《社説①》:離婚後の親権 子の幸せ最優先の議論を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:離婚後の親権 子の幸せ最優先の議論を
子どもの幸せにとって、どのような仕組みが最善なのか。丁寧な議論が求められる。
離婚後の親権はどうあるべきかを検討している法制審議会の部会が、中間試案をまとめた。
現行制度は父母のどちらかが持つ単独親権を採用している。試案では、これに加え、父母がともに持つ共同親権の導入を併記した。今後、国民の意見を募集し、さらに検討を続ける。
親権は、未成年の子の監督や教育、財産管理をする権利・義務を指す。身の回りの世話をするほか、住居や進学・就職、医療などについて決定権がある。
2020年に子を持つ父母の離婚は11万件余あり、85%は母が親権者になっていた。
離婚しても、父母ともに子の養育に責任がある。しかし、父から養育費を受け取っている母子家庭は、4分の1以下にとどまる。
共同で親権を持つことで親としての自覚が高まり、こうした状況を改善できるというのが、導入を求める人々の主張だ。
父母どちらとも交流を続けることが子にとっても好ましく、親権を巡る争いも避けられるという。
だが、懸念も根強い。
ドメスティックバイオレンス(DV)や子への虐待が離婚につながっている場合、被害が続きかねないと反対派は指摘する。別居親が親権の行使を理由に近づいてくる恐れがあるからだ。
共同親権では、子に関することは父母で決める必要があるが、関係がこじれていて話し合いができないケースも少なくない。
シングルマザーの支援団体が、ひとり親2500人余に実施したアンケートでは、共同親権に賛成する人は1割にとどまった。
賛否の溝は深く、法制審の部会も方向性は示せていない。自民党の法務部会で、共同親権導入を求める議員から注文が付き、試案の取りまとめが一時先送りされる異例の事態まで起きた。
養育費の不払い対策を先に整える方法もある。子どもの立場から議論を尽くすことが大切だ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年11月21日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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