【社説・11.29】:アマゾンに立ち入り検査 自由な競争環境ゆがめるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.29】:アマゾンに立ち入り検査 自由な競争環境ゆがめるな
公正取引委員会が独禁法違反の疑いでインターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京)に立ち入り検査した。2016年以降、3度目だ。何度も繰り返されるのはなぜだろう。米アマゾン・コムという巨大IT企業の日本法人だけに驚きを隠せない。公正な取引を阻害する行為があったとしたら、許し難い。
アマゾンはサイト上で自ら商品を売るほか、他の小売業者が販売する場も運営している。今回、問題になったのは「カートボックス」と呼ばれる優先枠だ。利用者が物を買おうとする時、アマゾンは推奨する業者を目立つ位置に表示する。この枠を獲得できるかどうかは、業者の売り上げを大きく左右する。
アマゾンは枠を得る条件として「競争力のある価格での出品」を業者に求めた。他の通販サイトより安い価格にさせたり、アマゾンの商品発送代行サービスを使うよう強要したりした疑いがある。サイトには圧倒的な集客力がある。従わざるを得なかった業者もあるだろう。
公取委は、優越的地位の乱用や拘束条件付き取引に当たるとみている。さらに違反行為に関する情報を業者から募るウェブアンケートも始める。値下げの強要などがいつ、どれくらい行われていたのかを明らかにしてほしい。
独禁法の目的は、自主的な判断で自由に活動できるようにすることにある。各社が自ら商品を工夫し価格を競い合うことが、消費者の利益になる。優位な立場を利用して値下げを強いる行為は市場のメカニズムをゆがめるものだ。
同社の違反が最初に浮上したのは16年。アマゾンのサイトでの販売価格を最も安く設定するよう業者に求めたとして、公取委が立ち入り検査した。2度目は18年で、アマゾンが値引きした際、一部を業者に負担させた疑いだ。この時は約1400社に計約20億円を返還することを盛り込んだ改善計画を出した。
過去の検査では、排除措置命令など行政処分は課されなかった。しかし高いシェアを背景に取引先を圧迫する行為が繰り返されているなら、厳しい処分も必要になってくるだろう。
自らの経営努力なしに競争力を高めるアマゾンの手法を巡っては、欧米当局も競争上の問題がないか監視を強めているという。世界中で同様の行為があるとすれば、グループの経営体質の問題であり根が深い。
アマゾンはネット時代に合う革新的なビジネスモデルを打ち出し、小売業の在り方を大きく変えた。米国での創業から30年。競合相手も増える中、成長を続けようとした結果が値下げの強要であれば、残念と言うほかない。
通販サイトの独禁法違反としては、公取委が21年に楽天グループに対し、送料無料化の運用で優越的地位の乱用の疑いがあると指摘した。
通販サイトは今や社会インフラの一部である。日常的に使う消費者も多い。うまく機能させ続けるには、サイト運営者側が法令順守への姿勢を示すことが求められる。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月29日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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