【社説①】:アフガニスタン 女性抑圧が国の再建を妨げる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:アフガニスタン 女性抑圧が国の再建を妨げる
世界でもまれにみる異常な女性抑圧がアフガニスタンで行われている。イスラム主義勢力タリバンは、国際社会の要求に応じ、不当な措置を撤回しなければならない。
アフガンでタリバンが政権を掌握してから2年が過ぎた。恐怖政治が敷かれ、女性抑圧政策は強化の一途をたどっている。
アフガンの女性は、小学校までしか通えなくなった。就労も厳しく制限され、最近は美容院の閉鎖が命じられた。現地の女性が国連機関や国際NGOで働くことも禁じられている。
女性が親族の男性の同伴なしに遠出することや、遊園地や公園、ジムへの立ち入りも禁止された。社会活動の否定に等しい。
人権尊重と男女同権は、体制に関係なく、国家が守るべき普遍的な価値であり、国連憲章にも明記されている。国連の特使は、タリバンの女性抑圧は「人道に対する罪」だとして、国際刑事裁判所(ICC)に捜査を要請した。
アフガンは国連加盟国として、事態を真剣に受け止め、早急に改善する責務がある。
タリバンの女性抑圧は、イスラム法の極端な解釈に基づいている。統治の実務を担う穏健派幹部の中には女性の教育や就業の権利を認める考えもあるが、強硬な宗教指導者の影響力が強いため、実現には至っていないという。
人口の半数を占める女性を排除して、どうやって国を発展させるというのか。
タリバンは、2年前の政権掌握時には、「イスラム法の範囲内」での女性の権利尊重や、幅広い政治勢力が参加する「包摂的な政府」の樹立、国際テロ組織との関係断絶を掲げていた。
多くの国は、これらの公約が守られることを、タリバン政権承認の条件としていたが、何一つ達成されていない。親米的な前政権時代の有力者は弾圧され、イスラム過激派のテロも続いている。
タリバンを承認した国は、中国やロシアを含めて、一つもない。強権国家や独裁国家からも、統治のあり方を認められていない現実をタリバンは直視すべきだ。
アフガンの財政は前政権時代から外国の援助に支えられてきた。各国は国連を通じた人道援助以外の支援を停止している。このままでは困窮が極まり、再建どころか、破綻の道を進むことになる。
日本はタリバンに国際協調を働きかけているというが、成果は乏しい。現状の改革を強く迫る姿勢をより明確に示してほしい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年08月22日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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