【社説②・12.19】:独仏の政治混迷 EUの軸、揺らがぬよう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.19】:独仏の政治混迷 EUの軸、揺らがぬよう
ドイツとフランスで、内政の混迷が続いている。欧州連合(EU)のけん引役となる両国の求心力低下は否めない。国際情勢への影響も懸念され、安定化が急がれる。
ドイツではショルツ首相の信任投票が連邦議会(下院)で否決され、解散総選挙が来年2月に行われる見通しとなった。憲法で厳しく制限されている解散は19年ぶりで、極めて異例の事態である。
ショルツ氏率いる3党連立政権は先月、経済や財政政策で意見が対立、中道の自由民主党が離脱したことで少数政権となっていた。
フランスでも内閣不信任決議案が可決され、発足からわずか3カ月でバルニエ内閣が総辞職した。内閣不信任は62年ぶりとなる。
バルニエ氏が緊縮型の社会保障関連予算案を国民議会(下院)の採決なしに強行採択したことで、反発した野党の左派が提出。極右政党も同調した。
夏にあった下院総選挙では、マクロン大統領の与党連合を含めた3勢力がいずれも過半数に届かず不安定な状況が続いていた。
マクロン氏は中道派のバイル氏を後任に指名したが、来年7月まで解散総選挙は実施できず、議会構成は変わらない。窮地を打開できるかは不透明だ。
両国とも、世界的な物価上昇による国民の生活苦が、政権への不満の高まりにつながっている。
ドイツは景気低迷が続き、2年連続で経済成長率のマイナスが見込まれる。フランスも巨額の財政赤字が課題だ。
ロシアのウクライナ侵攻に伴い、エネルギー価格の上昇が響いており、移民・難民の増加や温暖化対策への国民負担に反発もある。
今年は米大統領選や英国、韓国でも総選挙があり、与党に厳しい判断が下された。
いずれもインフレ対策への不満を背景に、自国第一主義やポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策の広がりが目立つ。
来年1月、米大統領に就任するトランプ氏はウクライナ支援に消極的で、北大西洋条約機構(NATO)の軍事費の負担増加などを突きつけることが予想される。電気自動車(EV)の関税を巡り、中国との貿易摩擦も激化している。EUがまとまって、相対することができるのか。
ウクライナや中東の紛争対応、人権、温暖化対策などでもEUの存在は大きい。独仏は内向きの政争を乗り越え、軸となる役割を果たしてほしい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月19日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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