2月14日はバレンタインデー。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、百貨店のバレンタイン商戦が様変わりしている。従来の「対面」「長時間滞在」型から、「非接触」「分散」型へと売り方を変化させてきた。店頭での販売よりも前にオンラインショップをスタートさせるなど、「巣ごもり需要」を見越して、仕掛けも早い。新しい日常の中で、バレンタインも「新しい売り方」を試すことになりそうだ。【赤塚辰浩】

 2月の恒例行事バレンタインまで2週間。時代に敏感な百貨店は、すでに「ウィズコロナ」に即した売り方を始めている。マスク、検温、アルコール消毒に社会的距離はもちろん、入り口と出口を別々にして順路を一方通行にしたり、左回りや右回りに限定、感染防止に努める。時間をかけて売り場を自由に回り、ゆっくりと品定めする-。昨年までのような、そんなショッピングを楽しむ光景は、コロナ禍で変更せざるを得なくなっている。

 店舗での対面販売や長時間の滞在が厳しくなる中、各店舗が重視しているのがネット販売による「オンライン・バレンタイン」だ。

 早いケースでは昨年末、遅い場合でも今月半ばから仕掛けているが、オンライン販売の終了時期は、実際の店舗での販売よりも1~2週間早めに設定してある。店舗での催事は1月下旬~2月上旬にかけて始まるが、こちらはバレンタイン当日か、数日後まで販売する。この「2段構え」で、コロナ禍のバレンタイン商戦に臨む百貨店が多い。

 百貨店業界は昨年、お歳暮やクリスマス、おせち料理、福袋などの年末年始商戦を通じて、オンライン販売に対する手応えをつかんでいた。たとえばおせちの売り上げは各店軒並み、前年比約20~40%増。高額商品から売れていったという。その実績をベースに、バレンタイン商戦に備えた。

 高島屋の担当者は「これまで以上にニーズがありそう。今年ならではの品ぞろえで商品を強化しました」と話し、オンラインの新たな買い方を提案したという。「お試しショコラ」という企画で、ウェブ上の30ブランドの中から、食べてみたいチョコを1粒から選べる仕組みだ。

オンラインで1粒から選べる「お試しショコラ」オンラインで1粒から選べる「お試しショコラ」

 オンラインに特化した商品を加える百貨店もある。松屋銀座では昨年夏の段階で、オンラインと店頭の販売の割合を「1対9」で想定していたという。「オンラインでの販売額はもっと高まる」(担当者)とみて、商品数を上方修正した。

 一方、コロナ禍で「巣ごもり需要」が増す中、今年のトレンドといえそうなのが「DIYチョコ」だ。DIYは「Do it yourself」の略で「自分でやってみよう」の意味。日曜大工などでよく使われる単語だが、おうちで手作りで楽しんでみようというチョコキットだ。 

 松屋銀座では「おうちで楽しむバレンタイン DIYチョコ」を展開。カカオ豆をフライパンで焙煎(ばいせん)し、すべての工程を手作りできる「カカオ豆から手作りチョコレートキット」(2200円)などがある。高島屋も「おうちでDIYショコラ」をラインアップ。有名シェフが選んだチョコを使って自宅でプロの味を再現する「家で作るガトーショコラセット」(3996円)などがそろった。QRコードでアクセスするとお菓子作りの動画で教えてもらいながら家族で楽しめる。「おうち時間」が注目されるからこその商品といえそうだ。

「おうち時間」の増加に注目してオリジナルのチョコ作りキットも初登場「おうち時間」の増加に注目してオリジナルのチョコ作りキットも初登場

コロナ禍でオンラインストアの商品を強化コロナ禍でオンラインストアの商品を強化

  このほか、外出自粛の今だからこそ楽しめそうなのが、松屋銀座の「日本各地のこだわり食材チョコレートで日本の魅力再発信」。素材を通じて旅行気分を味わうことができ、国産品の良さを再認識できると同時に、産地の支援にもつながる試みだ。また高島屋の「ゴンチャロフ アニマルショコラ アニマルショコラコレクションW」(16個入り、6480円)は、オンライン飲み会での“画面映え”を意識。食べてしまうのがもったいない? くらいのかわいさだ。

松屋銀座は「日本各地のこだわり食材チョコで、日本の魅力再発信」を前面に押し出す松屋銀座は「日本各地のこだわり食材チョコで、日本の魅力再発信」を前面に押し出す

 昨年来のコロナ禍で、体験を楽しむ「コト消費」という言葉は吹っ飛んだ。バレンタイン商戦でも、広い売り場を使った「テーマパーク化」で、昨年まではイートインのコーナーも設けられたが、今年はそういう演出もない。対面販売の割合は極端に少なくなるとみられるが、バラエティーにあふれたチョコが、いっぱいなのは変わらない。コロナ禍のバレンタイン、皆さんはどうやって楽しみますか?

 <自販機に時差来店、分散&非接触対策>

 各店舗では、実際に店に足を運ぶ人のことを念頭に置いた、分散、非接触対策もとっている。

 新宿高島屋(東京・新宿)では27日、2階JR口に「チョコレート自販機」を初めて設置した。期間はバレンタイン当日の2月14日まで。「時間がない」「混雑を避けたい」という人を対象にしたものだ。

[高島屋のバレンタイン商戦で登場するチョコ高島屋のバレンタイン商戦で登場するチョコ

 また、西武池袋本店(東京・池袋)では、2月14日までの催事「チョコレートパラダイス2021」を開催するに当たって、ホームページ上で「時差来店」をお願いしている。円グラフで、混雑が少ない時間帯と混雑する時間帯を明示。開店時間の午前10時から正午までと、午後5時~同7時30分を混雑時間帯とみて、正午から午後5時の間の来店を推奨している。

 ◆オンラインの広がり

 「オンライン○○」は昨年の「ユーキャン新語・流行語大賞」でトップ10に選ばれた。ショッピングや飲み会、毎日の仕事や記者会見まで、オンラインを使う機会はコロナ禍で急速に増加。全国の遊園地のアトラクションなどを集めた「おうち遊園地」が人気を集めたほか、企業の工場見学ツアーや、「行った気分」を味わう国内外ツアー、ショッピングとイベントを兼ねて全国に特産品をPRできる「陶器市」「特産品市」など、さまざまな分野で活用が広がっている。