【社説・12.01】:所信表明で共同使用 さらなる負担持ち込むな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.01】:所信表明で共同使用 さらなる負担持ち込むな
沖縄の基地負担の軽減を言いながら、辺野古新基地の工事を強調し、自衛隊による米軍基地の共同使用に言及する。首相の言う「負担軽減」は県民の求める道筋とかけ離れ、むしろさらなる負担と危険を持ち込むものだ。
石破茂首相は29日に衆参両院で所信表明演説を行った。沖縄県を含む基地負担の軽減や沖縄経済の強化に言及したのに続き、「在日米軍施設・区域の自衛隊による共同使用を進める」と述べた。
首相の所信表明で、米軍基地の日米共同使用に言及するのは異例だ。10月に行った就任直後の演説にはなかった一文であり、意図的に盛り込んだことは間違いない。
だが、何を目的に共同使用を進めるのか、どの施設を想定しているのかなど肝心の部分が判然としない。
米軍基地を日米で共同使用したところで、県民の基地負担の軽減にはつながらない。保革を問わず歴代県政は過重な米軍基地の返還や部隊の削減を求めてきた。自衛隊も米軍施設を使用していくとなれば、今後も沖縄に基地を置き続ける固定化を助長することになる。
運用面でも訓練や施設使用の頻度が上がり、事故や騒音など周辺地域に及ぶ影響は増す。県民の求める負担軽減とは正反対なのである。
米軍基地を自衛隊が使用することで日本側が基地の運用に関与でき、米軍と地元の摩擦を軽減できるといった指摘はこれまでもある。しかし、共同使用の促進が自衛隊の南西シフトの一環である以上、沖縄全体の軍事要塞(ようさい)化が前提なのは間違いない。
施設の日米共同使用については、「台湾有事」をにらんだ軍事的な要請となっている。昨年1月や今年7月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、南西諸島での共同演習・訓練を確認するとともに、米軍嘉手納弾薬庫地区の日米共同使用を拡大する方針を明記していた。
弾薬庫の共同使用は、島々での長期戦に備えて南西諸島の各地に弾薬を分散・保管する計画だ。自衛隊が米軍と一体となって継戦能力を高める狙いがある。今後、自衛隊による米軍基地の使用だけでなく、石垣島や与那国島、宮古島に展開する自衛隊の施設を米軍が使用することも視野に入れているとみられる。
日米共同使用を推進するほどに、沖縄の過重な基地負担が続き、有事の際に攻撃目標となるリスクを増大させる。
石破首相は沖縄の「基地負担の軽減」を掲げたが、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を押し進めるための方便としか受け取れない。海を埋め立てて県内に新たな軍事基地を造ることも、沖縄県民が求めてきた基地の整理縮小と相いれない。
沖縄の負担軽減を言うのであれば、今回の所信表明に米軍基地の日米共同使用を盛り込んだ意図を、県民にただちに説明すべきだ。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月01日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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