シヴォーン・ダウド原案,ロビン・スティーヴンス,越前敏弥訳「グッゲンハイムの謎」東京創元社(2022/12).
実在の美術館が舞台だなと,図書館で借用したが,読んだら12 歳の自閉症スペクトラム障害 (以下 ASD と書く) とおぼしき少年テッドが探偵をつとめるミステリだった.
ここで活躍するテッドもその姉もいとこ (男の子) も,シヴォーン・ダウドの 2007 年の前作「ロンドン・アイの謎」(越前敏弥訳,東京創元社 2022) ですでに登場している.ダウドはこの作品発表の2ヶ月後に乳がんのために逝去.ロビン・スティーヴンスはシヴォーン・ダウド基金の依頼により,故人の構想に基づいてこの「グッゲンハイムの謎」を書いて 2017 年に刊行した...とある.
テッド一家はイギリス人だが,おばさんがいとこを連れてニューヨークのグッゲンハイム美術館に就職する.テッドは母・姉と共にいとこを訪問が,美術館のカンディンスキーの絵画が盗まれ,おばさんが疑われる.ミステリとしてはまぁまぁの出来.
テッドが ASD であるという記述は,本文はもちろん作者あとがき,訳者あとがきにもない.しかし Wikipedia の言う ASD の「社会的コミュニケーションの障害」と「限定された興味」は,テッドの一人称で語られる本文に顕著である.テッドが姉といとこの間柄について持つ感情,ニューヨークの地下鉄で迷子になってパニックに陥る描写など,さもありなんと思わせる.ストーリーとしては彼の「限定された興味」がもっとあからさまに犯人解明につながったほうがよかったかも.
ネットによればテッド・ファンが多数存在するらしい.年少の読者に薦めたいが,ASD についてどう説明するか / それとも説明しないか,考えどころ.
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