【社説②・10.22】:中国経済の減速 先行き不透明感が一層増した
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・10.22】:中国経済の減速 先行き不透明感が一層増した
中国経済の減速が続き先行きの不透明感が増している。世界経済のリスクともなりかねず、警戒が必要だ。
中国の2024年7~9月期の国内総生産(GDP)は、実質で前年同期比4・6%増だった。2四半期連続で伸び率を縮小した。
先進国が主要な指標としている前期比の年率換算では、3・6%前後だった。中国政府は、24年通年の成長率について「5・0%前後」の目標を掲げているが、達成できるかどうか微妙な情勢だ。
GDPの4分の1を占めるとされる、不動産市場及び関連産業の深刻な不況が主な要因である。
新築住宅の在庫がだぶつき、不動産開発投資は減少している。中国では、家計資産に占める不動産の割合が欧米と比べて際立って高く、不動産価格の下落が消費を落ち込ませることも懸念材料だ。
中国経済は22年、厳格な行動制限で感染拡大を抑え込むゼロコロナ政策により不振だった。その政策を終えた23年の回復が鈍かった上、24年も低迷が続いている。
景気減速を受け、中国政府は財政出動と金融の緩和策を相次いで打ち出した。当面の景気を、ある程度支える効果は見込めよう。
だが、中国経済の問題は、不動産や投資、輸出への依存から脱却出来ていないことにある。
消費主導の経済へと転換を図ることが求められるが、習近平政権は、質の高い発展や製造強国の推進に注力するばかりだ。これでは安定的な成長は難しいだろう。
国内市場の縮小を受け、中国が国民生活の向上よりも、今後、補助金による過剰な生産を増やし、輸出への傾斜を一層強めれば、日米欧など主要先進国との摩擦の激化は避けられない。
海外からの投資の減少も景気に悪影響を及ぼしている。
中国は今夏、邦人社員をスパイ罪で起訴した。先月には10歳の日本人男児が中国人の男に刺され、亡くなった。中国当局が詳細を明かさず、日本側の不安は強い。
法治国家とは言えぬ中国の姿勢が、投資意欲を冷え込ませることも直視すべきである。
加えて、中国市場が高い成長を見込みにくくなる中、中国勢との競争が激化し、ホンダや日産自動車などの日本企業が、工場の閉鎖に動く事例が目立っている。
日本にとっては、生産体制の見直しのほか、経済安全保障上の観点から、サプライチェーン(供給網)の再構築を進めていくことも重要な課題になろう。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月22日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます