【主張②・12.31】:マカオ返還25年 香港統治の先例にするな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・12.31】:マカオ返還25年 香港統治の先例にするな
マカオがポルトガルから中国に返還されて25年が過ぎた。習近平国家主席はマカオを訪問し、中国による直接統治を強化すると表明した。マカオには香港同様、「一国二制度」で高度な自治が保障されているはずだ。断じて容認できない。
20日、マカオ返還25年の式典で演説する中国の習近平国家主席(ロイター)
マカオは人口約68万人で、世界一のカジノの街として知られる。16世紀、当時の明朝からマカオの居住権を獲得して始まったポルトガルの支配は、1999年12月20日の中国への返還で終止符が打たれた。
カジノに絡んで暴力団と癒着し、治安悪化を放置したポルトガル統治への失望感も手伝い、もともとマカオ住民は中国への帰属意識が強い。〝中国化〟のスピードは香港を上回る。
今月20日、マカオで開かれた返還25年記念式典に出席した習氏は「国家の主権と安全を何より優先する」と述べ、中国の全面的な統治権を確立しなければならないと強調した。それは同日、マカオ政府トップの行政長官に就任した岑(しん)浩(こう)輝(き)氏の経歴を見ても明らかだ。
岑氏はマカオ出身ではない。中国広東省生まれである。マカオ行政長官は4人目だが、初めて中国本土出身者がトップに就任したことになる。高度な自治の象徴でもあった「マカオ人によるマカオ統治」の原則の否定にほかならない。懸念されるのは、同じ一国二制度下の香港にもマカオ式が適用されるのではないかということだ。
5年前の2019年12月にマカオで行われた返還20年記念式典に出席した習氏は「マカオの一国二制度は成功を収めた」とマカオ政府を称賛した。当時、反中デモが続発していた香港が念頭にあったのは明らかだ。
習政権は半年後の20年6月、香港に国家安全維持法(国安法)を導入し、デモを押さえ込んだ。その後、議会から民主派を排除する選挙制度の見直しも香港政府を通じて強行した。国安法の施行も、議会における民主派排除もマカオで先行して実施されていたものである。
デモ弾圧後、「愛国者治港」(愛国者による香港統治)を推し進める習政権が将来的に、香港にも中国本土出身者の行政長官を就任させ、中国による直接統治を完成させる恐れがある。マカオや香港でこれ以上の強権統治を許してはならない。国際社会は監視を強化すべきだ。
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