【社説①】:共同親権の導入 子の不利益生じぬよう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:共同親権の導入 子の不利益生じぬよう
離婚後の共同親権を導入する民法改正案を、自民党部会が了承した。離婚後、父母のいずれかが親権を持つ単独親権を改め、父母が合意すれば共同親権の選択も可能にする内容。政府は3月にも改正案を国会提出する方針で、改正法の公布後2年以内に施行する。
しかし、共同親権には反対論も根強い。国会審議を慎重に進め、導入するとしても、子どもに不利益が生じないよう、対策を十分講じることを前提にすべきだ。
親権は、未成年の子の世話や教育、財産管理など養育にかかわる権利や義務などを指す。
法制審議会が法相に答申した民法改正要綱は、父母の離婚協議で単独親権か共同親権かを選び、折り合わない場合は家庭裁判所が判断。共同親権の場合、進学や病気治療などの重要事項は父母の話し合いで決めるとしている。
現行制度では親権者は9割以上が母親だが、離婚時の親権争いが増えたため、共同親権の導入は親子の断絶を防ぎ、子の利益にかなうとして支持する意見がある。
改正案には養育費の不払いを防ぐため、必ず支払うべき法定養育費の創設も盛り込まれている。
一方、夫婦の合意が条件とはいえ、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の被害者にとって共同親権は離婚後も加害者との関係を継続することにつながり、悪影響があるとして、与野党内に強い反対論がある。
改正案は共同親権は父母が合意した場合に限り、DVや虐待がある場合は家裁が単独親権と決めるとしているが、家庭という密室でのDVや虐待は表面化しにくく、証明も難しいのが現実だ。
配偶者間の力関係で共同親権を強制されることへの懸念は残る。個別の事例に合わせて家裁が共同親権の可否を判断できるのかという課題もある。
父母が親権の選択を巡って対立した場合、家裁が調整や判断を行うが、合意に至らず紛争となることもあり得る。制度が変更されることで問題や紛争が続発する事態になれば本末転倒だ。
仮に共同親権を導入するなら、DV防止など被害者を守る制度拡充をはじめ、問題を抱える家族への支援拡充が前提だ。あらゆる観点から慎重に審議し、改正案に足らざる点があれば補う賢慮ある国会審議を望みたい。最も尊重されるべきは子どもの利益である。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月22日 07:22:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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