チリから津波が押し寄せたばかりだが,これは寺田寅彦の名言.
大学の図書館の新規購入の棚に
松本 哉「寺田寅彦は忘れた頃にやって来る」 集英社新書(2002/05)
を発見した.このひとは「我輩は猫である」の寒月君のモデルで,岩波文庫から何冊も随筆集が出ている.本職は物理学者ということになっているが,一体何をしていたんだろう...とつねづねの疑問であった.
何で 8 年も前の本を今頃 ? とは思ったが,著者は神戸大学理学部物理学科卒ということなので,借りて来た.
この本によれば,寺田寅彦自身が書いたものは,寺田寅彦全集に収められているが,これはいわば文学篇であって,この他に一次論文を集めた「科学篇」全 6 巻があるとのこと.Word も TeX もなかった時代に全集 6 冊分の論文をほとんど英語で書いたのだから,現代の大学教授かそれ以上にちゃんと研究したのだろう.残念ながらこの「研究篇」は大学の図書館にはないようだ.
ラウエ・パターンの実験論文がノーベル賞級と紹介されている.ウェブで探したところ
T. Terada, "X-Rays and Crystals", Nature, 91, 135 (1913)
のことらしい.
この新書本は文学篇の科学随筆サワリ集で,科学篇には踏み込んでいないようだ.それでも良い寺田寅彦入門.著者 松本氏自身による挿画も楽しい.
真面目な研究の方は時代とともに陳腐化してしまったのだろうが,同じ科学ネタでも,随筆の方は古典として残っている.それどころか,科学技術が行き詰まりつつある現代という時代を背景に読むと教訓的に解釈できるところが面白い.
寺田流日常生活の物理の研究の系譜は,ロゲルギストとか,伏見康治先生とか,けっこう続いている.でも「猫の用足しの研究」の類いで,なかなか系統化は難しそう...系統化の必要もなし,か.
大学の図書館の新規購入の棚に
松本 哉「寺田寅彦は忘れた頃にやって来る」 集英社新書(2002/05)
を発見した.このひとは「我輩は猫である」の寒月君のモデルで,岩波文庫から何冊も随筆集が出ている.本職は物理学者ということになっているが,一体何をしていたんだろう...とつねづねの疑問であった.
何で 8 年も前の本を今頃 ? とは思ったが,著者は神戸大学理学部物理学科卒ということなので,借りて来た.
この本によれば,寺田寅彦自身が書いたものは,寺田寅彦全集に収められているが,これはいわば文学篇であって,この他に一次論文を集めた「科学篇」全 6 巻があるとのこと.Word も TeX もなかった時代に全集 6 冊分の論文をほとんど英語で書いたのだから,現代の大学教授かそれ以上にちゃんと研究したのだろう.残念ながらこの「研究篇」は大学の図書館にはないようだ.
ラウエ・パターンの実験論文がノーベル賞級と紹介されている.ウェブで探したところ
T. Terada, "X-Rays and Crystals", Nature, 91, 135 (1913)
のことらしい.
この新書本は文学篇の科学随筆サワリ集で,科学篇には踏み込んでいないようだ.それでも良い寺田寅彦入門.著者 松本氏自身による挿画も楽しい.
真面目な研究の方は時代とともに陳腐化してしまったのだろうが,同じ科学ネタでも,随筆の方は古典として残っている.それどころか,科学技術が行き詰まりつつある現代という時代を背景に読むと教訓的に解釈できるところが面白い.
寺田流日常生活の物理の研究の系譜は,ロゲルギストとか,伏見康治先生とか,けっこう続いている.でも「猫の用足しの研究」の類いで,なかなか系統化は難しそう...系統化の必要もなし,か.