温泉ガール H・Sさんの作品です
温泉で年配の女性「温泉ガール」から「何歳ですか」と、年齢を聞かれる事が多い。
「八十二歳です」と答えると、「お若いですね。七十歳に見えますよ」と、温泉ガールが返してくれるが、これは明らかにお世辞だ。私は歳相応だと熟知しているので笑ってやり過ごす。
今日も温泉の脱衣所で温泉ガールから年齢を聞かれた。いつもの様に答えると、齢よりずっと若く見えますと、定番の言葉が返って来た。私に声掛けしてきた温泉ガールと向き合い、私と同じぐらいの年齢の人だろうと受け止めたが、多少のお世辞も上乗せして、
「貴女は私よりずっとお若いでしょう・・・私にはそう見えます」と、言葉を返した。
「九十六歳です・・・長生きでしょう・・・」と、温泉ガールは胸を張り若々しい声で答えた。〈どうだー。すごいだろうー〉と言う思いを秘めた健康自慢が盛り込まれた言葉だったが、嫌な気持ちはしなかった。
脱衣所のお喋りなので、温泉ガールも私もスッポンポンだ。スッポンポンはお互い様でと言わんばかり。遠慮のない視線を浴びせっこしている自分たちの行為に、九十六歳も私も笑いがこみ上げて会話が弾んだ。
入浴を終えた八十六歳、八十四歳、八十三歳の温泉ガール達が、九十六歳と私のお喋りを聞きつけて、スーッと近づき九十六歳を取り囲んだ。
「九十六歳・・・。私とは一回りも年上なの・・・。すごい・・」と八十四歳。
「私とは十歳違いのお姉さま・・・お達者でなにより」と、八十六歳が祝福。
「ひえー、四捨五入すれば百歳だよ。生き方上手だ・・」、八十三歳がほめ言葉を連発。 いずれもロッカーに移動せず、服を着ること忘れ、スッポンポンのままで、温泉ガール達は自分の身体と比較しながら、九十六歳の体型に暫し見惚れていた。
〈背が高く背筋がピーンと張り、大股で歩き、受け答えもしっかり。ユーモアたっぷりだ。親からもらった骨格と達者な臓器を上手に使いこなし、病気になっても恢復できる生活習慣を身に着け、難儀なことにも対処して九十六年生きてこられた〉そういう事だ。それにしても、お年寄りと一括りには出来ない、綺麗で素速い活動をする出来のいい身体だ。これは自慢できると納得。温泉ガールたちも同じ思いで九十六歳に脱帽の様子だ。失礼を承知で格付けした。相撲なら、横綱九十六歳。大関八十六歳。小結八十四歳と八十三歳。幕下八十二歳。この幕下八十二歳が私と言うことだ。
待合室でお迎えの車を待っている九十六歳の温泉ガールに出会った。
「今日は妹のような皆さまとほんとに楽しかったです。長生きは素敵なことですが、朋輩は天国に行っちゃって誰もいません。これがちょっとね・・・」と、寂しげに愚痴た。
「またお会いできるといいですね。お先に失礼します」と、会釈、出口へと向かった。
温泉で年配の女性「温泉ガール」から「何歳ですか」と、年齢を聞かれる事が多い。
「八十二歳です」と答えると、「お若いですね。七十歳に見えますよ」と、温泉ガールが返してくれるが、これは明らかにお世辞だ。私は歳相応だと熟知しているので笑ってやり過ごす。
今日も温泉の脱衣所で温泉ガールから年齢を聞かれた。いつもの様に答えると、齢よりずっと若く見えますと、定番の言葉が返って来た。私に声掛けしてきた温泉ガールと向き合い、私と同じぐらいの年齢の人だろうと受け止めたが、多少のお世辞も上乗せして、
「貴女は私よりずっとお若いでしょう・・・私にはそう見えます」と、言葉を返した。
「九十六歳です・・・長生きでしょう・・・」と、温泉ガールは胸を張り若々しい声で答えた。〈どうだー。すごいだろうー〉と言う思いを秘めた健康自慢が盛り込まれた言葉だったが、嫌な気持ちはしなかった。
脱衣所のお喋りなので、温泉ガールも私もスッポンポンだ。スッポンポンはお互い様でと言わんばかり。遠慮のない視線を浴びせっこしている自分たちの行為に、九十六歳も私も笑いがこみ上げて会話が弾んだ。
入浴を終えた八十六歳、八十四歳、八十三歳の温泉ガール達が、九十六歳と私のお喋りを聞きつけて、スーッと近づき九十六歳を取り囲んだ。
「九十六歳・・・。私とは一回りも年上なの・・・。すごい・・」と八十四歳。
「私とは十歳違いのお姉さま・・・お達者でなにより」と、八十六歳が祝福。
「ひえー、四捨五入すれば百歳だよ。生き方上手だ・・」、八十三歳がほめ言葉を連発。 いずれもロッカーに移動せず、服を着ること忘れ、スッポンポンのままで、温泉ガール達は自分の身体と比較しながら、九十六歳の体型に暫し見惚れていた。
〈背が高く背筋がピーンと張り、大股で歩き、受け答えもしっかり。ユーモアたっぷりだ。親からもらった骨格と達者な臓器を上手に使いこなし、病気になっても恢復できる生活習慣を身に着け、難儀なことにも対処して九十六年生きてこられた〉そういう事だ。それにしても、お年寄りと一括りには出来ない、綺麗で素速い活動をする出来のいい身体だ。これは自慢できると納得。温泉ガールたちも同じ思いで九十六歳に脱帽の様子だ。失礼を承知で格付けした。相撲なら、横綱九十六歳。大関八十六歳。小結八十四歳と八十三歳。幕下八十二歳。この幕下八十二歳が私と言うことだ。
待合室でお迎えの車を待っている九十六歳の温泉ガールに出会った。
「今日は妹のような皆さまとほんとに楽しかったです。長生きは素敵なことですが、朋輩は天国に行っちゃって誰もいません。これがちょっとね・・・」と、寂しげに愚痴た。
「またお会いできるといいですね。お先に失礼します」と、会釈、出口へと向かった。