【社説・12.22】:きょう県民大会 何度でも集まり声上げる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.22】:きょう県民大会 何度でも集まり声上げる
「守るべき幼い少女の尊厳を守れなかったことを心の底からおわびしたい」
1995年に起きた米軍人による少女乱暴事件に抗議する県民総決起大会に登壇した、当時の大田昌秀知事の言葉だ。あれから30年がたとうとする今も、基地あるがゆえに女性の人権が脅かされる現実は変わっていない。犠牲を繰り返してしまったことに悔しさを禁じ得ない。
きょう22日、「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める県民大会」が開かれる。昨年12月に起きた少女誘拐暴行事件に怒りを示す。県女性団体連絡協議会を中心に実行委員会を組織し、新しい形の大会となる。
大会が掲げるのは安全に生活するという当たり前の権利だ。悲しみを終わりにするという意志を一人一人が持ち寄ることが大きな力になる。県民大会に心を寄せ合おう。
米軍人による事件が日本人の犯罪と性質を異にするのは、日米安全保障条約に基づき日本政府が駐留を許している他国の軍隊という点だ。
安全を名目にした駐留が、地域の治安を脅かす要因になるなど、あっていいはずがない。しかし、現実には酒に酔っての運転や住居侵入など米軍関係者の事件は県内で日常茶飯事のように起きている。21日には那覇市内で運転手に暴行し、タクシーを強奪しようとした米海兵隊員が強盗未遂容疑で逮捕された。
沖縄を犠牲にして成り立つ日米安保体制という差別的な政治により、沖縄に暮らす人々は凶悪犯罪との隣り合わせを強いられてきた。
沖縄の人々が自ら望んで基地を受け入れたこともない。沖縄戦の後に米軍が占領を続け、住民が収容所にいる間に土地を奪い、基地を建設した。日本本土で反基地運動が強まると、米統治下の沖縄へ海兵隊を移駐させた。沖縄に押し付けられた基地からの被害や暴力は、80年前の戦争から地続きの問題だ。
一連の米軍関係者による性暴力事件について、嘉手納基地第18航空団司令官のニコラス・エバンス准将は「地域との関係の小さな一側面」と述べたという。地域を不安にさせた責任を軽んじている。
95年の事件の際に、当時の米太平洋軍司令官が「(犯行に使った)車を借りる金があれば女を買えた」と発言し物議を醸したことと重なる。軍内部の根強い女性差別や当事者意識の欠如は、沖縄で米軍犯罪が繰り返される根源だ。
2016年4月にうるま市で女性が米軍属の男に暴行され殺された事件でも6万5千人が県民大会に結集し、女性の生命と尊厳を踏みにじった痛ましい事件を二度と起こさせないことを強く誓った。
私たちはいつまで政府に叫び続けなければならないのか。それでも不条理を前に黙してしまえば、必ず次の犠牲者を出してしまう。尊厳を冒涜(ぼうとく)するな。沖縄県民は何度でも集まり、声を上げる。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月22日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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