大腸癌手術に向けての検査のこと.
非破壊検査は破壊検査の反対語で工学用語である.検査は医学でも行うが,医学の検査は全て非破壊検査のはず.でも実際の医学検査は,非検査体すなわち患者に,患者自身が回復できると推測される範囲のダメージは与えることを,この1週間で痛感した.今までの人生で経験したことがない造影剤その他を立て続けに体内に入れられるのも嫌だった.
かって健康診断に際し放射線検査による被爆について質問したら,それはタブーという感じをうけた.この検査で患者が破壊を受けたデータはないのだろうか.
以下は,患者として特に辛かった検査.どの検査も朝9時台だった.
注腸造影X線
前日から,大腸内視鏡検査同様に不味い検査食.前日夜に下剤2種類.2時間おきに便意をもよおし到底眠れない.当日朝にも座薬,昔の言葉で言えば浣腸.
職場などの健康診断の医検査ではバリウムを飲んで回転ベッドに載せられるが,大腸を対象とする場合は肛門から空の腸の中へとバリウムを注入する.空気も注入して,これが不快.ベッドもろとも七転八倒.右向け下向けなどの指示は健康診断ではインターフォン経由だが,この度は担当さんが側に付ききりだった.
20 分ほどで終わるが,下半身は自分の体液だかなんだかで ぐしょぐしょである.その後腸内の気体を排出するのだが,その際固体・液体も排出される恐れがあり,30分1時間2時間...といった間隔でトイレに通うハメになった.気分も悪く,回復に半日.
胃カメラ
10 年くらい前 近所の内科医で,鼻から入れる胃カメラを経験した.このときはテレビ画面で説明を聞きながらという長閑な検査であった.
この度は,口からカメラを導入.鼻から入れる小型カメラは解像度が悪いのだそうだ (ホントかね).胃液の泡を消す水薬 ? とかを飲まされ,口から喉は麻酔.撮影のときに,これまた空気を胃に送り込まれたのが応えた.撮影中に先刻の水薬が口から溢れたり...
朝食抜きにもかかわらず麻酔で咳き込み,昼食をとる気になれず,回復に半日.ただし朝の撮影なので絶食は当日の朝食だけですんだ.
大腸・膀胱も経験したが,胃に限らず内視鏡は辛い.
造影CT
静脈から生理食塩水を注入し,CTベッドの上で食塩水をヨード造影剤に切り替えると,ほとんど瞬時に上半身,ついで膀胱のあたりが熱くなった.「気分が悪くなる方もおられますが,大丈夫ですね」と言われたとたんに,気分が悪くなり吐き気を催した.しかし朝食抜きで吐くものはなし.数分で落ち着きを取り戻し,撮影は無事終了.水をがぶ飲みして造影剤を排出しなければならなかった.
MRIは閉じ込められて 20 分騒音に耐える必要があるが,肉体的苦痛はない. PETも退屈なだけで辛いことはなかった.
こんなにいろいろ検査して,どういう意味があるの,という疑問に答えてくれそうな論文が
塚本俊輔,三宅基隆,金光幸秀「直腸癌に対する画像診断」日本消化器病学会雑誌 第117巻 第 7 号 552-558
トップ画像 Fig.1 は わが大腸ではなく,この論文から転載させていただいた.テキストはまだ読んでいませんが...