【社説①・02.13】:「ガザ所有」発言/パレスチナ軽視が過ぎる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.13】:「ガザ所有」発言/パレスチナ軽視が過ぎる
トランプ米大統領は、イスラエルの攻撃で荒廃したパレスチナ自治区ガザに関し、米国が長期的に所有し、再建や経済開発に取り組むと発言した。約200万人の住民は域外の安全な場所に恒久的に移住させるべきだとも提案した。パレスチナの人々と歴史を侮辱し、民族自治権を無視する暴言である。直ちに撤回し謝罪するべきだ。
イスラエルのネタニヤフ首相との会談後の発言で、同国の意向を反映しているとされる。その後、米政府高官が移住はガザを再建する間の「一時的なもの」と釈明したが、トランプ氏は帰還を重ねて否定した。
パレスチナは多くの国から国家承認を受け、国連総会にもオブザーバー参加している。米国は何の権限で所有するというのか。住民を強制的に移住させるのは明らかな国際法違反であり、「民族浄化」の批判を免れない。パレスチナや親米のサウジアラビアなど国際社会が強く反発するのは当然である。
そもそもパレスチナ人の多くは1948年のイスラエル建国に伴い、故郷を追われた人やその子孫だ。93年のオスロ合意でパレスチナ国家樹立による「2国家共存」が打ち出された後も、イスラエルは入植政策を続けてきた。
2023年10月に始まったガザの戦闘では、ほぼ全土に及ぶ苛烈な攻撃で住民は逃げ惑い、4万7千人を超える同胞を失った。停戦により住民が帰還を急ぐ中、追い打ちをかけるような行為は人道にもとる。
トランプ氏は地中海のリゾート地を引き合いに「ガザを中東のリビエラにする」と発言するなど、地域に多大な影響力を持つ仲介国としての自覚はみじんも感じられない。
第1次政権時にも、パレスチナ国家の首都に想定されるエルサレムにイスラエル大使館を移すなど、一方的な政策変更が目立つ。
ガザの和平実現には国際協調が不可欠だ。米国とイスラエルが国際社会に背を向けるような言動を繰り返している状況も看過できない。
イスラエルは、ガザの人々に食料や医療を提供してきた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁じる法を先月施行した。トランプ氏も今月、国際刑事裁判所(ICC)が戦争犯罪の疑いでネタニヤフ氏らの逮捕状を出したことに対抗し、ICC職員に制裁を科せる大統領令に署名した。
日本政府の対応も問われる。法の支配を重視し、力による現状変更を許さない方針を掲げる以上、容認するのは筋が通らない。米国におもんぱかるだけでなく、国際秩序を崩壊させかねない動きには断固とした姿勢を示さねばならない。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月13日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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