトルック」で、著者はウイリアム・エンダールという地政学者とあった。
『 実際のアメリカ経済状況には、ほとんど言及されていない別の要素もある。アメリカ消費者金融保護局による最近の研究によれば、他の多くの国々と比較して、1世帯当たりの平均収入は名目上高く見えるが、食料や住宅や強制医療保険などの固定費という現実で、新種の貧困が生まれている。調査は、約50%のアメリカ人が、毎月の請求書支払いが困難で、三分の一もが、時に食べ物や、まともな住居や医療のお金が不足していると結論づけている。ある最近の研究は、四人家族の医療費だけでも、年間28,000ドル以上、平均収入の半分もかかると推計している。
アメリカ国内の厳しい見通しに加え、メディケア保険資金の運営委員会が、信託基金は、8年で枯渇すると発表したばかりだ。社会保障信託基金も、引退する多数の戦後ベビー・ブーマー世代と、払い込む若い労働者数の減少のおかげで、出生率も人口成長も減少しているので、1982年以来、今年初めて赤字に転落する。また、ニュージャージー州は、財政破綻が迫るなか、あらゆる歳出を凍結した。連邦準備制度理事会が金利を上げると、企業と家計の債務不履行の連鎖反応が、あらかじめプログラムされている。
要するに、アメリカ経済は、わずか1%の富裕層に失血させられ、限界点に至っているのだ。アメリカ株式市場は、十年間の低利資金のおかげで、現在過去最高を享受しているが、アメリカ合州国の根本的な経済的現実は、控え目に言っても、不安定だ。唯一の超大国による世界支配を維持するという点では、権力者にとって、二つの道が開きつつある。戦争か、あるいは2008年のものより酷い新たなグローバル金融危機を引き起こし、危機を世界資本の流れに対する支配を再び取り戻すのに利用するかだ。
世間的に確立したG7同盟諸国に対する貿易戦争のような戦術を、アメリカ大統領が始めるのを余儀なくされている事実が、窮余の策が予定されていることを示唆している。現実には、戦いこそが、EU、特にドイツの未来なのだ。』
さて、次回からは、こういう状況からもたらされうる、アメリカの世界政策をご紹介してみたい。今の日本の外交などの政治方向は、アメリカの動向を抜きには何の予測もできないからである。流石に、現保守長期政権も中国への態度を修正し始めたことだし。
まず自治体については、進藤榮一著「アメリカ帝国の終焉 勃興するアジアと多極化世界」(講談社現代新書 2017年2月29日、第一刷発行)から、僕なりの要約を。
15年晩秋、久しぶりの訪米で衝撃を受けたことの一つが、全米随一の自動車都市デトロイトの光景だった。
『ミシガン中央駅は、かつて世界一の高さと威容を誇り、米国の物流と人口移動の中心を彩り、「工業超大国」アメリカの偉大さを象徴していた。しかしその駅舎は廃虚と化し、周辺は立ち入り禁止の柵で囲まれている』
荒廃した旧市街地へ入りかけると、道路脇にこんな看板が立っていたという。「これから先、安全について市は責任を負いません」。警察が安全責任を持てないから、自分は自分で守れと警告しているのである。ちなみに、市域の3分の1が空き地か荒れ地で、街灯の30%が故障中、警官を呼んで来る時間が平均27分というのだから、無理もない。全米都市中2位の殺人発生率を誇るデトロイトのすぐお隣には、殺人発生率1位都市もあるのだ。GM発祥の地フリント市である。
デトロイトの人口も最盛時185万から70万に落ちて、9割は黒人。普通の会社の従業員などは郊外の「警護付き街区(ゲイテッド・シティー」から通勤してくると続いていく。
次いで、アメリカの家計の窮状。以下の文章は「マスコミに載らない海外記事」のサイトからの抜粋である。これの出典はオンライン誌「ニュー・イースタン・アウトルック」で、著者はウイリアム・エンダールという地政学者とあった。
『 実際のアメリカ経済状況には、ほとんど言及されていない別の要素もある。アメリカ消費者金融保護局による最近の研究によれば、他の多くの国々と比較して、1世帯当たりの平均収入は名目上高く見えるが、食料や住宅や強制医療保険などの固定費という現実で、新種の貧困が生まれている。調査は、約50%のアメリカ人が、毎月の請求書支払いが困難で、三分の一もが、時に食べ物や、まともな住居や医療のお金が不足していると結論づけている。ある最近の研究は、四人家族の医療費だけでも、年間28,000ドル以上、平均収入の半分もかかると推計している。
アメリカ国内の厳しい見通しに加え、メディケア保険資金の運営委員会が、信託基金は、8年で枯渇すると発表したばかりだ。社会保障信託基金も、引退する多数の戦後ベビー・ブーマー世代と、払い込む若い労働者数の減少のおかげで、出生率も人口成長も減少しているので、1982年以来、今年初めて赤字に転落する。また、ニュージャージー州は、財政破綻が迫るなか、あらゆる歳出を凍結した。連邦準備制度理事会が金利を上げると、企業と家計の債務不履行の連鎖反応が、あらかじめプログラムされている。
要するに、アメリカ経済は、わずか1%の富裕層に失血させられ、限界点に至っているのだ。アメリカ株式市場は、十年間の低利資金のおかげで、現在過去最高を享受しているが、アメリカ合州国の根本的な経済的現実は、控え目に言っても、不安定だ。唯一の超大国による世界支配を維持するという点では、権力者にとって、二つの道が開きつつある。戦争か、あるいは2008年のものより酷い新たなグローバル金融危機を引き起こし、危機を世界資本の流れに対する支配を再び取り戻すのに利用するかだ。
世間的に確立したG7同盟諸国に対する貿易戦争のような戦術を、アメリカ大統領が始めるのを余儀なくされている事実が、窮余の策が予定されていることを示唆している。現実には、戦いこそが、EU、特にドイツの未来なのだ。』
さて、次回からは、こういう状況からもたらされうる、アメリカの世界政策をご紹介してみたい。今の日本の外交などの政治方向は、アメリカの動向を抜きには何の予測もできないからである。流石に、現保守長期政権も中国への態度を修正し始めたことだし。