【社説・12.22】:冬山の事故/危険意識し周到な準備を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.22】:冬山の事故/危険意識し周到な準備を
山での遭難事故が増えている。警察庁によると、2023年に全国で発生した山岳遭難は3126件、遭難者数は3568人で、いずれも統計を取り始めた1961年以降で最も多かった。新型コロナウイルス禍に伴う行動制限が緩和されたほか、訪日客が増えたことも背景にあるとされる。
冬山の遭難事故は年末年始に多発している。この時期は天候が悪化すると回復に時間がかかり、救助活動も容易ではない。雪国でなくとも氷点下になると、それだけで危険が増す。注意してし過ぎることはない。
兵庫県内では2023年は120件に上った。うち冬山期間に当たる1~5月、12月の計6カ月間に過半数の67件、遭難者は74人を数えた。死者4人、重傷者14人だった。特に神戸・阪神間の市街地に近い六甲山系は登山道も多く、気軽に登れるとあって34件の事故が起きた。
気がかりなのが、登山計画書(登山届)を事前に出さずに登る人が多いことだ。県内で事故に遭った人で届け出をしていたのはわずか6件に過ぎない。
登山届には緊急連絡先や日程、行動予定、携帯電話番号などを書き込む欄があり、捜索・救助活動の手助けにもなる。最低限のルールは守ってほしい。
山の大小、季節を問わず、滑落の危険もある難所に出くわしたり、道に迷ったりすることはままある。身近な山だからと甘く見ず、早めの判断が必要だ。慌てずに、安全な場所や目印となる所で動かずに助けを求めることを忘れてはならない。
冬の登山は無謀と紙一重のところもある。特に天候の判断を誤れば、どんな熟達者であっても事故は避け難い。気象条件の確認はもちろん、安全なルート設定、防寒具や雨具、ヘッドランプ、地図、食料、位置を知らせるGPS機能があるスマートフォン用の予備バッテリーなどの装備は欠かせない。
万一、遭難となれば大がかりな捜索となる。中高年の登山人口も増える中、単独での無理な入山や初心者のガイドなしでの行動は厳に慎むべきだ。
取り返しのつかない事故を防ぐために、山に対する基本知識を改めて共有し、周到な準備で臨む必要がある。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月22日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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