【社説②】:温暖化報告書 脱炭素へ対策総動員を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:温暖化報告書 脱炭素へ対策総動員を
気候危機の回避に向けた残り時間は極めて限られている。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化を招く温室効果ガスの削減策をまとめた報告書を公表した。
産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える目標の達成には、世界の排出量を2025年までに減少へ転じる必要があるとする。
対策を強めなければ排出量は増え続け、今世紀末までに気温上昇が3・2度に達する。そうなれば破局的な気候変動は必至となる。
各国は利害の対立を超え、化石燃料の使用を大幅に減らすとともに、再生可能エネルギーへの移行を大胆に加速させるべきだ。
科学的知見に基づく警告に耳を傾け、脱炭素へあらゆる対策を直ちに実行しなければならない。
報告書はIPCCの第3作業部会がまとめた。公表済みの第1、第2報告書は、温暖化は人類の活動が原因であり既に広範囲で被害や損失が出ている、と指摘した。
今回の内容も深刻である。10~19年に世界の人為的な温室効果ガス排出量は増加し続けており、1・5度を大きく超えないようにするには全ての部門で急速かつ大幅な排出削減が不可避とする。
国際ルール「パリ協定」の目標達成へのハードルは高い。今後の3年間で排出量のピークを迎え、19年比で30年に43%減、50年に84%減を実現する必要がある。
各国の従来の対策では不十分で、危機回避は間に合わない。
対策強化は待ったなしだが、悲観する必要はない。報告書を執筆した科学者は産業界や消費者、先進国、途上国など全ての立場で可能な対策があると指摘した。
移動は自転車や電気自動車を利用し、身の回りでは修理可能な製品を使う。大量生産・大量消費社会から脱却し、ライフスタイルや行動を変える工夫が欠かせない。
各国政府や産業界は排ガス規制の強化、断熱性能の高い建築の推進、二酸化炭素の回収・貯留などに積極的に取り組むべきだ。経済的効果を生む可能性もあろう。
ウクライナ侵攻というロシアの暴挙によって世界のエネルギー情勢は激変した。化石燃料や原発に回帰する動きが生じている。
だが脱炭素への潮流を後戻りさせるわけにはいかない。原発については、軍事攻撃やテロの対象となれば重大な危険をもたらすことを世界は目撃した。
気候危機という人類共通の課題に向き合うために、国際的な平和と協調こそが大前提になる。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月07日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます