《余録・01.29》:「東風が西風を圧倒している」…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・01.29》:「東風が西風を圧倒している」…
「東風が西風を圧倒している」。中国の毛沢東主席が1957年にソ連を訪れた際、モスクワの中国人留学生に語った言葉だ。ソ連が人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げを成功させた直後だった
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スマホに映し出された中国製AIアプリ「ディープシーク」の画面=北京で28日、AP
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スプートニク衛星が展示され、大勢の観客が行列を作ったソ連館=大阪での第5回日本国際見本市で1958年4月
▲「小さなボールを空中に放り投げただけだ」。過小評価するアイゼンハワー米大統領の発言はむしろ米国民の不安をかき立てた。最大のライバルに科学技術で差をつけられた衝撃が広がった
▲そんな歴史が思い浮かぶ。「AI(人工知能)におけるスプートニク」と形容する投資家も現れた。中国の新興企業「ディープシーク」が低コストで開発した生成AI。最先端のチャットGPTに匹敵するという調査結果が伝わり、世界的に半導体などハイテク株が大幅安となった
▲AIは軍事力も左右する。米国は関連技術の輸出を規制し、中国の台頭を防ごうとしてきた。簡単に並ばれては米国の技術的優位や巨額の投資で米景気を支えるAI産業の先行きに疑問符がつく
▲「科学技術の奇襲」。中国メディアは旧正月前に飛び込んだ「朗報」を喜んだが、中国の技術が先行したわけではない。「天安門事件とは?」と聞くと「現時点ではお答えできない。話題を変えよう」と当局に配慮するAIでもある
▲スプートニク・ショックは米国の軍事、宇宙技術開発を促し、「東風が西風を圧倒する」事態は長続きしなかった。トランプ米大統領は米企業に「警鐘とすべきだ」と求めた。今度も逆襲につながるのか。米中競争の激化は必至である。
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