【余禄】:「子の使い…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:「子の使い…
「子の使い/垣(かき)から母が/跡(あと)を言い」。そっと我が子の後をつけて店主にささやく母の親心をよんだ江戸川柳である。30年以上続く日本テレビの「はじめてのおつかい」を連想する。幼子にお使いをさせるのは昔からの教育法だったらしい
▲名物番組が海外でも動画配信され、話題を呼んでいる。米タイム誌や英ガーディアン紙も取り上げていた。幼児の能力に感動して涙腺が緩む人もいれば、育児放棄に近いと感じる人もいる。治安の良い日本は特別という見方もある
▲日本を「子どもの楽園」と呼んだのは幕末に来日した初代英国公使のオールコックである。滞在記「大君の都」の記述が「子どもが幸せな国」というイメージで海外に伝わった。元々は多産で子どもがあふれる光景を指した表現だった
▲今の子どもは幸せか。明確な像が浮かばない。国連児童基金(ユニセフ)の幸福度調査が象徴的だ。身体的健康はトップなのに「心の健康」は最低ランクで全体では38カ国中20位。生活満足度が低く、自殺率も高い。いじめや虐待も後を絶たない
▲こども家庭庁の発足が決まった。同時に制定された「こども基本法」は「将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現」を掲げる。少子高齢化の現実を考えれば、旧態依然の縦割り行政を続けていい時代ではない。その目標に近づくことが問題解決の道筋だろう
▲子の幸せを願う気持ちはいつの時代も変わらないはずだ。江戸川柳をもう一つ。「寝て居(い)ても/団扇(うちわ)のうごく/親心」
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2022年06月16日 02:09:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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